煽り系ダンジョン配信者、視聴者を煽るたびに強くなるので、無理して煽り散らかしてみるも、配信を切り忘れたままひとり反省会をしてしまいバズってしまう   作:アトハ

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バーニングお嬢様と同期コラボ(3)

 ダンジョンを進む私たちは、慌てふためいた探索者の集団とすれ違う。

 泡食った様子で進む彼らは、おそらく先ほどのアナウンスを聞いて撤退中の探索者だろう。

 

 

「ほ~っほっほっほ。そんなに慌てて、みっともないですわ~!」

 

 開口一番、とりあえず煽る!

 人間という生き物は、逃走中に煽るのがカチンとくると煽り法典にも載っているのだ。

 

 

「どけっ! さっきの放送が聞こえなかったのか。イレギュラーモンスターが現れたって言ってただろ! 早く逃げないと皆殺しにされちまうぞ!」

「それで、慌てた探索者が一斉に入り口に押しかけたらどうなるか──少し想像したら、お分かりになりますわよね?」

 

"ど正論パンチやめろw"

"イレギュラーモンスター、だいたい二次被害のが大きくなりがち"

"とくに上層ほど、慣れてないからなあ・・・"

 

 

 むぐぐ、と私に突っかかっていた探索者が、口をパクパクさせる。

 

「心配ご無用、ですわ~! わたくしに任せて、お雑魚な皆さまは安全に気をつけて、ゆっくり、慎重にダンジョンを出るのですわ!」

「ま、まさか先に進もうっていうのか!?」

「もちろん! これが、わたくしの生き甲斐なのですわ!」

 

 目の前にぶら下がった煽りチャンスを逃すほど、私はお人好しではない。

 私が、高笑いをしていると──

 

 

「お、おまえは──まさか! バーニング嬢!?」

 

 探索者の一人が、まじまじと私の顔を見た。

 

「お~っほっほっほ。こんなところまで名前が知られているなんて、わたくしも、すっかり有名に──」

「あの、一人反省会の?」

「ああ。一人反省会で有名な──」

「ああ、一人反省会してた子ね」

 

"草"

"認知のされ方よ"

"高笑いのポーズしたままぴしっと固まって草"

 

 

(え? 私のあれ、そんな有名になってるの?)

(私の名前聞いて最初に出てくるの、それなの!?)

 

「み、皆さま、未だにわたくしの華麗なる演出に騙されてらっしゃるのですわね!? 下僕の皆さまも、本当に、本当に単純で──ぷぎゃ~、ですわ!! わたくしの本性は、この通り、ただの性格終わってる煽り魔なのですわ~!!」

 

「こ、これがバーニング嬢の生ぷぎゃ~!」

「か、可愛すぎる……」

「なんか冷静になれたよ。ありがとう、慎重に戻るね」

 

"( ; ›ω‹ )プギャー!"

"ですわ~!"

"ムキになってる焔子ちゃん可愛い"

"※自称、煽り系の発言です"

 

 おかしい。

 煽り散らかしたはずの探索者たちから、なぜか頭を下げられてしまう始末。

 

 

 結局、私はちづるちゃんを連れて、

 

「おぼえてやがれ、ですわ~!」

「ですわ~!」

 

 そんな捨て台詞とともに、イレギュラーモンスターを拝むためにダンジョンを突き進むのであった。

 

 

 

***

 

「消し炭になれ──バーニング、ショット……、ですわ~!」

「消し炭、ですわ~!」

 

 私たちの目の前で、わんころが3体消し飛んだ。

 

「お~っほっほっほ、今日も絶好調。ですわ~!」

「焔子ちゃん、すご~い!」

 

"なんか威力がいつもより高くね!?"

"ちづるちゃんの前で良いところ見せるために、張り切ってそう"

"相変わらず炎魔法えぐくて草"

 

(本当ですわね!?)

(なぜだか、いつもより威力が数倍高いような……!)

 

 私は、雑魚モンスターを蹴散らしていく。

 実のところ、例の切り忘れのせいで火力が落ちていることを少し心配していたのだが、試し打ちしたところ、今日も調子は絶好調。実によい煽り日和である。

 

(つまりこれは、私が順調に世界一の煽り系配信者の道のりを、歩んでいるということですね!)

 

 上機嫌で鼻歌を歌いたくなる私。

 やっぱり私は、ちゃんと煽り系をやれていたのだ。

 だけども油断はしない。念には念を入れて。今日のお雑魚ウォッチング配信で、一人反省会などという下らない記憶を風化させてみせる!

 

 

「ええっと……、焔子ちゃんはこんな状況なのに楽しそうだね」

「お~っほっほっほ、新鮮なお雑魚さんたちがいっぱい見れて、ホクホクなのですわ~!」

「うん。いっぱい、人助けしてたもんね!」

「…………あれぇ?」

 

"困惑するちづるちゃん──質です"

"ちょっと怯えて、ずっとバーニング嬢の袖掴んで引っ付いて回ってるの、可愛すぎる・・・"

"バーニング嬢も満更でもなさそう"

"てぇてぇ"

 

 

 ――数十分後。

 ついに私は、イレギュラーモンスターが現れたという現場に到着する。

 

(ふむ。敵は、オークの強化版といったところ?)

(──雑魚、ですわね!)

 

 

 大きな広間と繋がる道の前には、対イレギュラーモンスターの警戒態勢が敷かれている。

 ダンジョン奥部へと続く道のりは、イエローテープが貼られて封鎖されていた。その前には人だかりができており、騒然とした空気が流れている。

 

 現場に到着した私は、いつもの高笑いを浮かべて見せる。

 ピシッと手を口にあてて、自信満々に胸を張る。

 

「たかだかイレギュラーモンスターごときで、こんなに慌てふためいて──お雑魚ですわ~!」

 

 煽り系としての腕の見せ所。

 私が、人混みの中に颯爽と突っ込んでいくと、

 

「バーニングの嬢ちゃんか。すぐに逃げろ! いつもの奴とは訳が違う──すぐにS級ハンターを呼んでくるんだ。ここは俺たちが──」

 

 そう声をかけてくる者がいた。

 彼は、ダンジョンの警備を請け負っているダンジョン協会の人間だ。

 お雑魚ウォッチング配信では、イレギュラーモンスターも何回か蹴散らしており、その時に顔を覚えられてしまったようなのだ。時々、配信も見てくれているそうで、今ではすっかり顔なじみである。

 

「あらあら、たかだか上層のイレギュラーモンスターごときで、S級ハンターを呼べる訳がありませんの。パニックしすぎですわ~!」

「馬鹿っ! 奴は見た目こそ似てるが下層の番人で──」

 

"イエローテープ無視して突っ込んでいったw"

"いつものことだぞ"

"警備員さんとすっかり顔なじみのバーニング嬢、何者なんだ・・・"

"おろおろしてるちづるちゃん可愛い"

 

 

「どいつもこいつも、緊急事態になったらオロオロするばかり。まるでうちの下僕たちみたい──本当に、雑魚ばっかりなのですわ~!」

 

 隙あらばリスナーも煽っていけ。

 煽り法典にもそう書いてある。

 

 

 そんなこんなで私は、巨大な豚型と御対面。

 

"いや、ちょっと待て。あれオークじゃねえ、オークキングやぞ"

"ふぁっ!? 下層のボスモンスターやん"

"なんで上層にそんなの迷い込んだの!?"

"災厄級やんw"

 

 コメント欄が、にわかに盛り上がる。

 さすがに追いかけきれないが、たぶん私のお雑魚ウィッチングを見て、イライラとしたアンチコメントが並んでいるのだろう(願望)

 

 

「ヒャッハー! 汚物は消毒ですわ~!」

「ひゃっは~! 汚物は消毒。ですわ~!」

 

(!?)

(アカン、ちづるちゃんが変な言葉を覚えちゃう……!!)

 

 私は、ハッと口を閉じた。

 変な言葉をちづるちゃんに覚えさせないため──この戦闘、一撃で終わらせる必要がある!

 

 

「見るに堪えない顔ですわね。地獄に還りなさい――終末魔法・ブレイズインフェルノ、ですわ~!」

「ですわ~! …………て、終末魔法──ッ!?」

 

 ちづるちゃんが、目を見開いた。

 

 ──ブレイズインフェルノ。

 地獄の底より炎を呼び出す最上位魔法の1つだ。

 さすがに消耗が大きいから、普段の配信では使わないんだけど、これもちづるちゃんの尊さを守るための必要な犠牲である。私のMPなんて、ちづるちゃんの可愛さの前には、無価値に等しいのだ。

 

 

 ──赤黒い炎が立ち昇る。

 ドゴォォォォン! と凄まじい音とともに、地獄の炎が豚型モンスターを包み込み、

 

「一丁上がり、ですわ~!」

 

"は?"

"ふぁっ!?"

"さすがに強すぎやろ何これw"

"【悲報】バーニング嬢、異変にまったく気づかない"

 

 

「お雑魚ですわ~! この程度の相手に苦戦していた皆さん、救いようがないお雑魚ばっかりなのですわ~!」

 

 私が、堅実にそんな煽りを重ねていると……、

 

 

「あ、あの嬢ちゃん何者なんだ……?」

「深層への番人の亜種だぞ、あれ。ワンパンとか有り得るのか……?」

「もう最悪、ダンジョンごと封鎖するしかないかと思ってたのに────」

 

 起き上がった探索者たちが、まるで化け物でも見るような目で私を見ているのである。

 

(あれ、何やら様子が──)

 

 その様子は、少なくとも煽られて悔しがっている初心者という感じではなく。

 どちらかというと歴戦の猛者たちが、まるで常識を覆す化け物に出会った、といった風貌のようで──、

 

 

「焔子ちゃん、S級モンスターのソロ討伐、おめでとう!」

「…………ぇぇええええ!?」

 

 無邪気なちづるちゃんから、そんな一言。

 そこで私は、ようやく異変に気が付き、素っ頓狂な悲鳴をあげたのだった。

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