以前ツイッターにあげた小話をもう少ししっかり書いてみた。
ルルーシュ(自覚済み)→マーヤ(全然気づいてない)
ヘタレはいいよね(!?)。
「そういえば昨晩はアジトにいなかったみたいだが、家に帰ったのか?」
シミュレーターから出るとルルーシュがいた。また何か資料を見ているらしい。
最近ここにいることが多いな、と少し不思議に思う。
今日は生徒会のメンバーも忙しく、集まりがなかった。彼の自室で作業してもいいと思うのだけれど。いやむしろ、そっちのほうが静かで集中できるのではないのかと疑問だ。シミュレーターは結構うるさいし、地下空間はあまり快適とは言えない。
(最近は家電や家具も持ち込んでだいぶ快適になってきてはいるけど……まあ、ここで作業するほうがより安心ではある、か)
少々疑問に思いながら答えようとしたものの、シミュレーターで喉がカラカラだった。
気づいたルルーシュが小型の冷蔵庫から出してくれたペットボトルのお茶を少し飲んで、喉を潤す。
「ありがとう。ううん、扇さんの家に泊まらせてもらったの」
「そうか。扇の家に……はあああっ?」
資料の方をしっかりと見つめていたルルーシュが、ぐわっとこちらを振り返って奇妙な叫びを上げた。
びっくりした。もう少しでペットボトルを落とすところだった。
「な、なにっ? それがどうかしたの?」
「どうかしたって、お前な」
彼の焦りっぷりになにか問題でもあっただろうか、と慌てて考えてみるものの、問題はないように思える。ルルーシュにも迷惑をかけていないし、扇さんは私の事情も知っている。
しかしルルーシュの視点では問題らしく、「とにかく座れ」と彼の目の前のソファを示される。
言われるままに座り、申し訳ない気持ちで彼を見ると、ルルーシュは「う」と呻いた後、額を抑えて長々と息を吐き出した。
「あのなぁ、お前は仮にも女なんだぞ?」
「え、うん」
「うんって……はぁ。扇は気のいい男かも知れないが、男だ。それもまだ若い」
なるほど、と頷く。何を心配しているのか分かってきた。あのときはどうしたものかと一杯一杯で深く考えていなかった。
「たしかにそうね」
「ああ、だから」
「扇さんに変な噂広がっちゃったら迷惑になるものね」
「もう少し自覚を……は?」
考えてみるとたしかにまずい。扇さんが女子高生を自宅に連れ込んでいる、なんて周囲の人達におかしな目で見られてしまう。幸い昨日は私服で学園の制服は着ていないし、他のメンツにも見られてはいない。今後もソコは気をつけたほうがいいだろう。
扇さんは現在、黒の騎士団ではトップ2の位置にいる。明確に決められている訳ではないが、皆そう思っている。そんな立場の彼に妙な噂が立つのは避けたい。
「今後は気をつけてから行くことにするね」
「いや待て。お前、絶対に意味を理解していな……は? 今後は、だと?」
「扇さんって意外と料理上手みたいでね。この間も豚汁と焼き魚用意してくれたんだけど……久しぶりに食べたんだよね、ああいう料理」
温かい料理。誰かとゆっくり食べる食事。父親が好んでいて、母がそんな父親に合わせて作ってくれた日本料理。
扇さんの「いつでも食べに来い」というのは社交辞令かもしれないと思ったけれど、カレンに相談したら「いいんじゃない? というか、なんだか私も久しぶりに食べたくなってきたかも」ということで今度一緒に行くことになっている。
思わず「楽しみだなぁ」とつぶやいた。
ルルーシュは沈黙し、何ももう言ってこなかったので、これで問題は解決したのだろう。
良かった。
そんなやり取りがあってから数日後、シミュレーター後にルルーシュに夕飯を誘われた。
「ああそうだ。今日はもう遅い。夕食食べていかないか? 今日は日本食なんだ」
「え、私もいいの? って、日本食? 咲夜子さんが作ってくれたの?」
「いや、俺が用意した」
「ルルーシュがっ? あなたが料理得意なのは知ってるけど、日本食まで作れるの?」
「ま、まあな」
「じゃあいただこうかな、せっかくだし」
「そうかっ!」
妙に嬉しそうなルルーシュに促されて部屋を移動する。というより、珍しいほどに機嫌が良さそうだ。
なんだろう? 今日はナナリーの誕生日、でもないし……そもそもどうして突然日本食なんだろう? ブリタニア料理とは調理法が違うし、材料揃えるのだって大変……まさか!
(ハッ、そうか。きっと日本人であるスザクのために練習したのね。それで、日本食を知っているだろう私に味見を)
基本素直じゃないルルーシュだけれど、スザクに関しては本当に心を許しているのが傍から見ているとよく分かる。
名誉ブリタニア人として苦しい立場の彼のことを思って、騎士団の活動で忙しい中、日本料理の練習を頑張ったに違いない。
ルルーシュの親友に対する努力を微笑ましく思いながら、その日の夕食は私自身楽しめた。さすがルルーシュ。料理でもなんでも器用にこなす。
見送ってくれるというルルーシュに太鼓判を押しておく。
「ごちそうさまでした。とても美味しかった」
「ああ、それはなによりだ」
「うん。ふふ、喜んでくれるといいね」
「……は? なんの話だ」
すっとぼけようとするルルーシュに笑う。
「スザクのために日本食練習したんでしょ?」
「…………」
「大丈夫だよ。あれだけ上手に出来てるなら、絶対に喜んでくれ……ルルーシュ? 目元を押さえてどうしたの?」
「お前はどうしてそう斜め上を」
「え?」
「違う。スザクのためじゃない」
自らの手で目隠しをするかのようにしていたルルーシュが、ふいに手を離してこちらをじっと見つめてきた。
いつもより声も低く、どこか様子の違う彼にどきりとした。
紫の瞳が、こちらをじっと見つめてくる。作戦を考える時の鋭い目つきでもなく、ナナリーを見つめる優しい目でもなく、普段のコチラをからかってくる目でもなく……真剣で、奥に何か熱いものがこもっているかのような。
「え? でも、じゃあなんで突然日本食を」
「それはっ」
ルルーシュが口を開く。なぜかとても緊張している様子に、こちらまで緊張してくる。彼がここまで緊張しているのだから、なにかとても深い理由があるに違いない。
じっと見つめ返す。強い意志の力を放つ紫色の瞳が、珍しく揺れている。何度もその整った唇が開閉され、興奮しているのか、頬は上気してやや赤く染まっていた。
「それは……たまたまだ」
身構えていた私は、彼の一言に肩から力を抜いた。ルルーシュは明後日の方向を向いている。照れた様子から、やはり私の予想はあたっていたのだろう。
「もう。素直じゃないんだから」
「うるさい。というよりも」
「?」
明後日の方を向いていたルルーシュがちらと私を見た。そして、呆れと……どこか温かい目で息を吐くようにこう言った。
『お前にだけは言われたくない』
マーヤちゃんのために料理の練習するルルーシュとか見たい。
でも結局通じなくて、扇さんの部屋に通うマーヤちゃん。そして扇さんに嫉妬するルルーシュ。
オーケー(何が)。
短めですが、裏でこういうやり取りがあったら美味しいですよね、というお話でした。
男女共通のシナリオなので、ある意味こういう妄想しがいがあるのが美味しい。