【ロススト】これは恋ではない【コードギアス】   作:染舞

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※ナリタ連山での話。第六章のネタバレが大いに含まれますのでご注意ください。


【ルルマヤ】乱れた呼吸

 

 瓦礫がC.Cの胸に突き刺さるのが見え、彼女はそのまま意識を失った。深々と胸に刺さっている瓦礫。溢れ出している血。普通なら助からないが、彼女は以前もそういう状態でも生きていた。それがなかったとしてもC.C.をここに置いていく、などという選択肢はない。

 とはいえここが危険なのも事実。抱き上げながら、白兜を見た。

 白兜のパイロットはよほどのことがあったのか。あのキレのある動きはなく、ただただ銃器をめちゃくちゃに撃ち続けている。

「マーヤ! 撤退するぞ! ……マーヤっ?」

 C.C.を抱えたまま蒼月に近寄り声をかけるが、反応がない。そういえばさっきも動きがおかしかった。

 嫌な予感がした。

 一度C.C.を白兜の射線に入らない位置に寝かせ、蒼月に近づいてハッチを外から開く。

「一体どうし……マーヤ!」

 見慣れた黒髪はそこにいたが、相変わらず返事はなく。ただ、ぐったりと機器にもたれかかっているのが見える。だらりと降ろされた手には力は入っておらず、血の気が引く。

「おいっ、しっかりしろ」

 その体に触れる。白い肌を赤い液体が覆っているのが見えた。戦闘中に頭を打ったのか、額から流れた血が目に流れ込んでいる。

 心臓が強く胸を打つ。

 恐る恐る頬に手を伸ばす。ただでさえ白いマーヤの顔は青白く、冷たい。

(呼吸は、している……生きている!)

 なんとかそのことを確認しホッとしたものの、しかしその呼吸は荒く、出血量は多い。このまま放置することは危険だ。早く安全な場所に行って処置しなくては。

 コックピット内で機器類を確認すると、どうやらエナジーはまだ残っているようだった。駆動系がだめになったのか、蒼月の動きはぎこちないが、なんとか動く。

 考えてみれば当然だ。蒼月の配置はここからかなり距離がある。そして役割としてもかなり多くの敵と戦っていたはずだ。

 連戦に次ぐ連戦。KMFもそうだが体力的にも限界が近かっただろう。それでも、撤退という俺の指示に従わず助けに来てくれたのだ。

 唇を噛み締めた。

 狭いコックピットの中、マーヤをゆっくりと抱えあげる。コレ以上負担にならないように、そっと。

 その体はまだ温かく、柔らかさもある。

(失ってたまるか)

 少しだけ……少しだけぎゅっとその体を抱きしめ、温もりをしっかりと確認する。生きている。大丈夫、彼女はまだ生きている。

 急いでハッチを閉め、C.C.を蒼月で抱え、その場を離脱する。

 脳裏をよぎるのは先程の危機。

 白兜に追い詰められ、味方は誰もいない時に駆けつけたマーヤ。あの時に感じた安堵はただ助かったというだけではなかった。

(お前が居れば大丈夫だと、そう思ったんだ)

 たとえここで他の駒を失ったとしても、お前が、お前さえ居ればと、そう思ったのに

『あなたが生きていれば私の復讐は叶う。そのためならば私は!』

 ぎりっと音がする。音の発生源は自分の口で、気づかぬ間に歯ぎしりをしていたらしい。操縦桿を握る手にも力が入る。

「自分の復讐を他人(ひと)に、俺に押し付けるな」

 苛立つ。

――お前はなんでお前自身をそう簡単に捨てようとするんだ。

「お前に死なれては困ると、そう言っただろうが」

 腕の中のマーヤは相変わらず苦しげで、今にも――消えてしまいそうで。

『あいつはただの駒だ』

 ふと以前の自分の言葉が脳をよぎった。頭が少し冷静になる。そうだ。駒だ。駒のはず、なのに……自分はどうしてここまで動揺している?

 いや、そもそも……どうして戻った? あのまま逃げていればよかったのに。きっとそうしていたとしても、マーヤはきっとそのことを恨まない。

(なのに、なのにどうして俺は――)

 戻ったところでKMF同士の戦いに生身で参加できるわけもない。むしろ邪魔になるだけだ。

 分かっていた。分かっていたのに、気がつけば足が動いていたのだ。

 そして今、ひたすらに呼吸が、心臓が早く短くなっているのを感じる。焦りが全身を包んでいる。

 どうしてこんなにも焦っているのか、自分でもよくわからない。

(作戦開始時から計算して、こいつはかなりの敵と戦っていたはずだ。エナジーの残りが少ないことからも分かる。

 その後俺のところに来て、あの白兜と戦った……俺を、守るために)

 いつからかは分からないが、機体がこの状態な上にこの傷と出血。

 相当な負荷がこの細い体にかかっていたはずだ。

 全ては俺を守るため。そのことが嬉しく、同時に苦しい。なぜかはわからない。でも……ひたすらに胸の奥が苦しい。

 苦しさから逃れるように、ファクトスフィアを使って周囲を探る。どこか、どこか落ち着いて治療ができる場所は――。

 そうして見つけた洞窟で処置を施し、その血が止まり彼女の呼吸が落ち着くまで、俺の呼吸が整うことはなかった。

 

 

 

『呼吸が乱れるその理由は、』

 




 短いんですが、ここまで。
 マーヤの処置をした後のルルーシュの声に焦りのような、安堵のようなものを感じてたぎりました。
 呼吸が途中に挟まっていて、焦っていた感を覚えたんです。それにわざわざ姿を表して守ろうとするとか、今回はルルマヤ好きとしてはやばいですねぇ。

 声優さんの演技と相まって、半端ない。
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