【ロススト】これは恋ではない【コードギアス】   作:染舞

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※コメディ?
 ちょっとルルがカッコ悪い……あれ? そもそも私、カッコイイるるを書いたことあっただろうか……。
 いつも以上に、キャラ崩壊あるかもなのでご注意。
 C.C.が登場します。


【ルルマヤ】微睡みの中の熱

 

「何やってるの、C.C」

 呆れ気味に声をかけると、緑色の髪を一つにまとめたC.Cがこちらを振り返った。水滴が飛ぶ。きらきらと輝く水滴の中、負けじと輝くC.C.の白い肌とやや鋭い瞳。本当に整った顔立ちだと思う。

 軍から逃げないといけないそうだけれど、この容姿は非常に目立つ。

 目立つというのに、当人はあっけらかんとしていた。

「見てわかるだろ。泳いでいる」

「うん。まあそれはそうなんだけど」

 学園の生徒ですらないC.C.は、どこで手に入れたのか。学園の水着を着て誰もいない早朝のプールで悠々と泳いでいた。本当に軍から逃げているのかと疑問を抱いてしまうくらいに。

 早朝。いつものように早く登校し……ぶらぶらと学園内を歩いていると、見知った姿を見つけ、慌てて追いかけたらこれだ。肩をすくめた。

(ルルーシュに、学園で見つけたらすぐ連れ帰れって言われたけど)

 普段はずっとルルーシュの部屋にほぼ引きこもっているらしいC.C。たまには外に出たくなる、という気持ちも分かるが、もう少し自重してもらえないものか。

 とにかく、着替えさせてルルーシュの部屋に連れて行かなければ。

「ほら、もう満足したでしょ? そろそろ生徒たちがやってくるから」

「大丈夫だ。こんなに朝早くに誰が来るというのだ」

「そんなことないよ? このまえシャーリー……水泳部の子が、早朝はプール空いてるから来るって言ってたし」

「ふ~ん? しかし、問題はないだろう。堂々としていれば意外と気づかれないものだ」

「それも一理あるけど……一応、私もルルーシュに頼まれてるから」

 ほらっと、プールサイドに寄って来たC.C.に手を差し出す。C.C.はやや不満そうな顔をしつつも手を伸ばし、

「そうだ。お前もたまには泳いだらどうだ?」

「え? って、うわっ」

 ぐいっと手を引かれた。

 

 

 

***

 

 

 

 早朝。来るはずのない客が来た。

「何をやっているんだ、お前たちは」

「う……私のせいじゃなくてC.C.が」

「こいつが勝手に落ちただけだ」

「なっ? あれはあなたが引っ張ったんでしょ!」

 C.C.はともかく、マーヤもセット。しかもなぜかずぶぬれの恰好で。

 話から察するに、C.C.がプールで堂々と泳いでいたので連れ戻そうとしたマーヤをC.C.がプールに落とした、ということのようだ。

 何も悪いことはしていない、という顔のC.Cにマーヤが言い返している姿へ目をやると、黒髪から水滴がたれていてため息をつく。

「はぁ。分かった。とりあえず、マーヤ。お前はシャワー浴びて来い。着替えは……貸してやる」

 ぽたり、ぽたりと髪から滴り、肌を伝う水滴。肌に張り付いた髪と制服。浮かび上がる体の輪郭。塗れたシャツ越しに見える白い肌。

 それらに一瞬意識がいきかけ、目を逸らす。

 C.C.がにやついているのも視界の隅に捉えたが、無視をする。

「うん、ごめん。ありがとう」

 マーヤがシャワールームへ向かったのを確認してから、息を吐きだす。

「ふふ。どうだ? あいつ、中々スタイルが良いだろう?」

「っ」

「ああ、いや。知っているか。あの黒の騎士団の制服を用意したのはお前だものな」

「ごほっ」

 マーヤがいなくなった瞬間を狙ったように、C.Cがこちらをからかってくる。身構えていたとはいえ、予想外の方向に思わずむせる。

「たしかに紙に書かせたが、直接は見ていない!」

「ふーん?」

 疑うような顔を睨みつけるも、まったく怯む様子はない。

 もう気にしないことにし、あいつの着替えを用意する。カレンに貸した時と同じように俺ので

(待て。俺の服を着るのか? マーヤが?)

 適当に取り出した服を前に、動きを止める。なぜだか妙に胸がざわつく。

 自分の服を着たマーヤの姿を思い浮かべる。自分よりも小柄な彼女が身につければ当然袖や裾は余るだろう。ぶかぶかな男物……それも俺の服を着た――ッ!

(何を動揺している? カレンにも貸しただろう? あれと同じことだ)

 深呼吸をする。

「そうそう。あいつ、大きさはあのカレンとかいう小娘ほどではないが、形は整っているし、柔らかさと張りは中々のものだぞ」

「うぐっな、なんの話だ?」

 深呼吸が途中でつまる。変な咳が出た。恨めし気にC.Cを見れば、

「さて? なんの話だろうな?」

 手を妙な形で動かし、笑いながら部屋を出て行った。

「お前っどこでそんなことを知っ……いや、そうじゃない。落ち着け、俺」

 再び深呼吸を再開するも、まったく心臓が落ち着く気配はなかった。

 

 

 

***

 

 

 

「ふぅ。ありがとう、ルルーシュ。助かった」

「あ、ああ」

 髪を乾かし、ルルーシュから借りた服を着てようやくほっと息を吐く。あのままでは風邪をひくところだった。

 笑って礼を言うと、なぜか彼がこちらから目線を外す。

「どうし……ああ。服はちゃんと洗ってから返すね」

「……分かった」

 いつもより不自然に平坦なその声に若干違和感を覚えるものの、それにしても、と続ける。

「やっぱりなんだかんだ、ルルーシュも男の子なのよね」

「は?」

「ほら。こんなにもぶかぶかだし」

 細身なルルーシュだが自分よりは身長が高い。なのでその服を着れば当然袖や裾が余る。それにいくらルルーシュが細いとはいえ、胴回りもやはり自分より断然大きい。

 サイズの違いを示すように軽く服を引っ張る。

「ふぁっ揺れっ?」

「へ? ふぁゆれ?」

 こちらを見下ろしたルルーシュが奇妙な声を上げた。首を傾げる。

「ちっちちちちがっ、今のはっ」

 その後で慌てて口元、鼻から下を完全に手で覆い隠すルルーシュ。様子がおかしい。近寄る。

「ルルーシュ、もしかして」

「っ?」

「風邪ひいた? 顔赤いけど」

 熱を測ろうと額に手を伸ばす。触れた指先はたしかにやや高めの熱を伝えてきた。そもそも普段の彼ならその手を避けただろうに、受け入れたこと事態が異常を示している。

「ほらやっぱり。高熱ってわけじゃなさそうだけど、今日は念のために学校を休んだ方がいいんじゃない?」

「……ああ、そうだな」

 ルルーシュが私の手に顔を寄せてくる。冷たく感じて心地よいのかもしれない。これはますます熱が上がる予兆かもしれない。

 そんな時に迷惑をかけてしまって申し訳ない。

「じゃあこんなことしてないでベッドで寝てて。ナナリーや会長には言っておくから」

「……ああ」

 返ってくる言葉は少なく、手を離すと一瞬ルルーシュの目が私の手を追いかけてきた。その姿は迷子になった子供のようで。

(体調不良って不安になるものね。あとでまた様子見に来るとして……ナナリーたちに連絡、と私の制服を洗って乾かさないと)

 さすがにルルーシュの私服を着てうろつくことはできない。いらぬ誤解を招いてしまう。

 C.C.のせいで面倒なことになった。

「まあ、ルルーシュの体調不良にいち早く気づけたのは、不幸中の幸いね」

 

 

 

***

 

 

 

 はぁ。

 楽な格好に着替えてベッドに体を静め、手首を額に乗せる。

『やっぱりなんだかんだ、ルルーシュも男の子なのよね』

 頭の中で、当たり前のことを言うマーヤが浮かんで消えない。

 俺の服を着て、俺との体格差を見せつけるように動き……ふわりとあの長い髪や自分にはない膨らみが揺れて、

『ルルーシュ、もしかして風邪ひいた?』

「っ」

 額に軽く触れた指の感触と、いつも以上に近い距離にあるマーヤの顔。鼻孔をくすぐる少し甘い香り。

 離れなくてはいけないのに身体はなぜか動かず、額に触れていた手が離れていくのを惜しく感じて目で追いかけてしまった。

 コチラを心配げに見上げてくるその顔にもっと近づいて。その吐息をもっと感じたくて。少し甘いその香りに酔いたくて。

 頭がぼーっとする。

「熱だ」

 すべては熱のせいだ。

 頭が働かないのも。ずっと頭の中で彼女のことばかり考えるのも。自分らしくない言動をするのも、全部。

「マーヤ」

「なに?」

 返ってくるはずのない声が聞こえ、思わず目を見開く。慌てて起き上がるとそこにはマーヤがいた。俺の服を着た姿は、幻ではなさそうだった。

「なっ、おまえ」

「ごめん。声かけてから入ったんだけど……大丈夫?」

 どうやら心配で様子を見に来てくれたらしかった。そんなことが、妙に嬉しくてたまらなかった。

 違う。

 熱のせいだ。

「ナナリーとミレイさんには話しておいた。大げさになってもなんだし、軽い体調不良って言っておいたけど」

「そうか」

「ええ。あなたは元々働きすぎだもの。たまには休んだ方がいいわ」

 働きすぎ。その中には様々な意味合いが込められている。

 フッと笑う。

「ミレイ会長たちにはさぼりすぎだと言われているが?」

「まあ、傍から見るとそう見えるかもだけど」

 でも私は知っている。

 マーヤは言外にそうにじませた。そうだ。こいつは知っているのだ。俺の別の顔も。俺の弱さも。

「なら、頑張っている俺に褒美をくれ」

「褒美?」

 すべては熱のせいだ。

 こんなことを言い出したのも、首を傾げるマーヤの手を取ったのも、全部……全部熱のせい。

 自分よりも小さく、体温の低いその手を額に乗せる。ヒヤリとした手が心地よく、心落ち着けた。

「お前の手は、冷たくて気持ちがいい」

「なにそれ? 私の手は冷○ピタなの?」

 呆れつつも笑っているのが分かるマーヤの声。きっともう片方の手で口元に触れているのだろう。

(見た目と仕草だけは上品だからな……暴れ馬のくせに)

 冷たかった手が俺の熱でぬるくなっていた。それでも心地よいのは変わらない。ずっとこのままでいてほしい。

「はいはい。あなたは頑張ってますよ」

 熱のせいだ。 

 からかうようなその口調さえ、耳心地が良いなんて。

 だから――熱が下がればきっと

 

 

 

(こんな想いはなくなるはずだ)

 




 ヘタレなルルーシュって書いてて楽しい。
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