1.異世界から来た外道
―――この世界には、魔術と言われるものがある。それは、生命力を用いて超常の力を行使する行為であり、主に神話の伝説などを参考にした超常が行使される。その魔術を行使する者が魔術師であり、魔術師達がある目的のために集まった集団を魔術結社という―――
――廃工場――
数刻前まで、とある魔術結社とゴロツキの集団が抗争を繰り広げていた廃工場も、抗争が終わると静寂を取り戻していた。
諸君は疑問に思うかもしれない。
『魔術結社とゴロツキの集団が抗争だって?そんなの魔術結社が勝つに決まっているし、そもそも抗争にすらなりやしないだろ!』と。
然り。魔術結社の一員、いわゆる魔術師にとって、ゴロツキなぞ、いいカモだ。
しかし、今宵襲撃されたゴロツキ共は、普通ではなかった。何を隠そう、彼らは『位相』なぞ関係ない、正真正銘の異世界からやってきたゴロツキであり、”この世界”のゴロツキなぞ比較にならない凶暴極まる危険な連中であったのだ。
その証拠に、見よ!積み上げられた魔術師の生首の山を!十数個はくだらないであろう生首は、すべてこのゴロツキ共の手で切断されたのだ!その頂上に据え置かれた生首は、この魔術結社の長の生首である!名実ともに、魔術結社が壊滅させられたのだ!本来相手になるはずもない、ゴロツキ共の手によって!
しかしゴロツキ共も無傷ではない。死人や怪我人は一定数出ていた。
上半身がすべて吹き飛ばされ、死んだ者。謎めいた固形じみた死体となった者。跡形もなく爆散し、死んだ者。頭を半分削り取られた者。四肢の一部、あるいは全てが千切られた者。
だが、ゴロツキ共は頭がおかしかった。どうしようもないほどに、狂っていた。
「ヒヒヒッ!今日は人数が少なくて楽だったなァ!死人も一桁で済んだしなァ!」
「オイオイ!オレは右腕が吹っ飛んだんだぜ!そりゃヒデェだろ!ギャハハァッ!」
「とにかく今日はこの魔術師共の体の方をキャンプファイアーにして、燃やそうぜ!」
「死んじまった奴はどうするよォ!ヒャヒャヒャ!」
「死んじまったもんはしょうがねェ!そこらに埋めといてやれ!ギャッハァ!」
仲間が死んだというのに、ゴロツキ共の狂騒は止まらない。止まるはずもない。彼らにとって、暴力は趣味だ。これ以上のない楽しみだ。彼らにとって、死は愉快な隣人であり、恐れ、逃れるものではない。
ヒトはいつか死ぬことをよく知っている彼らにとって、仲間の死は悲しむべきものではない。ただ「その時が来た」というだけだ。
まして、死の直前まで暴力の渦の中にいることができたのだから、それはある意味祝福すべき出来事なのだ。彼らにとっては。
そう、彼らは「この世界」では唯一の、魔術結社にとって脅威になりうるゴロツキの集団であった。
曰く、人間を一瞬にして殺すことができる魔術を恐れず特攻してくる狂気の軍団。
曰く、『
曰く、『謝肉祭』『剣の契約』『錆び鎖派』『奈落街』『鋳鉄工業』といった、魔術師に抗する犯罪者集団の始祖。
曰く、『戦争代理人』を完膚なきまでに負かした。
曰く、聖人の一人を半死半生まで追い詰めた。
曰く、十字教にケンカを売ってなお、今まで存続している化物集団。
曰く、魔人を全面降伏させた。
曰く、魔術師の死体を芸術作品にして、邪悪な金持ちに売っている。
その逸話は虚実入り交じり、どれが真実なのかさえわからない。ただ、わかることは、彼らがヤバい集団であることだけだ。
彼らは『
その廃工場の隅で、ドラム缶を積み上げ、ゴロツキの集団を睥睨する者がいた。彼こそ、『鋼龍』の一応のボス、ドローム・A・ヴィスタ。
魔術と科学のはざまにて暗躍する秘密結社『6人組」』の創立者兼首領であり、『鋼龍』のほかの面子と同様に、異世界からやってきた存在だ。
黒の中折れ帽、ドブネズミ色のジャケットに囚人服じみたセーター、黒く薄汚いスラックス。右手につけたカギ爪をこすり合わせ、ゴロツキ共による暴虐を面白そうに見るその様子は、まさに魔術世界にケンカを売ったキチガイ共の長にふさわしいものだった。
だが、楽し気にしながらも、彼の頭は懸念材料を見つけていた……。
(そろそろ、この廃工場も潮時かのー。魔術結社共の襲撃の頻度が増してきた。協力者がいるとはいえ、そろそろ、アジトを移動せんとばれるのー。奴らと全面戦争もいいが、まだ早い。)
ドロームは笑みを深め、新たなアジト候補を考える。思えば、この廃工場には、長くいすぎたのかもしれない。工具、壊れた機械、血の付いた凶器群。地面がむき出しの床。仲間と総出でふさいだ窓。丁度いい広さと、薄汚さ。打ち捨てられた工場団地という、人が寄り付かない立地。自分たちにとって、非常に都合がいい場所であった。
長年のアジトを惜しむ思いを振り払い、新たなアジト探しに心を向ける。
(薄汚い廃工場に長くいたからかのー。次のアジトは小ぎれいなところがいいのー。どこがあったか……。)
しばしの間があって何かを思いついたのか、ドロームはニィ、と口の端を吊り上げると、電話を取り出した……。
ガラスのハートなので、お手柔らかな感想をお願いします。
あらすじで察した方もいるでしょうが、今作には、
・派手な原作改変
・多数のオリキャラ
・にわか要素
・クズ共の跳梁跋扈
・クズ共が強い。尋常でなく強い
などがあります。ご注意ください。
それと、改変度が低い話は容赦なく大部分カット、全カットしていきます。
具体的には、旧約1巻とかね。……大丈夫かなぁ、この小説。
とりあえず異名が出た連中は旧約の間には出すつもりです。
どいつもこいつもろくでなしのクソ外道なのでご注意を。
※2023/09/27・29 改稿
※2023/10/01 改稿
※2023/10/09 改稿
※2023/12/19 修正(『錆鎖派』→『錆び鎖派』)
※2024/02/03 修正(魔術の解説の改行)