とある外道の6人組   作:毛糸ー

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100話達成!これも読者の皆様のおかげです!ありがとうございます!


EX.骨を折って働けば10円くらいは拾える

――木原唯一のラボ――

 

「忌々しい……」

 

 彼女は己の研究室で、自分以外の者がいないことを確かめ呟く。更に声を大きくし、繰り返す。

 

「忌々しい……!」

 

 彼女が激している相手は、『峰岸』。就任当初から横紙破りを繰り返す統括理事会会員である。

 

 奴は、統括理事会が決定するよりも早く垣根帝督を解放し、意図せずして木原唯一が行おうとしていた観測を妨害した。その上、垣根帝督の()()()()に際して未元物質(ダークマター)を収奪した疑いがある。

 

 普通ならば、『峰岸』のような横紙破り野郎は即刻統括理事会から降ろされる。いやそもそも、そんな輩は統括理事会会員になりはしない。

 

 だが、『峰岸』は普通ではなかった。統括理事会会員は大なり小なり『暗部』との関わりがあるものだが、奴はその『暗部』にどっぷり漬かっている。否、奴とその取り巻き共こそ今の『暗部』の最深層、木原唯一ですら知らぬ深みを形作る者達だ。

 

 『峰岸』は親船最中暗殺を皮切りに、『暗部』の剛腕を振るい、血と殺戮を積み上げた。その惨状は同じ統括理事会会員、そして統括理事会長でさえも『峰岸』の無法を見逃すほどだ。

 

 木原唯一にはそれが我慢ならない。一度、学園都市の使者として『峰岸』に会ったが、彼女が見たところ奴は、分不相応な権力を手に入れ調子に乗っているただのゴロツキ共のボスに過ぎない。そんな輩に統括理事会長はともかく、彼女の()()が手をこまねいているのが我慢ならないのだ。

 

 彼女は乱暴に携帯電話で()()()と連絡を取る。そのスパイは、木原交雑。木原一族の端くれにして、特能総研の一員。その彼は木原唯一への思慕を彼女自身に利用され、こうして体よく使われているのだ。

 

 彼は当初胡乱な放言学者ザゾグ・ザンリックを監視するために送り出されたが、ザゾグが『峰岸』と関係が近いと分かってからは、奴がザゾグを尋ねてきた際の会話などを横流しされていた。もっとも、それが生かされることは無かったが。彼女の()()に下手な手出しは控えろと言われたためだ。

 

 その交雑が、コール音一回で応答した。

 

「はい!何でしょう唯一さん!」

 

 木原唯一は『木原』としても下の下のカスを使わねばならない怒りを木原交雑に伝えぬよう、努めて冷静にふるまう。

 

「……交雑君、特能総研の情報提供に加え、君に頼みたいことがあります」

「はい!何でしょう!」

「『鋼龍』や特能総研に破壊活動を仕掛けてほしいんですよ。奴らもそろそろ、報いを受けねばなりませんからね」

 

 唯一の頼みに対し、交雑の答えは(意外な事に)色好いものではなかった。

 

「…………唯一さん、僕は唯一さんの怒りはよく分かっているつもりです。ですが、奴らに怒りのまま殴りかかっても返り討ちにあうのがオチです」

 

 私とお前では格が違う!そう言いたいのをこらえ、木原唯一は黙って先を促す。

 

「それに、特能総研でも最近、幻生さんや副所長が僕の一挙手一投足に目を光らせているようで……」

 

 交雑の言い訳めいた言葉に舌打ちを放ち、連絡を一方的に断ち切る唯一。深呼吸をし、()について考え始める……。

 

――『6人組』定例会――

 

 一端覧祭が終わった後の『6人組』定例会で、6人は巡り合わせとか、そういうものについて思いを巡らせていた。

 

「まさかおんしらの戦力不足が解決されるとはのう……。」

 

 ドロームが感慨深く呟く。トゥールスチャがクロイトゥーネの改造と誘導をサボっていたことが判明した数時間後、蠢動が『デカい蟲が貴様に言われて集めた酒やら煙草やらヤクやらを食い荒らしている』と連絡があり、ドロームはそこに急行したのだ。

 

 不機嫌なドロームが『スウォーム』の根城に着いた時、蝶とも蝗ともつかぬ、大量の目玉のついた影はドロームを一目見てドゲザした。それを見てドロームは試しに『コイツ等の護衛をせい』と命令すると、その巨大蟲は『スウォーム』のアジトの天井に張り付いたのだ。

 

 追加でドロームは奇怪光景に戦慄する蠢動らを指さし、『コイツ等の言うことを聞け』と蟲に命令したところ、蟲はこくりと頷いた。後で蠢動に聞いた所、『天井裏で待機しておけ』と命令したところ、素直に従ったという。

 

「……あれはいったい何なんだ?」

 

 あの巨大蟲の体細胞を分析したザゾグは、不可解だといった表情を隠さない。実際、蟲の体細胞はザゾグの見たことのないものであった。強いて言えば人間の細胞に似ていたが、だが決して人間の細胞とは言うことはできなかった。

 

「学園都市の生物兵器と言う線は無いのか?」

「いや……学園都市が扱いにくい生体兵器を作るはずが無い」

「その通り。ガキ共の扱いですら苦慮しているこの都市が、生体兵器など作る訳がなかろう。野生動物は時に、ガキよりも行動が予測できんからな」

 

 多々羅の質問に、蠢動とザゾグが答える。そもそもビジネスで兵器を作っている学園都市が、そもそもの兵器製作費に加え食費など余計な費用が掛かる生体兵器を作るはずも無かった。ただ、殺戮のために兵器を作る負業部隊(ふごうぶたい)の長は何か感じ入った様子で呟く。

 

「なるほど……蟲の外観というのは相手に不快感を抱かせ、士気を下げる効果があるな……。我々は死体を貪る蛆やら死出虫やらを見慣れておるゆえ、士気は低下せぬ。極めて機能的な兵器であることよ」

 

 学園都市にいながら騒動に一切かかわっていなかったアーランズが一端覧祭の総括を述べる。

 

「この一端覧祭の狂騒は骨折り損のくたびれもうけと思ったが、最後に牡丹餅が転がり込んできたということか」

「そうじゃの……あっ!?」

 

 ドロームがそれに首肯した後、何かに気付いた様子になると、額を叩く。そして、最後に小声でつぶやいた。

 

「バードウェイのクソガキのこと、完っ全に忘れとったわ……」




実際金銭にすれば差し引き10円くらい、『6人組』は得しています。
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