――――東条猩々について
「ヒヒヒヒ……私が勧誘した中で一番社会から逸脱した奴だねぇ。カタギの連中、これほどの人材を腐らせるのはもったいないとしか言えないね」
――――六角散々
「奴は部位をきっちり切り分けてくれる、有難い限りだよォ……くひひ」
――――ハイドラ
「ワシはこやつ大好きじゃな!奴の言う通り、老若男女死ねば死体よ!」
――――ドローム・A・ヴィスタ
――学園都市第十三学区――
「全く……変な挨拶など、するのではなかったな」
東条猩々、別名『飛び猿の猩々』は人間の頭を飛び石にしながら自分の担当分である最後の標的を追う。彼にとってこの殺しはあまりにもイージー過ぎた。何しろ、隠れて後ろから近づき、首をへし折れば決着するのだから。ゆえに、最後の標的に対して遊び心を出してしまった。
黒い革ジャンを纏った標的の前に、殺気を溢れ出したままエントリーし、威圧的にアイサツを行ったのだ。腕に覚えがあるらしく、立ち向かってくるであろうと思われた標的はそれを見て即座に逃走。それを見て猩々は呆気にとられ、我に返った時にはその姿はゴマ粒めいた有様と化していた。
……最初かなり離された距離もだいぶ近づいていた。今や、標的の表情をも拝むことができる。その表情は恐怖に歪んでいる。猩々は初めから察するつもりもないが、彼の恐怖は恐るべき存在が自分の命を狙いに来た事だけから溢れているのではない。
人間の頭を飛び石めいて使いながら、飛び石にされた相手に一切気付かせないそのワザマエをも恐れたのだ。猩々はどこをどうすれば人間の身体が使い物にならなくなるかよく知っている。壊し方を良く知るということは、どうすれば壊れないかをよく知っていることでもある。
ゆえに、人間の頭を飛び石にしても首がへし折れないどころか気付かれもしない跳び方を見つけるのは朝飯前であった。もはや、懐のフックロープで首を狩れる位置にまで近づいている。だが、そこで少年は人気のない裏路地へ走り込んだ!
並大抵の相手なら効果があったかもしれない。だが彼を今追跡しているのは、その身軽さで解体癖を差し置いて『飛び猿』という異名を付けられたほどの怪物であった。猩々は小賢しい足掻きを見て笑みを浮かべると、飛び石にしている人間の頭から飛びあがった!
「イヤーッ!」
小さくキアイを発すると、懐のフックロープをビルの端にひっかけ空中機動!標的を見つけると、後頭部にトビゲリを放つ!
「サツバツ!」「アバーッ!?」
ナムアミダブツ!黒革ジャケットの少年の頭が、丸ごと消し飛んだ!その勢いで空中一回転し、地面に降り立った猩々は、物足りなさげな顔をしている。
「ンン……存外容易に済んでしまったなァ……」
ボヤキの後に数瞬考え、残忍な思い付きに顔を歪めると、猩々はフックロープをビルに伸ばし、夜の街に消えて行った……。
元々猩々はフックロープを駆使して自在に飛び回るキャラにする予定でした。
ですが、それではインパクトが弱いなぁと思ったので、人体解体屋さんに相成りました。