とある外道の6人組   作:毛糸ー

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11.宝の山

――特能総研――

 

 『人的資源(アジテートハレーション)』が始まった頃、特能総研は鉄火場の中にいた。

 

「機材をありったけ用意しろ!」

 

 ザゾグの怒鳴り声が響く。だが、その表情は凄絶な笑みが浮かんでいる。この世の神秘、秘められるべき秘密全てを暴き、野放図に広めんとする怪物の笑みが。実際彼の背中からは異様なアトモスフィアが立ち上り、ザゾグと比較的付き合いの浅い乱数・交雑は彼に近づけずにいる……!

 

「ひょひょひょ……所詮外付けの動機付けじゃあ大した技術は使われていないと思うのだけどねぇ。小学生の自由研究にも劣る技術の博覧会がそんなに面白いかい?」

 

 戦慄している木原乱数・交雑をさておいて、木原幻生は長閑げに話しかける。幻生はザゾグの長年の友人であるゆえ、このプレッシャーにも慣れているのだ。ザゾグが幻生を睨みながら答えを返す。

 

「……幻生。貴様も、宝石は宝石店でしか見つからぬと考えておる口か?」

「…………?」

 

 幻生が首を傾げる。一面、幻生の物言いももっともであった。『人的資源(アジテートハレーション)』によって先導された『ヒーロー』共が扱っている技術は、木原一族の元重鎮にとっては子供の遊びにも劣るほどにしょうもないものであった。

 

 ゆえに、ドロームに頼んで滞空回線(アンダーライン)を盗み見してまで『ヒーロー』、ひいては薬味久子一味の様子を見ているザゾグを呆れるように見ていた。だが、ザゾグにとっては、今回起こった出来事は宝の山であった。

 

「幻生よ。宝石は原野でも見つかる。それを忘れるなよ」

「……ひょひょひょひょ。彼らの中から、私を驚かせるようなものが発見されるとでも言うつもりかね?正直それは私を見くびってはいないかい?」

「……技術に貴賤は無い。貴様にとってつまらぬ技術でも、積み上げれば木原一族すら吃驚する代物が生まれぬとも限らん。あるいは、その技術が丁度、ある研究の最後の一ピースになるということも有り得ん可能性ではない。そうだな……『どれだけ偉大な新理論も、些細な計算ミスから崩れる』といったところか」

「ひょひょひょひょ。君は詩的だねぇ。……まぁ、君の言うことも一理ある。一緒に分析しようか。君の言う所の宝石の原石が見つかるかもしれないからねぇ」

 

 幻生は肩をすくめると、ザゾグと共に分析機器類の調整にかかった。ザゾグは気分が高揚しているのか、普段と異なり無駄口を叩きまくる。それに、幻生も応じる。

 

「しかしまぁ、アレイスターの犬の情婦め、統括理事会会員を篭絡するとは……高々娼婦の分際で、頭が高いな」

「ひょひょひょひょ……俗物は利用しやすいからねぇ。彼女もそのたぐいだったんじゃないのかい?」

「いや……『峰岸』から、薬味とやらの()()は10人中9人しか救えない状況を解決しうる素質を持つ救済者だと聞いている。元々はあの女、『峰岸』を失脚させようと様子を伺っていたが、あの腐れ売女と関わってからは積極的に利用せんとする姿勢を見せ出したそうだ」

「ひょひょひょ……唯一君は言動を取り繕ってはいるが、僕らと同じ木原一族だからねぇ。『善意』を利用するのはお手の物だろうさ」

「然り。その外見を取り繕った阿婆擦れがアレイスターのカスに恭順する犬っころに情婦めいて入れ込んでいるのは同病相憐れむものを感じさせるがな」

「……言っておくが、脳幹君は木原一族のトップだよ?その脅威を軽く見るのはどうかと思うがねぇ」

「…………フン。奴が手練れなのは評価している。だが、あのカスに恭順しているのが死ぬほど気に入らんだけだ」

「全く……君のアレイスター嫌いも相当だなぁ」

 

 口さがないザゾグの発言の数々に、木原交雑の目は細まる。木原乱数の訝し気な視線に気づくと、すぐに彼は表情を取り繕ったが、表情が引き攣るのは止められなかった……。

 

――天体水球(セレストアクアリウム)バックヤード――

 

「……どうする?これ」

 

 『鋼龍』による『藍花悦』殺しが一段落した頃、佐久辰彦は、戦略SLGめいた画面から目を背け、山手、ベニゾメ、そして眼下の水槽に泳ぐシャチに問う。一党のリーダーである蠢動、シャチに脳を組み込んだ外道科学者が辛うじて答える。

 

『まぁ、隠せるものは隠して、隠せないものはカバーストーリーで納得させるしかないんじゃないか?』

「それが通じる殺戮の規模じゃないですよ……!いくら統括理事会肝いりのプロジェクトとはいえ、数千人規模の人間の死を偽造するのは無理がありすぎます!」

「しかもこれ絶対、『ヒーロー』以外も死んでますよね?」

「……やめてよね。これ、最低でも『統括理事会の暴走で学生の暴動が扇動されて死者が出た』とでも喧伝しなきゃ納得してもらえない規模よ?そしてそんなことをすれば、学生やその親は間違いなく反発して、面倒(私にとってはスクープだけど!)が起きるでしょうね」

 

 先程まで佐久が見ていた戦略SLGめいた画面には、ドロームが連れてきた十人の傭兵、『人的資源(アジテートハレーション)』で暴走した『ヒーロー』共、『藍花悦』達が学園都市を模したマップ上に光点として示されていた。

 

 画面に映された絶望的な真実は、『藍花悦』を殺し切った阿呆傭兵共が、『ヒーロー』共を血祭に上げまくっている様をまざまざと映し出していた。無理矢理情報をねじ込まれて暴走したとはいえ、『ヒーロー』は元々表の住人である。それをこうも躊躇いなく虐殺するとは。

 

 山手は傭兵を示す光点の周りにある『ヒーロー』共の光点が次々と消えて行くのを半ば他人事めいて見守る。呆然としているのだ。ベニゾメも、己がスクープにするならともかく、ここまであからさまな虐殺を隠蔽せねばならないというふざけた事態に、頬が引き攣っている。

 

『ドロームの奴が自分も隠蔽に協力すると言ってきた時は奴も殊勝になったかと思ったが……このざまを見て納得した。これは奴が協力せねば隠し切れん』

 

 スピーカーから響く蠢動の声。虚ろな目玉で画面を見ていた山手は、ふとこのバックヤードの屋根裏に住まう蟲のことを思い出した。

 

「ボス、あの蟲、どうしたんです?」

『ああ……『藍花悦』虐殺の隠蔽工作のためにドロームが貸し出した死体漁り共の護衛をさせてる。……人に見咎められるなとは言い含めてあるから、大丈夫だと思うが」

 

――学園都市の裏路地――

 

「何なんだろうなぁ、あの蟲」

「そんなどうでもいいことは考えるな。取り合えずこの死体、乾燥させて詰め込んじまおう」

「……人間?蟲?イモータル?……分からん」

 

 散々一味が完全に自由行動に移行した頃、ヨゴレ・ニタリ・オオセの死体漁り三人衆は、傭兵共が作り上げた死体を回収していた。喰らうために。ヨゴレらは手早く死体を持ち寄り、溶解毒で溶かし、四角く成形した後、襤褸の懐から取り出した謎の粉をかける。

 

 すると、死体が粉を吹きながら干からびていくではないか!これなるは”異世界”のおぞましき食人科学の産物!死体を急速に干からびさせるための代物!ヨゴレの指先から生じる溶解毒によって黒く変色し、四角いキューブ状にされた死体にも問題なく作用した!

 

 干からび、体積が小さくなった死体を清掃車めいた黒い車に詰め込んでいく。ドロームと協力しているという組織、『スウォーム』から送られてきた人間大の蛾と人の融合めいた巨大蟲は、今は上空にいる。広く周囲を監視するためだ。

 

「次、行こうぜ」

「ああ。……あの蟲、ついてきてるか」

「オーケー、オーケー……」

 

 彼らは干からび小さくなったキューブ状死体を詰め込み終わると、次の現場に消える。上空の巨大蟲も彼らに合わせてついて行く……。




最近、とあるの真っ当な二次創作を見てると心が痛む……
だからといってこの小説を書くのを辞めるつもりはありませんが。
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