――第三学区・高層ビル一階――
第三学区のある高層ビル。この高層ビルには統括理事会会員の一人、貝積継敏のオフィスがある。上条当麻が足を踏み入れ、『
そのビルの一階、上条当麻が貝積継敏から渡された『
(やれやれ……まずは簡単に任務が済み、良かったことだ)
無論、この奇怪現象の正体は手塚鬱々である!鬱々はドトンを極めているため、土から簡単にビルの外壁に潜り込めるのだ!また隠密にも長けているため、壁の中にいる鬱々の気配は余程のことが無ければ悟られぬ。
ゆえに、今回鬱々は『藍花悦』殺害に加え、お使いめいた任務をいくつか授かっていた。一つはこの『
この『
片や、松定博士のベストセラーの確保を依頼したのは特能総研である。松定博士が提唱し、『
(終わった終わった。帰るか)
お使い任務を終え、帰ろうとする鬱々の背中を、異様な気配が叩く。それは、この世の恨みつらみが集ったかの如き禍々しき気であった。だが、鬱々は怯えることなく、むしろ肩をすくめる。異様な気配の正体をよく知っているからだ。
(……誰だ、早々の腐れ爺を手ひどく痛めつけたバカは)
然り……鬱々が土中でぼやくように、この異様な気配の正体は早々であった。
早々は『バジリスク』の開発の過程でいくつもの街区を実験のために壊滅させているため、凄まじい量の恨みを買っていた。ゆえに、多くの復讐者達が彼に襲い掛かってきた。だが現実は無常である。直接襲い掛かった者達はゴミのように返り討ちにあい、それで終わった。
問題は、生物兵器やノロイによって早々に地獄のような苦痛を味合わせながら殺そうとした者達である。これらは実際、初めのうちは効果的にはたらいた。しかし、『バジリスク』を宿した狂人の頑健さは伊達ではなかった。
あろうことかこの狂った老人はヤマイ(病)やノロイを己のうちに取り込んでしまったのだ。当然復讐者達は手も足も出ずに始末された。それに加え、早々は二目と見れぬ異形と化し、異形を見咎める鬱陶しい連中を避けるために包帯で全身を覆う羽目になった。
このノロイやヤマイは、普段は早々の免疫系などに押さえつけられ、彼の体内を循環している。『バジリスク』の実験の邪魔になるからだ。だが、早々が痛めつけられ、抑えが弱くなればノロイやヤマイはたちどころに噴き出す。そして殺す。周囲のあらゆる命を。
早々のノロイが噴き出したということは、またぞろ奴が毒の通じぬ相性最悪な相手と無計画に戦闘し、負傷したということであろう。鬱々は溜息をつきながらストレンジの九龍城に急ぐ……。