とある外道の6人組   作:毛糸ー

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16.自由時間~東条猩々の場合~

――『避雷針』周辺――

 

「どォした!こんなもんか、『ヒーロー』様よォ!」

 

 一方通行(アクセラレータ)は己に怖気づき、後退る、あるいは標的を変えんとする『ヒーロー』共に吠える。こんなもの、『ヒーロー』でもなんでもない。ただのまがい物だ。本当の『ヒーロー』とは、あのツンツン頭の男のように、圧倒的強者に対しても臆すことなく立ち向かう者をいうのだ。

 

 圧倒的な己の力を前に怯える『ヒーロー』共に落胆と憤怒と失望を隠せぬ一方通行(アクセラレータ)。だが、彼の余裕も次の瞬間には消えうせた!

 

「イヤーッ!」「グワーッ……!?」

 

 背後から痛烈なアンブッシュ!……アンブッシュだと!?学園都市の秘匿されし第一位について知っている読者は既にご存じであろうが、一方通行(アクセラレータ)は己の能力により、己にとって有害なベクトルを全て自動で跳ね返すことができる!その彼が、アンブッシュをくらった!?

 

「テメェ……どォいう……ことだ!?」

 

 肺の空気を押し出され、息も絶え絶えの一方通行(アクセラレータ)は、アンブッシュ者に問う!その正体は、上質黒襤褸を纏った奇妙な暗殺者、東条猩々!猩々は何でもないことのように言う。

 

「簡単な話だろう?反発の感覚を捉えたら、それに応じた方向に腕を動かせばよい。それだけの話だ。違うか?」

「……化け物が」

 

 一方通行(アクセラレータ)が言うように、純粋な体技で彼の反射を突破したのは、一方通行(アクセラレータ)の能力開発に携わり、能力の全てを知っていた男、木原数多とその手法を真似した者のみ。だが、目の前の怪物は物言いからしてそれを知らぬ。全てアドリブでやってのけ、成功させたと思しい……!

 

 加えて、木原数多にタコ殴りにされて以降、彼も数多の経験を重ね、その自分だけの現実(パーソナルリアリティ)も変容している。それゆえ、木原数多が開発した対一方通行(アクセラレータ)殺法も完全には通用しなくなっている。

 

 にも拘わらず、目の前のゴロツキはそれをものともしていない。

 

「イヤーッ!」「がぁっ……!?」

 

 一方通行(アクセラレータ)の戦慄を気にもせず、猩々は打撃を打ち込む!今度は肺!そして此度も反射は無効化された!息を吸い込めぬ!酸素が足りぬ!学園都市で開発される超能力とは、脳内で演算を行うことが不可欠である!ゆえに、大量の酸素が必要なのだ!

 

 先程からの執拗な胸攻撃には、酸素を給する肺にダメージを与え、じわじわと酸欠で嬲り殺しにする他、脳への酸素供給を邪魔し、超能力を使わせぬという意味合いもあるのだ!何たる猩々の悪魔的ワザマエか!?

 

「んん……拍子抜けだな。音に聞く超能力者第一位と聞いた故期待もしたが。つまらん。これならあの『ヒーロー』共を解体しておる方が100倍面白かったぞ。イヤーッ!」

「ゴボッ……。テメェ……!!」

 

 猩々にとって、一方通行(アクセラレータ)の焦燥と苦痛はどうでもよいものだ。彼の頭を占めていたのは、存外一方通行(アクセラレータ)が容易い相手であったことへの落胆のみ。そして、さらに猩々は一方通行(アクセラレータ)の逆鱗の上でロンドを踊る!

 

「ちょうどいい。貴様を殺した後は、貴様の保護者も、貴様が後生大事にしておる餓鬼共も、みなあの世へ送ってくれよう。地獄で仲良くするといいさ。はははは!イヤーッ!」

「…………!!」

 

 もはや、一方通行(アクセラレータ)は言葉を紡げぬ。打撃が胸に打ち込まれると同時に、その背中に、白い翼が現れる。一方通行(アクセラレータ)が何かを守るために振るわれる、その能力の秘奥。

 

 通常、この程度で現れることは無いが、猩々の気負わぬ調子の非道発言に示された大切な者達に差し迫った危機と先程からいいように遊ばれていることへの焦燥が白翼を発現させたのだ!ゴロツキ一匹に向けられるに向けるには過剰極まる戦力が、猩々に迫る!だが、猩々は笑う!哄笑する!

 

「ははは!はははは!やれば出来るではないか、サンシタ!はははははははっ!」

KRAAAAAAAAAAAAASH!

 

 猩々と白翼が激突!周囲から『ヒーロー』共は遁走している。頭の片隅でそれを軽蔑しつつ、一方通行(アクセラレータ)は眼前の瓦礫の山を見据える。普通の相手なら、これで死んだはずだ。クズ肉よりも悲惨な有様になっているだろう。

 

 だが、一方通行(アクセラレータ)の背筋に走る不吉な予感に応じるかのごとく、瓦礫山の一角が跳ね除けられる!そこには、半身を血で濡らす猩々が残忍に笑い佇む!その片眼は潰れている!

 

 ……猩々は実際、旧支配者との戦闘経験もある凄腕であり、それ故に一方通行(アクセラレータ)の白翼による一撃をそらすことができた。が、”この世界”の異能に習熟していなかったが故、そらす過程で半身の皮膚が消し飛び、また片目をも失った!

 

 しかし、猩々はそんなことに頓着しない。筋肉は問題なく駆動する。狂笑を上げながら飛び掛かる。一方通行(アクセラレータ)は、白翼を広げ、それを迎え撃った……!




書いてて思ったけど、猩々はある意味、悠々が所属していたファイトクラブ系カルトのミームを体現する者と言えるかもしれない……。
(鍛え上げられた暴力によって究極存在に至る
→凄まじい解体のワザマエを身に着け、旧支配者とも渡り合う)
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