とある外道の6人組   作:毛糸ー

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粛々の発言の法則を変更しました。
(。を0でなく_で、!を1ではなく|で表現するようにしました)


19.自由時間~宇宿粛々の場合~

――第十三学区:暗い裏路地――

 

『狂ったかザン・ギャクよ。あの愚者の群れの中でも、貴様はまともな方だと思っていたのに』

(((五月蠅い11神懸かり_下0110妄想を吐き01001101な_散々0111貴様01よしなに伝え010110)))

 

 何度もテレパスで話しかけてくる朗々を黙らせると、ザン・ギャクは待つ。その目線の先には、()()()()()()()()()薬味久子の姿がある。

 

 然り。『人的資源(アジテートハレーション)』の、『ヒーロー』を自在に撃滅するという目的は表向きのものに過ぎなかった。本命は薬味久子の意識を一種のコロイドに溶かし込んだ流体コンピューターを作り上げることであり、そこからさらに飛び立つことでもあった。

 

 紆余曲折あって流体コンピューターの先に飛び立つことに失敗した薬味久子はしかし、己の放った人喰いゴキブリが発するフェロモンを媒介として意識を移すことに成功していた。ただ、フレメアを危機にさらした彼女を放っておかない存在がいた。

 

(((来01か)))

 

 それが、今ザン・ギャクの視界の隅に入ってきた少女、フロイライン=クロイトゥーネである。フロイライン=クロイトゥーネはその身からトゥールスチャが去った後、紆余曲折あって背が縮み、小娘めいた姿となった。

 

 だが、情報を喰らう能力は健在である。その彼女は今、流体コンピューターとなった薬味久子の情報の()()()を喰らい、”おしおき”しようとしていたのだ。

 

「小娘,1110で止まれ_引011011ば死01んで済0011」

 

 ザン・ギャクは警告する。だが、少女はゆっくりと口を開け、()()()()()()()()()()()()()。当然である。ザン・ギャクは半情報生命体と化している。ゆえに、クロイトゥーネの捕食対象であった。だが、ザン・ギャクは泰然としている。警告を繰り返す。

 

「小娘,1110で止まれ_引011011ば死01んで済0011」

 

 ぱくり。

 

「馬鹿なんですか?……これ以上食べられたくなかったらどいてください」

 

 さらにザン・ギャクの一部を喰らい、首を傾げるクロイトゥーネ。彼女は傷つけられたことがない。ゆえに、暴力的不穏アトモスフィアに疎い。”異世界”だけではなく、”この世界”の歴戦の者達なら気付くことができるであろう、圧倒的な不吉に気付くことができなかった。ゆえに。

 

「貴様01阿呆さが羨001011ぞ_000110110100101101少し勘0010100101011101」

「……?」

 

 かなりノイズの走った(つまりザン・ギャクにとってどうでもいいことを話している)発言を聞き、クロイトゥーネは可愛く首を傾げる。その時である!

 

「!?あびゅ……ごびゅう!?あごご……ごぼあああ!?」

 

 クロイトゥーネが呻き始めたかと思うと、内臓を喰い破るかのごとく喰われたはずのザン・ギャクの一部が現れ、ザン・ギャクの残りに戻っていくではないか!?生まれてからほとんど肉体的痛みを感じたことのないクロイトゥーネの狂乱ぶりを、ザン・ギャクは冷たく見下ろす。

 

 何が起こっているのか?これは、ザン・ギャクが人間電脳化実験の被検体となっていた時、身体が半情報生命体と化すと共に、彼は旧支配者の智慧と邂逅したのだ。

 

 それは「身体を作る要素はそこらにあり、また単純な手順で作りだせる。ならば、この身体が吹き飛ぼうと、喰われようと、消滅しようと、エゴによって世界を統御すれば、自在に身体を作り出せる」という荒唐無稽な代物であった。

 

 しかし、実際にやってのけた者がいるならば、出来ないはずが無い。そう考え、ザン・ギャクはその知識を己のものとしたのだ。先程クロイトゥーネのはらわたを食い破ったのもその応用である。ザン・ギャクはそのすべてを説明することなく、クロイトゥーネの頭を掴むと、無慈悲に壁に投げつけた!

 

 無論、クロイトゥーネの不死性は凄まじい。壁に投げつけても傷一つつかぬ。むしろ、これ幸いに這って進まんとしている。それを見て取ったザン・ギャクは、ツカツカと近寄ると、クロイトゥーネが己の身体を貪るよりも早く、壁に叩き付けた!

 

「イヤーッ|」「ンアーッ!?」

 

 悲鳴をあげるクロイトゥーネ!無理もない。壁に身体を融合させられているのだ!無論、生温い融合ではない!ほとんど壁と一体化し、クロイトゥーネの面影は平面の壁に見える表情のみと化している!その影響で身体は治っているとはいえ、これでは動けない!

 

『私は、私は何ということを……!嗚呼、あああああああーーーーーっ!!』

 

 同時に、薬味久子の悲鳴が耳朶を叩く。あの緑色の炎の主人は随分悪趣味だが、おかげで安い仕事で高い報酬を得た。こんなしょうもない餓鬼一匹戦闘不能にするだけで、100万とは。

 

 ザン・ギャクがトゥールスチャとやらから事前に聞かされたところによると、かの存在の主人は薬味久子が木原唯一からの洗脳から解き放たれ、己の凶行の数々*1を後悔し、絶望し、悲嘆にくれるところを笑い者にしたいらしい。

 

 それも、死が許されぬ状態で、永遠に苦悩するよう仕向けた上で。そして、その上に仕込みをしてあるらしい。今一瞬にして緑の炎が沸き上がると共に、クロイトゥーネの感触が消えたのを感じ取り、ザン・ギャクは淡々とそう思う。

 

 おそらく今の一瞬で、クロイトゥーネにはノロイがかけられたはずだ。依頼者やその主人の性質からして、クロイトゥーネは一生、薬味久子を捉えることも彼女に干渉することも出来なくなったはずだ。

 

 そのすべてをどうでもいいと切り捨てながら、懐に突如生じた万札の重さを感じ取り、ザン・ギャクは夜の学園都市に消えて行った……。

*1
恋査の製造だけではなく、彼女は患者の一部をも暗部の実験のために利用していた。




ホス卿は弄りがいのあるオモチャを、決して逃がさない

次のEXでこの章は終わり!
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