――東京:電車屋根上――
「お前、殺すぞ」
重々は足元の小僧を睨みつけながら、その背を踏みつける。腰のあたりを重点的に痛めつけ、立ち上がれなくした後、重々は通信機を取り出す。これで東京に潜伏した『鋼龍』の面子に連絡を取るのだ。ガガピーと音が鳴った後、チンピラの声が漏れだす。
「俺だ、重々だ。ヒック……!」
『どうしやした?なんか不機嫌みたいすけど』
「悪いが、妙な妊婦を見かけたら即刻始末してくれねぇか。ソイツはグレムリン所属のカスクソ女だ」
『ヒャッハーッ!ブチ殺……!何だテメェコラ!殺すぞ!』
愚かにも雑踏の真ん中で残虐発言を叫んだチンピラが揉み合う音。しばらくして通信が切れる。重々は溜息をつく。恐らく他の連中に伝えたとしても同様に揉め事を起こし、時間を浪費するに違いない。
直前まで奴らが交わしていた会話から察するに、あの『グレムリン』の女、いやその胎児フレイヤは
ここで重要なのはフレイヤとしての自我が消え去るというその一点のみ。自重と言う言葉が脳内に存在しない猩々、早々、浦々当たりなら関係なく殺しにかかっていただろうが、重々はこの殺しのリスクを正しく認識していた。
フレイヤが魔術によって作られた自我であるなら、それが消えた場合にあの女が『グレムリン』の所属であったことを保証するものは無い、と言ってよい。この時、魔術に縁もゆかりもなかった妊婦を殺せばどうなるか?魔術界だけでなく、”表”の連中も『鋼龍』を敵視するだろう。
『鋳鉄工業』が改造したラジオゾンデ要塞で『グレムリン』のアジト『
上条を痛めつけながら重々は考える。フレイヤとやらへの殺意は全てこの餓鬼にぶつけることにしよう。丁度、この小僧は『鋼龍』の計画を妨害しまくっていることだし、血祭にあげれば
KRA-TOOOOOM!
視界の端からゲームコインが迫る!重々はかろうじてブリッジ回避!この
「あんた、その足放しなさいよ」
電気を纏い降り立った御坂美琴を見て、重々は舌打ちを漏らす。ゆっくりと体を戻し、威圧感をかもしだしながら御坂美琴を睨みつける。
「……こんな小僧が生きておった所で俺達の害にしかならんだろ?お前、こいつの情婦か何かか?そんならちゃっちゃと別の男を見つけな。コイツは今から死ぬ予定だからな。……自殺したいってんなら話は別だがなァッ!ヒヒヒヒ、ヒック……!」
御坂は歯軋りする。今すぐにでもコイツをどうにかしたいが、その場合足元にいる上条がどうなるか分からぬ。今もその足は上条の首を踏みつけているのだ。
「クヒヒヒ。何もせんのか?なら、今すぐにでも……!?」
御坂の懊悩を見て取った重々は言葉を続けようとするも、視界の端に人影を認め、止める!その人影こそは『鋼龍』がバゲージシティで仕留め損なった『グレムリン』の一員ベルシ、またの名を木原加群である!『グレムリン』の一員である彼は抵抗勢力の動きを削ぐため東京に潜入していたのだ!
重々が彼を視界にとらえたと同時にベルシはトビゲリ・アンブッシュを見舞う!
「チィッ!バゲージシティで棺桶に入っておれば良かったものを!イヤーッ!」「イヤーッ!」
重々は蹴りに拳で応じる!ベルシは学園都市にて当代最強の木原と謳われた実際油断ならぬ存在。片手間に相手できる魔術師ではない!ゆえに重々はわざとバランスを崩し落下!ベルシを強制的に空中戦闘にもつれ込ませる!
「イヤーッ!」「グワーッ!?」「イヤーッ!」「グワーッ!?」
困惑するベルシの顔面に打撃は二度入った。だが三度目!
「イヤーッ!」「グワーッ……!」「チィッ!イヤーッ!」「グワーッ……!?」「イヤーッ!」「グワーッ!?」「イヤーッ!」「グワーッ!?」「……イヤッ!イヤーッ!」「グワーッ!?」
ベルシは重々の拳を腕を破壊しながら止める!だがその時、重々の腕が翻る!数瞬平衡感覚を完全に失ったベルシの隙を見て右肺、左肺に痛烈な一撃!駄目押しに翻る腕と足!ベルシの平衡感覚が、再び失われる!
「イィィィィィ……イヤァァァァァーーーッ!」
重々は一瞬呼吸困難に陥ったベルシの腕をとり、遠くのビルに投げつける!ガラスのクッションを破壊し転がるベルシ!ベルシの持つ魔術ではこのダメージを軽減できぬ!オフィスが騒然とする中、手をつき起き上がらんとするも、バランスを崩し、不格好に転がる!
重々はその様を現実そのままに想像する暇も無し!吐息によりビルに近づき、強引にウケミめいた体勢で壁に激突!衝突の衝撃で腕と足を置くことができる窪みを作り出し、一息つく重々。懐から酒を取り出し、飲みながらぼやく。
「『グレムリン』の女もあのクソガキも仕留め損なったかよ。さぁて……どう言い訳すっかなあ……」
死んでなかったベルシによるアンブッシュだ!