――位相なき世界――
「……あのクソ女ァ!」
ドロームは寝そべりながら怒鳴る。その周辺は闇しか広がっていない。オティヌスが世界の位相を丸ごとぶっ壊したからだ。楽しい殴り合いを邪魔された彼は怒り心頭である。ドロームはゆっくり立ち上がり、見渡す。
「チッ……アイツと気分よう殴り合い過ぎたか」
しかし、この暗黒の世界はどうしたことだろうか。己がアウレオルスと殴り合っている間にオティヌスが『槍』を完成させ、手慰みに世界でも滅ぼしたのだのだろう、とあたりをつける。
「思っておった通り、つまらん女じゃのう。さァて、どうするか……」
ドロームはそう言いながらゆっくりと立ち上がり、暗黒の世界を見渡す。すると、彼の鋭敏な視力は痴女魔女めいた女の姿と、それに向かい合うツンツン頭の小僧の姿を捕らえた。女の方はオティヌス、男の方は上条当麻だろう。
恐らくオティヌスは上条当麻を
(((破落戸の王……破落戸の王よ)))
そう考えるドロームの脳裏に、謎めいて呼びかける声が!
――ストレンジの九龍城――
「何だ!?何が起こった!?」
「……ひょぉっ!?」
「いきなりこの場に連れてこられたぞ。……どういうつもりだ?」
「クハハハハァッ!奴めしくじったか!」
リモートで話し合っていたはずの蠢動俊三、木原幻生、多々羅道雄、甘粕義彦は突如ストレンジの九龍城内に物理肉体を連れてこられたことに気付き、各々驚愕と怪訝を見せていた。その一同に対し、円卓型スパコンの中央に座していた朗々が、目を開いて彼らに話しかける。
「あの時をかける破落戸共の王*1がしくじった。ゆえに、神たる我が貴殿らをこの場に一時的に肉ごと縛り付けた。光栄に思うがいい」
「……こいつの物言いについては無視しろ。脳味噌に毒電波くらっておかしくなっちまってる」
「相変わらず蒙昧な輩だ」
傲慢な物言いのフォローをした賽に感謝することもなく、再び目を閉じる朗々。気を取り直した幻生がこの異常な現状について質問する。
「何が起きたんだい?」
「恐らくドロームがオティヌスとかいうクソアマをぶち殺し損ねて
「……外はどうなっているのかな?」
「暗黒の世界が広がっている。あの白痴の魔女*2が、完成した玩具で
朗々の警告と共に、真っ暗な外界イメージが『6人組』の者らのニューロンに届く。ここに来て蠢動らは深刻な事態に沈黙する。オティヌス殺しを
「ドロームがオティヌス程度にどうこうされることはあるまい。彼は今、どうしているんだい?電子の
「おい、奴がいくら出鱈目な怪物といっても、外は暗黒の世界だ。縋るのは危険だろう」
陰鬱な『6人組』の面々の中、ドロームの現況を暢気に尋ねるアーランズ。盲信にも見えるそれをたしなめる蠢動であったが、朗々の答えは蠢動の予期しているものとは異なっていた。
「……あの破落戸の王は五体満足だ。奴は今からオティヌスと上条当麻の争いを傍観し、漁夫の利を攫う積もりらしい」
「……奴は一体、何なんだ」
「ひょひょひょひょ……この状況はさっぱり理解できないけど、オティヌスは僕ら木原一族からしても滅茶苦茶な力を振るうんだろう?言っちゃあなんだけど、彼のようなゴロツキが叶うものなのかい?」
「愚かなる探究者よ。その目は飾りか?破落戸の王は野卑な蛮族と雖も、その極めた暴力は本物だ。棒切れ一つなければ小僧一匹確実に殺せなかった小娘とは、その実力に天と地の開きがある」
「コイツは完全なノータリンだ。妄言一つ一つに取り合ってたら身が持たんぞ。ザゾグの奴ですらコイツの妄言は聞き流してた」
幻生は不遜なる神を名乗る狂人に一瞬殺意を抱いたが、賽のあまりにも酷い論評を聞いて冷静さを取り戻した。そして、善後策を問う。
「……まぁ、いいとしよう。それはそうと、これからどうするつもりなんだい?まさかドローム君がオティヌスか当麻君を消すまで、ただ待つなんて退屈な事は言わないでくれよ」
「……そうだな。時間もあるし、少々話したいこともある」
アーランズはその言葉に、意味深げな返答を返す……!