――ストレンジの九龍城:拷問室――
「う、ううん……?」
ワシリーサはゆっくりと薄暗い部屋の中で目を覚ます。何をしていたのだったか……。そうだ、あの屑共、あの碌でもない外道に、サーシャが……!
「がぎぃぃぃぃぃっ!?」
怒りを滾らせようとしたワシリーサを、猛烈な激痛が襲う!
「よう」
そんな彼女の顔を覗き込んだのは、顔面の左半分に入れ墨を入れた男。彼はフーズ・フー。ドロームの指示もないのに拉致されたワシリーサを、せめてロシア成教の秘奥を引き摺り出すために活用しようと連れてこられた、拷問も請け負う『鋼龍』の始末屋だ。
「お前は死ぬまでここで拷問される。良かったな。……ああ、そうだ。お前にお友達もいるんだった」
フーはそういうと、悲鳴をあげ続けるワシリーサの横に目をやる。そこには、フーの拷問により廃人と化したマリアンが拘束具と共にベッドに横たえられ、木原加群は
……あのオティヌスと上条当麻を仕留め損なった痛恨の出来事の後、『鋼龍』の長、ドロームはグレムリン残党の内、ミミル湖に向かわなかった木原加群、マリアン、ミョルニルを拉致した。オティヌスの代わりに見せしめにするために。
ミョルニルはその特異な身体構造を解析したいと希望があったため、特能総研に回されている。今頃は徹底的に解剖され、どのようにドラム缶様の状態で生を保っているのか解析されていよう。ミョルニルほどの
「ま、精々、死んでけ」
ワシリーサの悲鳴。フーは手に持つ肉斬り包丁を振り下ろす……!
――『6人組』定例会――
「ホンマにまぁ……オティヌスのクソアマと上条当麻が生き残るとはのう……」
「信じがたい愚行だ。あの鬼畜米英の、根瘤線虫にも劣る所業……!!」
ドロームの愚痴に応じるように、甘粕少佐が憎悪を滲ませた声を発する。彼の言うように、アメリカ・イギリスが主軸となり、ミミル湖で見せたオティヌスの贖罪を試みんとする姿勢が世界中に放送され、それと共に世界中の人々にオティヌスを許すよう呼びかけたのだ。
あろうことかそれが受け入れられ、オティヌスも『6人組』からすれば温すぎる罪を課せられただけで終わり、上条当麻に至ってはほとんど無罪放免となったのだった。
「君は『グレムリン』大嫌いだっただろ?オティヌス、今からでも殺しに行かないかい?あの上条とやらの家に同居しているんだろう?一挙両得じゃないか」
アーランズの言う通り、オティヌスはいかなる経緯か、人形大となって上条宅に同居している。ゆえに、殺そうと思えば殺せるのだが……。
「止めておけ。奴の家の周りにだけ
蠢動がそんな二人に釘を刺す。それに、ドロームとしても今更オティヌスを重要視してはいない。
「アーランズよ、その心遣いは嬉しいがの、もうオティヌスの
「そうか……」
アーランズが黙ると、恰幅の良い男が口を開く。タタラ会長、多々羅道雄である。ローマ正教とロシア成教を手中に収め、サイエンスガーディアンの領袖たるこの男も、今回の出来事には思うことがある。
「全く……奴らめ。結局押し切られて詭弁の塊を恥ずかしげもなく吐きよって」
「仕方ないだろう。タタラの支持が無ければ奴らはただのカスでしかなかったのだからな」
蠢動の発言通り現在のロシア成教総大主教とローマ正教教皇はタタラの援助によって擁立された傀儡であり、本来巨大宗教の有力派閥の主となる目はない連中といえる。そんな連中が米英の圧力に屈するなという方が無茶と言えた。
「ま、ええやないけ。おんしらの傀儡となったロシア成教の癌、ワシリーサもサーシャ=クロイツェフも
「……そうだな。奴等は我等の傀儡、ニコライ総大主教の意を事あるごとに無視しおったからな。今回も無視しおったので、近々始末してやろうと思っていたが」
それに、最新兵器の実験も出来たしな。道雄は内心一人ごちる。
「しかしまぁ、あのガキ共、随分舐め腐った詭弁を吐きよるわ。『真に己の罪を悔い、その命でもって誰かを助けようとする人間を、なお電気椅子にくくりつけるのが正しいのか』じゃと?オティヌスとやらが相手でも無かったら言わへんようなクソみたいな寝言をよう言えるもんじゃわ」
「くくく……例え連邦刑務所の死刑囚が改心して同じことをしたところで処刑台に送るくせに、なぁ?」
「生き残っちまったものは仕方ないだろうよ。次の企みについて考えを巡らせようぜ」
蠢動の言葉を合図のようにして、『6人組』は次なる企みについて話し始める。取り合えずの議題は……
「今丁度、あのガキが暴走しそうなんでな。何かいいアイデアがないか?」
蠢動が秘密裏に支援している蜜蟻愛愉のことだった。
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……クソがよ!