とある外道の6人組   作:毛糸ー

140 / 203
1.いい計画は綿密な下準備から

――特能総研――

 

「ひょひょひょひょ……あれの調子はどうかな?『博士』」

「幻生殿か。ああ。順調に調整が進んでいるよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 幻生と『博士』の二人の背にあるのは、ゲルめいた質感のタコめいたシルエット。これこそは超能力者の一人、心理掌握(メンタルアウト)の能力を別原理で再現した兵器、 ファイブオーバーアウトサイダー(OS):モデル・メンタルアウト*1である。

 

 彼らはこの代物を蠢動俊三の新たなボディにしようとしているのだ。こいつはデザイナーズゲルと呼ばれる人間の手で再デザインされた脂肪で作られており、機械でありながら身に纏うことができる。デザイナーズゲルに蠢動の遺伝子を混ぜ込めば拒絶反応も起こり得ない。

 

 これこそ、心理掌握(メンタルアウト)の能力を科学技術によって完全に再現した純正ファイブオーバーに勝る部分といえよう。その上、デザイナーズゲルで出来たボディは自在に外観や質感を変えることができる。心理掌握(メンタルアウト)の機能を抜きにしても蠢動の新たなボディに相応しいと言えた。

 

「しかしまぁ、蜜蟻君も不幸だね。ファイブオーバーOSはこうして完成品があるというのに、試作品を掴まされるとは」

「ドローム君は間違いなく『聞かなかったのが悪いんじゃ!』と言うだろうけど、一度動かしたい所ではあるよねぇ。何てったって、この完成品はアーランズ君のよく分からない魔術で()()()()()設計図で作った物なんだからねぇ」

 

 二人が雑談する中、モニターとにらめっこする男が一人。木原乱数である。彼は木原交雑の離脱後、本来の専門である感情刺激物質に加え、細菌の培養も請け負っている。その彼は、現在蜜蟻に()()()()()()()()()()()()()()()さる兵装のデータを収集していた。

 

「どうかな乱数君。生体恋査システムは?」

 

 博士が言う生体恋査システムとは、ボディの構造を自在に組み替え、第七位以外の超能力者の能力を用いることができるサイボーグ、恋査を生体改造によって再現せんとする悪魔的バイオサイバネ研究である!

 

 このシステムが実用化されれば、従来凄まじい維持費がかかる恋査を比較的安価に運用し、加えて学園都市の超能力者の能力を量産し得る……!その試金石にされたのが蜜蟻愛愉である。無論、彼女はこのことを知らぬ。己が手に入れたと錯覚しているファイブオーバーOSに体を馴染ませるための手術程度にしか思っていないだろう。

 

 ドローム達は過去に蜜蟻が上条と親密な関係にあったことを知っている。ゆえに、土壇場で下らぬ仏心を出し、食蜂を見逃す愚を犯す可能性が高いと踏み、()()()()を組み込んだのだ。それこそがこの生体恋査システム。

 

 滞空回線(アンダーライン)で蜜蟻を監視しながら、情を見せればこのシステムを作動する。その際は乱数の専門である感情操作物質をも脳内に放出しながら蜜蟻の情を()()()、食蜂の抹殺を狙う。システムの数値はいずれも許容範囲内。問題はないだろう。

 

「良好っすね。今すぐ発動しろといわれりゃすぐにでも発動できます」

「ひょひょひょ……それならいいんだけどねぇ」

 

――天体水球(セレストアクアリウム)バックヤード:『スウォーム』のアジト――

 

「……これ本当にやるの?レベル5の搾取なんて、面倒なことになる予感しかしないけど、あの男ちゃんと脳味噌がついてるのかしら?」

「諦めろ。ドロームがやる、といったらやるしかないんだよ」

「そうだぜ。俺達のやる事と言ったら、あの小娘の持つ試作品ファイブオーバーOSの()()()()()になるだけだ。前の人的資源(アジテートハレーション)の隠蔽よりはるかに楽だろうが。『鋼龍』から護衛もつくしな」

 

 ここは、『スウォーム』のアジト。弱音を吐くベニゾメをたしなめる山手と佐久。実際、諸々の証拠隠滅に比べれば今回の仕事は楽と言える。

 

「やめてよね。……分かってるわよ、私だって。ただ、嫌な予感がするのよね……」

「所詮は小娘共の相手だ。気楽に行こうぜ」

*1
原色系の色をつけた微細な粒子を超薄型の水槽に混ぜ、磁力によって色を変える磁性制御モニターの技術を用い、周囲の景色を変化させることで「心の方が間違っているのではないか」と思い込ませて精神を操作する兵器。




2024/09/26 ファイブオーバーOS:モデルケース・メンタルアウトの説明を追加
2024/09/29 護衛がいる旨を追加。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。