最近スランプに陥りかけてる感触がありましたが、これのおかげで脱せそうです。
――
「シャギャァーッ!キシャァーッ!」
「くっ……!」
木原脳幹は天井に張り付いた奇怪な蟲を睨みつける。隠しエレベーターに足を踏み入れた途端、頭上から棘だらけの蟲脚が襲い掛かり、彼をエレベーターのボタンから遠ざけているのだ。四本の脚が間断なくあらゆる方向から襲い掛かり、隙を縫って進むことを許さない。
脚に噛みつくのも駄目だ。噛みついたら最後、あの蟲の脚についた危険な棘が食い込み、口が開けなくなろう。腕での攻撃も同じく封じられている。脚に絡み取られたが最後、致命的な一撃が迫るだろう。
(全く……コイツは前座だというのに。使うしかないか、アレを)
ひそかに、脳幹は切り札を切る決意をする。本来は
KABOOM!KABOOM!KABOOOOOOM!
「シャギャァーッ!?」CRAAAASH!
突如、エレベーターの側面に砲撃めいた攻撃が着弾!エレベーターの壁が穴ぼこチーズめいた惨状と化す!蟲は慌ててエレベーターの天井をぶち抜き、逃げ出す!脳幹は悠々と背後に現れた巨大な兵器群を装着する!背後のアタッチメント・アームが、恭しく葉巻を口元に運ぶ。
「これは対魔術式駆動鎧(アンチアートアタッチメント=A.A.A.)。……蟲に伝えるのは空虚極まりないが、フロイライン=クロイトゥーネや『ドラゴン』*1のような理解できない領域の安全弁であり、撃滅を目的としているのが私なのだ」
ギチギチ、キチキチと顎を打ち鳴らす『蟲』。もはや先程のように脚を伸ばしてくることは無い。脳幹は一気に畳みかける!
ZAAAP!CRAAAASH!KRATTTTT!KRATTTT!KRA-TOOOM!KRA-TOOOOM!
「ギュアアアアア!?」
レーザーが閃き、パイルバンカーは唸り、機銃が掃射され、嵐めいてミサイルが乱れ飛ぶ。キチキチとヒステリックに顎を鳴らしながら蟲は逃げ回る。しかし、エレベーターの昇降スペースは狭い。奥に逃げられぬよう弾幕も張られている。
(捉えた!)
「SHHHHHHH……!」
KABOOOOOOM!
歯軋りめいて顎をこすり合わせ、逃げ回る『蟲』を、ロックオンミサイルが捉える!そして、爆発。……だが、
……だというのに、現実には緑の爆炎が広がっている。目を細める脳幹。いくつかの可能性を脳内で考える。時と共に爆炎は……晴れることがない。それどころか、こちらに猛スピードで落ちてくる!
「CHULULULULULU!CHULULULU!」
KABOOOOOOM!
緑の炎が、眼下の肉を貪り喰わんとするかのように落下!数瞬後、エレベーターの床が舐め尽くされるかのように炎に覆われる!間一髪で脱出していた脳幹は、そこで異常としか言えぬ光景を目にする!
エレベーターの床に衝突し、吹き上がった炎に覆われた昇降機はしかし、一切の燃焼反応を見せていない。ただボロボロに劣化し、崩れ落ち、塵となって周囲を舞っている。こは、いかなることか?
脳幹は知らないことだが、この『蟲』は、プラズマ生命体の旧支配者トゥールスチャが作り上げたフロイライン・クロイトゥーネのコピー体に、己の力を注ぎ込んで生まれた存在だ。ゆえに、半プラズマ生命体であり、物理肉体を持ちながらいつでもプラズマボディとなることができる。
それに加えて、旧支配者トゥールスチャの権能の一端を扱うことができる。プラズマと化した彼の身体は、退廃の力を帯びており、炎に巻かれたものを急速に劣化させる。物理存在であろうと、魔術存在であろうと。
しゅるるるるる、ぎゅるるるる。獣染みた吠え声を響かせる緑の炎。炎と化していても分かる、燃えるような三眼が脳幹を睨みつけている。脳幹は、この異様な炎は『蟲』が変化した姿だと結論付けた。変身なのか、これが本来の姿なのかは分からぬが。
風に揺られるかのように、あるいは嘲弄の哄笑を浮かべながら肩を揺らすかのように炎が揺れる。それと同時に、動物の群れの
(銃やパイルバンカー、ミサイルはあの奇妙な炎に阻まれて届かないだろうな。レーザーやマイクロ波も効果は薄いか。……
緑の炎が迫る。すでに『蟲』は勝利を確信し、あざ笑うかのようにギチギチという音を響かせている。だが、すぐにその音の意味合いと調子が変わる。いくら炎を伸ばしても届かない。それどころか……後退している、だと?何故だ!
原因が分かると、ぎゅああああっと声をあげる蟲。ファンだ!巨大な扇風機染みたファンの風が、プラズマ状の『蟲』が目の前に進むのを妨げているのだ!踏ん張りは、効かぬ。炎の身体で、効くわけがない。
ここにきて状況判断し、『蟲』は即座に己の体をキメラ蟲肉体へと変じる。何とか木原脳幹に接近し、その肉を啜るために!
KABOOOOOM!ZZZZZAPPPPP!ZZZZZAPPPPPP!
脳幹はこれを好機と見て、A.A.A.による攻撃を決行。『蟲』がプラズマ状に戻った時のために、ファンを回し続けるのも忘れない。これには『蟲』も、悪態をつくようにぎしゅあああっ、しゃぎゃぁっと鳴くことしか出来ない。
喚き散らかしながらも軽快にA.A.A.の兵器群を避けていく『蟲』。弾幕を張り続け、『蟲』を己に近づかせないようにする脳幹。一見、『蟲』は脳幹に近づけず、脳幹のA.A.A.の攻撃は『蟲』に見切られ避けられている均衡状態であるようにも見える。
……だが、『蟲』の身体は異様な緑の燐光を発していた。
『蟲』の脚の棘はライオンゴロシがモデルです。