とある外道の6人組   作:毛糸ー

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9.形態変化はロマン

――天体水球(セレストアクアリウム)――

 

 脳幹はアレイスターの部下として、幾重もの修羅場をくぐって来た。ゆえに、『蟲』の身体を覆い始めた緑の燐光に気付かぬはずも無かった。だが、捉えられない。『蟲』のゴキブリ染みた高速軌道が、A.A.A.のターゲッティング速度を上回っているのだ。

 

 不穏な燐光が『蟲』の身体を覆っていくにつれ、『蟲』の怪蟲としての身体は見えづらくなっていく。燃える三眼が燐光に隠され邪悪なほくそ笑み染みて歪む。

 

 脳幹がその一撃に気付いたのは偶然だった。『蟲』の中脚が、不自然に燐光にまぎれて見えなくなっている。脳幹は第六感のようなものが働き、その場から動く。すると、『蟲』の棘だらけの脚が不自然なほどに伸びる!

 

CRAAAAAASH!「CHULULULULU!」

 

 蜂と人のキメラめいた『蟲』の像が緑の炎の向こうで揺らめく。蜂めいた頭の燃える三眼は、邪悪な嘲弄の表情を形作っている。脳幹は悟った。あの『蟲』は、炎の状態と怪蟲の状態を両立するに至ったのだと。

 

 まずい。非常に、まずい。『蟲』が炎の姿である時には巨大送風機が効いた。怪蟲の姿である時には弾幕が有効な攻撃だった。だが、炎と蟲の姿を両立されてしまっては、送風機も弾幕も効果は薄くなる。現に奴は、脳幹を防御するように張られた弾幕を意にも介さないように突っ切ってきている……!

 

「SHHHHHHH!」

 

 蟲はもはや、勝利を悟ったかのように鳴き声をあげる。異様に細まった燃える三眼は、すでに眼前の獲物の肉を裂き散らかす愉悦に歪み、嘲笑う目玉めいて弧を描いている。そして、ゴキブリめいて高速で飛び掛かった!

 

CRAAAAASH!KBAM!

 

 ……しかし、その一撃はA.A.A.をかするに終わる。脳幹が避けたのだ。ぎゅああああっ!と怒りとも驚愕ともつかぬ叫びをあげる『蟲』。退廃の火が燃え広がる前に、A.A.A.の一部をパージする脳幹。一方『蟲』は怒りと共に再突進!

 

CRAAAAASH!KBAM!

 

 脳幹は突進を避ける!蟲』がぎゅああああっ!と咆哮する!A.A.A.がパージされる!『蟲』は再突進する!

 

CRAAAAASH!KBAM!

 

 脳幹は回避!『蟲』が咆哮する!A.A.A.がパージされる!『蟲』は再突進!

 

CRAAAAASH!KBAM!

 

 脳幹回避!『蟲』咆哮!A.A.A.パージ!『蟲』再突進!

 

CRAAAAASH!KBAM!

 

 回避!咆哮!パージ!再突進!

 

~~~~

 

 暫し時間がたった。脳幹の背に雄々しく連なっていたA.A.A.の兵器群は今や携行兵器めいて貧相な有様と化し、脳幹自身も疲弊し、もう一、二度の回避が精一杯だろう。だが、『蟲』はいまだ意気軒昂。途中からは蝶とも蜂とも甲虫ともつかぬ羽を広げ、荒ぶっている……!

 

(奴の体力は底なしか?……いずれにせよ、引くしかないか。すまない、アレイスター)

 

 脳幹は踵を返そうとする。いったん退却して態勢を立て直さねば、この『蟲』を討伐すること叶わぬだろう。しかし、『蟲』がせっかくここまで()()()()獲物を逃すはずも無い。『蟲』はぐじゅるるるっ、と口から異様な汁を溢れ出させながら、飛び上がって回り込む!

 

「SHHHHHHH!」

 

 そして目にも止まらぬ速さで棘だらけの前脚を振り下ろさんとする!このままでは脳幹の肉は裂かれ、骨は粉々となろう!だが、脳幹も手練れ!斯様な見え見えの一撃など、とうに予測している!

 

CRAAAAAASH!

「ARRRRRRRRRRRG!?」

 

 A.A.A.の残骸射出!『蟲』は突如顔面に飛んできた残骸に面食らう!その隙に脳幹は端を抜ける!

 

「ARRRRRRRRRRRG!!」

 

 それを追わんとする『蟲』!だが、その前脚の付け根に手が置かれる。

 

「ARRRRG!」

 

 それを振り払い、背後を振り返る『蟲』。その目線の先にいたのは。

 

「全く、ドロームめ。自分で行けばいいだろうに。我々を動かすとは」

「まあ、そういうなヴェイズ。奴は奴で()()備えているのさ」

 

 人型めいた不定形の影、ヴェイズ。そしてヴェイズのボスにして『目覚め待つ宵闇』の主、アーランズ=ダークストリート。彼らは戦の高揚で昂る『蟲』を止め、『スウォーム』の元に連れていくためにここにいる。

 

――天体水球(セレストアクアリウム)外部――

 

 逃げてきた脳幹は、天体水球(セレストアクアリウム)の外に転がり出ていた。だが、変だ。己も『蟲』も、天体水球(セレストアクアリウム)をぶっ壊す勢いで暴れたというのに、人っ子一人いない。己を待っているはずの唯一・交雑すらも、だ。

 

 周囲を見渡していると、カツカツという足音が聞こえてくる。注意深く闇を睨む脳幹の前に現れたのは……。

 

「ひょひょひょひょ。その様子だと、あれに手ひどくやられたようだねぇ、脳幹君」

「貴様は……木原幻生!?何故ここに!?」

「それは、何で生身の肉体があるのか、という意味かい?それとも、ここに何しに来た、という意味かい?ひょひょひょ……」




思ったより長引いた……そして短めとはいえやっとヴェイズ・アーランズの戦闘シーンが出せそうです!
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