とある外道の6人組   作:毛糸ー

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EX.契約

――『6人組』定例会――

 

「いやー!良かった良かった!これで蠢動は枕を高くして眠れるのう!」

 

 蠢動が糸を引いた蜜蟻愛愉による食蜂操祈襲撃事件が失敗し、木原脳幹が天体水球(セレストアクアリウム)に襲来したすぐ後の定例会では、ドロームが高笑いしていた。これで、蠢動俊三が狙われることは無くなったのだから。だが、他の者らは難しい表情をしている。

 

 口火を切ったのは節足動物めいた足を生やしたシャチの姿をとる蠢動俊三。

 

「……確かにアレイスターの犬っころやその他奴の手先に狙われなくなったのはありがたい。だが、その代償にあの上条当麻のクソガキを救うのは釣り合っていないだろうが」

「その通り。上条当麻はウロチョロと我等の書いた絵図の上を這いまわり、時にそれを食い荒らしかねない害虫だ。それを一度切りとはいえ助ける契約をするとは……!」

 

 いつもは冷静沈着な多々羅も困惑の色を隠せぬ。上条当麻とは、『6人組』にとって邪魔者でしかない。己の計画を邪魔された蠢動俊三・木原幻生はそれをよく知っている。それはアニェーゼ部隊虐殺・女王艦隊略奪などを邪魔されたドロームも同じはずだ。

 

 ゆえにドロームがむざむざと上条当麻抹殺の機会を奪いかねない契約をアレイスターと交わした此度の一件は、腑に落ちないものがある。普段は狂気を剥き出しにする戦争狂も、今回ばかりは苦言を呈する。

 

「……ドロームよ。弱敵、あるいは無能ならまだしも、上条当麻とは貴様や我々にとって厄介な敵だ。厄介な敵を殺せる機会に殺しておかぬとは何事だ?まさか貴様、手を抜いているのか?」

「僕は上条君は興味深い研究対象だと思ってるから別にいいんだけどねぇ。上条君は学園都市で悪だくみをするには確実に障害になるし、君らとしては殺せる時に殺しておいた方がいいと思うけどねぇ」

 

 甘粕、木原幻生に続き、アーランズも口を開く。いつもの不気味な半笑いは影を潜め、険しい表情。

 

「ドローム。お前は強い。圧倒的に強い。だが、今回のこれは流石に驕りすぎだぞ」

 

 『6人組』メンバーからの批難をくらっても、ドロームは平気の平左でいる。ドロームも、無策で上条当麻の命の危機を一度救うという契約を交わしたわけではない。

 

「まぁ、待たんかい。上条当麻は近々、命の危機に陥る。()()()が目覚めるからの。()()()()()()()()()()()()、な。おんしらも前に伝えられとるかもしれへんけど、()()()は学園都市が嫌いなんじゃ。だからの、()()()が目覚めたら学園都市は丸ごと滅ぶ。言うとくけどな、ワシらを区別して滅ぼしてくれる、なんぞ思わへん方がええぞ。()()()はクソ真面目な癖してキレると何するか分からへんからの」

 

 ドロームの言葉を聞き、顔つきが変わる蠢動、アーランズそして幻生。()が目覚めた際に巻き添えで()『6人組』の半分、つまり蠢動、アーランズ、幻生が()()の巻き添えになって死にかねないのは、確かに不味い。だがそれが、上条当麻を助けるのにどうつながるのか?

 

「……貴様の言葉で止まらんのか?」

「まさか。……それにのう、区別して滅ぼしたとしても問題が一つある。アレイスターの事じゃ」

 

 アレイスター?非道と暴力を繰り返すドロームや、己への放言と学園都市の技術漏洩を繰り返していたザゾグに手をこまねいていた奴に何が出来る?そう考える『6人組』。だが、学園都市統括理事長は恐るべき体質を隠し持っている。

 

「アレイスターのクソッタレはな、10億8309万2867通りの可能性を持っとんのや。つまり”もしもアレイスターがこうだったら……”ちゅうのの集合ってことじゃな。で、あの屑はそいつを分身として持っとる。……朗々やら粛々に聞いたらのォ、アレイスターがくたばった時にはその分身がぶちまけられるそうや。約10億ものアレイスターが、な」

「10億……!?」

「……質量保存の法則はどうなっているのかな?」

「敵性分子が一気に10億に増えかねんリスクは分かるが……」

「ほう!一気に11億弱の兵力が現れるのか!大戦争にはちょうどいい数ではないか!」

「学園都市が滅ぶならその10億も滅ぶのではないのか?」

 

 ドロームは驚くべき発言に驚愕した『6人組』の面々の顔を見渡し、言葉を続ける。おもむろにドロームは指を3本立てる。

 

「分身がぶちまけられる事で起きうる問題は主に3つ。1つ。朗々が言うには、アレイスターの分身共は世界中に広がっとるそうじゃ。そのせいで多々羅のバゲージシティやら、甘粕の潜水艦やらが襲われそうっちゅうのがある。おんしらも、アレイスター複数人なんぞ、相手にしたくないじゃろ?」

「強敵に楯突き滅ぶのもまた一興!」

「……貴様が来るまでその存在すら分からなかった男だ。そんなものが複数来て、確実に退治できる、とは明言できんな」

 

 ドロームは右手の指を一本曲げると、二本目を曲げ始める。

 

「2つ。10億人のアレイスターは、何も今統括理事会会長をやっとるアレイスターの分身っちゅう訳やない。いわば奴のifや。そん中には、ワシを凌駕するもんもおるかもしれん。これは本当に万が一、の事じゃがな」

「君が死ねばこの集団もオシマイだろうしねぇ。慎重になる気持ちも分からないでもないよ」

 

 ドロームは、立っている残り一本の指もゆっくりと曲げ始める。

 

「3つ。10億の分身があるっちゅうのに、アレイスターが何かの仕掛けをしとらんはずがない。そうじゃろ、アーランズ?」

「……そうだな。アレイスター=クロウリーは近代西洋魔術の雛形を作ったと言われる黄金夜明のメンバーだ。何か仕掛けがあるだろう」

「ワシがパッと考え付く所じゃ、蠱毒か?……その程度のちゃちな仕掛けならええが、めちゃくちゃ複雑で面倒、かつワシらにとって不都合な仕掛けが発動せんとも限らん。準備もクソもなくアレイスターがくたばるのはリスクがデカすぎるんじゃな」

 

 説明を終え、得意げな顔のドローム。しかしまだ、納得していない『6人組』メンバーがいる。

 

「……だとしても、上条の命を一度だけとはいえ助けるなどという内容にしなくても良かっただろうに」

「あれはのう、アレイスターに蠢動見逃せちゅうたら、やれ貴様以外の反乱分子を許してはおけぬ、だの『プラン』を乱しかねない不確定要素をこれ以上増やすわけにはいかないだのとグダグダと屁理屈を垂れよったのよ。ザゾグが倒れて強気になったのか知らんが、脅しも通用せんかったから、手っ取り早く黙らせるために上条の命を一度だけ助けることを選んだのよ。ま、『契約』を持ちだしゃ()()()も引く。そこは安心せい」

 

 ドロームの発言を聞き、『6人組』はひとまず矛を収めた。……()()()はもうすぐそこまで迫っている。




()()()(=彼)が誰だか分かったでしょうか?まぁ、散々匂わせてるので分かるとは思いますが。
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