――ダイヤノイド最下層――
「……私の力と同種の力を持つ輩が来ている。私の目的はそやつを解析した上で
「……は?俺の?」
思いがけない指名を受け、自分を指さしながら硬直してしまった乱数に対し、ザゾグは己の企みをとうとうと語り始める。
「この学園都市に、一匹の魔術師が侵入している。サンジェルマンという名で、私と同じく炭素を操るらしい」
「は?また魔術師っすか?セキュリティはどうなってんだよ……いやちょっと待ってください。炭素を操るってあんたと一緒の力じゃないですか!?」
木原乱数の驚愕に頷くザゾグ。実際、彼は己と同じ力を持つ存在が”この世界”にいるなどと想像もしていなかった。”
「……その通り。正直私も驚いている。ゆえに、奴の力を解析し、可能ならば乗っ取りをかけたり、あるいは我々自身の研究に応用したりしようと考えている」
「それで?俺に何をさせようって言うんです?」
「貴様のやる事は簡単だ。もし上条当麻とその一味がやってきたら、奴らに地獄を見せてやれ」
「はぁ!?」
乱数はザゾグの言葉に目を見開く。木原乱数とて暗部に巣食う科学者の一人である。ゆえに、上条当麻の雷名はよく知っていた。曰く、「悲劇」が生じるとどこからともなく首を突っ込み、その右拳で「悲劇」、あるいは暗部の企みを粉々に粉砕する男。さらに、どれだけの困難があろうと、「悲劇」を拭い去って見せるという。
木原乱数は己の
「……いいか、木原乱数。貴様の操る『科学』は近代物理学、化学、脳科学のみで説明できるものだ。それは分かるな」
「……それがどうしたんだよ。そのせいで魔術師には通用するか分からねぇし、あんたやドロームみたいな化物にははじめっから無力化されちまう」
不貞腐れた乱数を苛立たし気に見るザゾグ。彼は猶も言葉を続ける。出来の悪い生徒に辛抱強く教え続ける教授の如く。
「それこそ重要なのだ。木原乱数。奴の右腕は魔術やそれに類するものを消せる。だが、
「?」
「奴は、貴様のばらまく物質の影響から逃れることは出来ない。ひとたび奴の脳が貴様のばらまく物質に影響されれば、奴にそれを止める術はない」
ザゾグは口角を残忍に吊り上げ、言葉を続ける。もはや彼の脳裏には、乱数の持つ化学物質で錯乱し、殺し合いに陥る上条らの姿がありありと描かれていた。
「お前こそ、あのいけ好かない小僧へのジョーカーなのだ、木原乱数!何と素晴らしい事ではないか!奴は、目にも入っていなかった小物によって、そのケチな悪行のツケを払う事になるのだ!ハハハハ、ハハハハハハハアァーーーーッ!!」
今この場に感情操作物質のサンプルはないとか、上条当麻の行為を悪行と称するのはあまりに図々しすぎるとか、様々に言いたいことはあったが、ともかく木原乱数は上条当麻らを返り討ちにする覚悟を固めた。……直後に感情操作物質のサンプルをザゾグに作ってもらいはしたが。
昔どこかの掲示板か何かで見たんですが、「木原乱数が扱う技術は純粋な科学なので、上条当麻にも通用する。その性質上上条当麻の性格・行動を操作し得る。木原乱数の存在はジョーカーになり得る」ってのはなかなか衝撃的で目からうろこが落ちましたね……。