――ダイヤノイド最深部――
「何と不甲斐ない。それでも炭素を操る者か。サンジェルマン」
乱数に炭素性実験器具を提供した後アグラ・メディテーション(瞑想)姿勢をとっていたザゾグが、不意に虚空へ向かって罵倒した。そこへ、感情操作物質を調合した乱数があきれ顔と共に現れる。
「どうしたんすか、出し抜けに。アレイスターでもブチ殺してやりたくなりました?」
「見くびるなよ木原乱数!私はいつでもアレイスターの屑を殺したいと思っている!……いやなに、サンジェルマンは私と同じ炭素を操る力を持つというのに、随分不甲斐ないものだと思ってな」
突如ヒートアップしたと思ったら急に落ち着くという情緒不安定な様子に肩をすくめながら、ザゾグの言葉を待つ木原乱数。
「炭素を掌握するとは、生命を掌握する事。そしてまた、石油化学の過半を理解する事でもある。それを活用すれば!いくらでも!あの実に実に忌々しい上条当麻やしょうもない不確定要素浜面仕上共を殺すことも!小僧一匹自在に操りいくらでも容易にたばかることができただろうに!!」
「……サンジェルマンの方は何してるんです?」
「……奴はケチな槍一辺倒で戦っている。後でデータを送ってやるが、本当にケチな小細工だ」
「じゃあ、あんたにとってはあいつを見張ってても無意味ってことですかい?」
乱数の問いにザゾグはニヤリと笑う。そして、おもむろに複数の光点が動き回るダイヤノイド模型を生み出した。赤い光点は優に100は超えているだろうか。
「……何です、これ?」
「その赤い点は全てサンジェルマンだ」
「……はぁ!?い、いくら魔術師が訳の分からん力を操るとはいえ、こんな……分裂したりできるもんなんすか!?」
乱数が驚くのももっともだ。いくら”今は失われた体系”をものにした『目覚め待つ宵闇』の面々でも、このように異なる場所に複数の
「それを知るためにこれからコイツ等の一部に乗っ取りをかけるのだ。幾多ものサンジェルマンがこの場に存在する原理を知れば、画期的な連絡網を作り上げることも出来よう」
そういうとザゾグは再びアグラ・メディテーション姿勢に戻った。
この時、何体かのサンジェルマンが同時に痙攣した。それは、麦野沈理と対峙しているサンジェルマンであったり、名も知れぬ少年を誑かさんとしているサンジェルマンであったりした。
痙攣は一瞬のことで、サンジェルマンという並列意思に発生したただのバグめいた何かかと思われた。だが、それはサンジェルマンという一種の聖域に土足で踏み入る探究者の恐るべき魔の手によるものであった……!
会話シーンばかりだと筆が遅くなることにやっと気づいたこの頃。