――ダイヤノイド中層――
「……ん?」
サンジェルマン達を順調に排除していた元『アイテム』達は、眉をひそめた。ある一匹のサンジェルマンが、こちらを見ることもなく天井を見つめている。
「……麦野」
絹旗最愛が一行のリーダー、麦野沈理に目配せする。あのサンジェルマンは明らかなイレギュラー。ある意味で直接的な脅威をもたらす他のサンジェルマンよりも恐ろしい存在。何をするか分からぬ。ゆえに、目の前のサンジェルマン達を排除したら、次は奴だ。
「麦野、そんなに険しい顔をしててもしょうがないって!サンジェルマンとか言う奴、こんなにいるんだから、ちょっと様子がおかしい奴がいてもいいって訳よ!」
逆に、少し抜けた部分があるフレンダは、不気味に天井を眺め続けるサンジェルマンを気にする様子もない。
……そして、麦野達に襲いかかってくるサンジェルマンを一通り撃退したところだろうか。
バキリ、と件のサンジェルマンの首がへし折れ、顔面が逆向きになった状態で麦野達に襲い掛かる!
「ひぃぃぃ!?く、首が曲がってるのに全力疾走してきてる!?結局、わけがわからなすぎるって訳よ!?」
「来ると思ったぜ」
「ええ」
腰を抜かすフレンダに対し、麦野と絹旗はあくまで冷静。四つん這いになって迫りくる異常サンジェルマンに対し近接戦を挑む!麦野は両手両足がサイボーグであり、絹旗は全身を
……だが、異常サンジェルマンは麦野と絹旗の脚を掴み、邪悪に嗤った。目を見開く両者をよそに、異常サンジェルマンは両腕を握り込まんとす!だが、二人は暗部生活が長い。この程度の修羅場は幾度もくぐっている。ゆえに、冷静に異常サンジェルマンの頭部に拳を振り下ろす!
しかし、異常サンジェルマンは頭蓋骨を異常膨張させ、リアクティブアーマーめいて彼女らの拳の威力を殺す!そしてもう一度握り込む!
KBAM!KBAM!
「ええい変態!さっさと麦野達の脚から手を放せって訳よ!私ですら触ってないのに!」
「フレンダッ!相手は一般人ですよ!」
しかし、フレンダが投げる爆薬によりインタラプト!手の力が緩んだ一瞬の隙で麦野と絹旗は抜け出す!だが、その立役者となったフレンダを絹旗は罵倒!『サンジェルマン』の身体はあくまで一般人。傷つければ『ヒーロー』の報復を受けかねない。しかしフレンダも言われっぱなしにはならぬ。
「麦野達の蹴りを受け止めて、頭があんな風に膨れ上がる一般人なんて一般人とは言えないって訳よ!?殺らなきゃ、殺られるって訳!」
絹旗はフレンダの叫びに反論しようとするが、ボキリという異音に振り向く。そこには、頭部の位置が元に戻った異常サンジェルマンが耳まで裂けた口で嗤っていた。
「その小娘は正しい。死にたくなければ、今すぐ逃げることだ」
そういうと異常サンジェルマンの全身の筋肉が皮膚を突き破るほどに膨張、まさしく筋肉ダルマと言うべき様となる!そして、爆発。
「がはっ!?がああああっ!?」
一瞬のち、絹旗が吹き飛ぶ!彼女が纏う
「絹旗!?」「テメェ!」
「無駄だ」
フレンダと麦野の叫びを置いて異常サンジェルマンは絹旗の目の前に瞬間移動めいて現れる!そして、絹旗の両手を掴む。異常サンジェルマン、そしてそれを操るザゾグは、絹旗の柔肌を守る
「先程糖蜜で出来た壁のように消し飛ばされたというのに、健気な事だ。……だが無意味だ」
「ぎゃああぁぁぁっ!?」
「絹旗から手を放せって訳よ!?」
「お前は、殺す」
ZZZZZZZAPPPPPPPP!KABOOOOOOM!
悲鳴をあげる絹旗を救い出そうと放たれる、麦野の
「無駄だ。貴様らのやり口は
淡々と勝ち誇る異常サンジェルマンであったが、手元から絹旗が押す力を感じる。押し返そうとするも、力が、入らぬ!何故だ!異常サンジェルマンを操るザゾグは考え、答えを出す。エネルギーが枯渇している!
「あンな無茶が!ずっと通る訳ねェと思ッてましたよッ!!」
「エネルギーを、使い過ぎたか……!」
ザゾグは普段、一種の細菌による代謝機構を模した二酸化炭素と水から、生体のエネルギー源であるグルコースを得る”回路”を回している。その気分で暴れていたら一気にエネルギーが不足!急ピッチで回しているが、莫大な量の筋肉を動かすにはまだ不十分!
「あンた、さッきは散々コケにしてくれやがりましたねェ!ブッ潰れろォ!!」
「グッ……!ヌッ……!」
やむなくザゾグはオートファジーによって過剰膨張筋肉をエネルギー源に変える!事態の好転を図るために絹旗を投げ飛ばす!
「イヤーッ!」
「ぐッ!?」
だが、その隙を見逃す麦野ではない!
「そこだ!」ZZZZZZZZZZZAPPPPPPPPPP!
投げ飛ばした一瞬の隙を突かれ、異常サンジェルマンの頭部は蒸発!異常サンジェルマンの首から下はしばし操り人形めいて直立していたが、ゆっくり倒れた。元『アイテム』一行は一息ついた。
――ダイヤノイド最下層・高架――
「チッ……。いつもの感覚でいったらしくじったか」
異常サンジェルマンの頭が吹っ飛んだと同時に、ザゾグはアグラを解き、溜息をついた。ちょうどその時、乱数がおっかなびっくりザゾグに近づく。
「上手くいきました?」
「……サンジェルマンの魔術的ネットワークの仕組みは理解した。タタラの連中の手土産にはなるだろう。……今からデータとやり方をくれてやる。このバクテリアを作り出しておけ」
「……何しようって言うんです?」
ザゾグがおもむろに不穏な炭素状フロッピーを差し出す。乱数はいぶかしげな表情。感情操作成分だけで上条当麻への対策は十分ではないのか?ザゾグは不穏な真顔のまま口を開く。
「……この自我抹消型サンジェルマンウイルスを使って、上条当麻の下らん『ヒーロー性』とやらを消し去ってやるのだよ」
ヒロアカの血狂いマスキュラー、私大好きなんですよね。