――とある高校:ゴミ捨て場――
「殺す!!」
「…………!?チッ!」
襲い掛かったザン・コクに、唯一は驚きながらも即座に対応しようとする。更なる打撃を加え、ザン・コクを今度こそ殺すために。しかし、その頬を吹き矢が掠める。そして続けざまに手裏剣が迫る!唯一がこれらの飛び道具に気を割かれたのはわずかな時間であった。しかし、それはザン・コクの殴打には十分すぎる時間だった。
「ブッ潰れろォ!!」
「ゴロツキが……!」
KRAAAAAASH!
凄まじい打撃音が響き、唯一の身体が不格好なフィギュアスケーターめいて回転する。だがしかし、唯一はぴんぴんしている。何故か?唯一は紙切れ一つで衝撃を受け流す技法の持ち主。白衣がズタズタになるのと引き換えに、肉クズになることを回避したのだ。
だが、次はもうない。リクルートスーツ姿をあらわにした唯一ににじり寄るザン・コク。その遠景では、交雑と上里勢力がいまだ交戦しているのが見える。ザン・ニンはもうすでにどこかに潜み、
唯一がピンチに瀕している時、上条当麻は完全に絶体絶命の状況にいた。もうすでに全身は右腕を残してズタズタに切り裂かれ、ザン・ギャクに喉を掴まれ持ち上げられている。ザン・ギャクは油断も慢心もなく、上条のやりたいこと全て、逆転の方策全てを封殺し、着実に上条を傷つけていった。これはその
しかしながら、ザン・ギャクは上条当麻に対していまだ警戒心を持っている。それは、上条当麻の単純な実力ではない。ザン・ギャクは、上条当麻より遥かに暴力に熟達している。それでも、ザン・ギャクは上条当麻を警戒している。なぜか?
((この小
ザン・ギャクが懸念するのは、上条当麻の
しかも、上条当麻自身の能力は特筆高いというわけでもない。暴力については言わずもがなだ。それでも今日まで生き延びてきた。ザン・ギャクはそこに『何か』があると考えている。ゆえに、ザン・ギャクは上条当麻のカイシャク(注:介錯のこと)に細心の注意を払う。
古来より、カイシャクの際にしくじり、標的に逃げられる、あるいは返り討ちにあって死ぬ者の例は枚挙にいとまがない。ましてや、カイシャクしようという相手が悪運たっぷりの小僧であれば、なおさらである。首を狩る瞬間に手がすっぽ抜ける、ぐらいの事が起きてもおかしくない。
ザン・ギャクは上条当麻の首をすぐに折れる体勢を整え、グラディウスの切っ先をその喉に突きつける。一瞬後、上条当麻の首を刎ね、もってこの世から追放するために。
だが、ザン・ギャクは上条当麻の不自然なまでの生還劇に注目し、警戒を募らせるあまり、ドツボに嵌っていた。殺し合いにおいて油断は禁物だが、あまりにも過剰な警戒もまた、刃を鈍らせる。手をこまねくうちに事態が変化し、イニシアティブを取り逃すはめになるからだ。丁度今のように。
KRA-TOOOOOOM!
突如響いた轟音に、上里勢力の少女達はおろか、木原唯一、そしてゴロツキ共も音の元を探らんとす。そして、目に写るは、宙を舞うザン・ギャクの首。そして
御坂美琴が、この騒乱に、足を踏み入れた。
上条って不運だ不運だって言いますけど、本当に不運なだけだったら旧約1巻が来る前に死んでると思うんですよね……。主人公補正と言われればそれまでですが。