――第七学区:大通り――
ザン三兄弟は浦々の怒りをおさめた後、あの場から逃げ出した木原唯一らを追った。そうして辿り着いたのが、遠くに見える『窓の無いビル』である。本来ならばそのまま突っ込む所であったが、現在の彼らにはその余裕があるとは言えない……。
「……今、方々に散った連中を呼び出した。全員揃い次第、窓の無いビルの下に強襲をかける」
ザン・ニンは通信機を降ろし、他二人に向き直った。惨憺たる有様だ。ザン・コクは体の前面が完全に真っ黒焦げで、ザン・ギャクも軽度とはいえ火傷が目立つ。そしてそれは己もである。火傷に加えて、あの全身鎧のタックルで骨も何本か折れていよう。
「……ったく、俺達もヤキが回ったなぁ、オイ」
焼けた皮膚をボリボリと掻きながら、ザン・コクがぼやく。本来なら、ザン・ニンの援軍招集に真っ先に反対したであろう彼も、酷い火傷のせいで気勢を削がれている。この満身創痍の状態で木原唯一一味と戦っても碌な結果にならないことは彼も分かっているのだ。
……しばらくすると、ザン三兄弟の足元が前兆もなく盛り上がった。鬱々がやってきたのだ。
「……どうした貴様ら」
「煤(注:秋津浦々の別名)の旦那が頭を射られてキレ散らかしちまってよぉ。そのせいで俺達はレアステーキみてえに焼かれちまったって訳だ」
「なるほどな。……脚は引っ張るなよ」
アスファルトの下から頭だけを出した鬱々が三兄弟のザマをみて片眉を上げる。そして聞きたい事だけ聞くと、すぐに地面へと引っ込む。それと入れ替わるように、ブルーワーカーめいた酔っ払いがゆらゆらとこちらに向かってきている。浮田重々だ。
「おっ!俺が一番乗りかい?ヒヒ、ヒック!」
「…………」
「おや、鬱々の旦那、お元気なようで。ヒック!」
鬱々に陽気な挨拶を返した重々は、ザン三兄弟の無惨な有様に気付くと目玉をかっぴろげて叫ぶ。
「オイオイ!どうしたよお前ら!」
「貴様の悪友が怒りと1101全てを焼き尽く01うと101101100貴様の友人だろう1何とか01ろ」
ザン・ギャク、別名宇宿粛々は、機嫌よく酔っぱらっている重々に苦言を呈する。しかし、重々としても、苦情を受けた所でどうにもならない。
「いやぁ、俺が抗議したところでどうにもならないと思うよぉ。ヒック! あいつの油断が消えるまで待つしかないさね。ヒヒヒ……」
粛々の苦言をいなした重々が二本目の酒瓶を口にしようとした時、フックロープがアスファルトに突き刺さり、そこに襤褸をかぶった男が飛んできた。東条猩々である。
「おや、私が最後かね。……ザン・コクにザン・ニン、随分酷い火傷だが、本当に行けるのかね?」
「行ける行けねぇじゃねぇ。殺るだけだ」
「愚弟の言う通りだ」
ザン・コクとザン・ニンの殺意の昂ぶりを受けて笑みを浮かべ、それ以上の口出しを止める猩々。集合したゴロツキ共はゆっくりと向かう。標的と、その他大勢の邪魔者をぶち殺すために。
次は乱戦です。頑張ろう!