とある外道の6人組   作:毛糸ー

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2026/01/11 唯一の末路について追記


EX.祝祭

――学園都市第3学区――

 

「オイオイ、あいつ、死体に媚び売ってやがるぜ」

 

 ハレムめいて女に囲まれる小僧を見ながら、藪の中にて浦々は独りごちる。その視線の先には上里翔琉とそのハーレムメンバー、即ち上里勢力がいた。紆余曲折あって現世に戻ってきた上里翔流は、上里勢力の少女達と合流。そして現在、学園都市を離れようとしていた。

 

 浦々はそんな事情は一切知らぬ。だが、眼前に広がる風景の異様さだけは理解できる。何しろ、女共の中心にいる上里は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。頭を潰されたレインコート女。土人形染みた惨殺死体と化した弓道少女。人体模型めいた肉体パーツの集まり。

 

(朗々の野郎、悪趣味な仕掛けしやがって)

 

 明らかに異常な光景の正体は分かり切っている。あの神懸かり、死せる電子の神を名乗る気狂いたる朗々が妙な呪術でも使ったのだろう。その朗々は、浦々のターゲットの一人であった幽霊女を『我が子を喰らうサトゥルヌス』めいて踊り食いしながら、浦々に目配せしている。

 

(((まだ動くな。これから、もっと面白くなる故な……)))

 

 忌々しいテレパシーに歯軋りする浦々。いつだ。いつになったら、コイツ等をぶち殺せる? ギリギリという歯軋りの音が危険域に達しようとしているその時、浦々は妙な事に気付いた。彼の同僚共が次々と現れてきたのだ。

 

 上里の向かいから歩いてきているのは宇宿粛々、即ちザン・ギャク。東条猩々はビル街の上から様子をうかがっている。木の上にはザン・ニンが吹き矢を構えて何かを待っている。アスファルトの罅からは、手塚鬱々の目線が覗く。

 

「なんじゃこりゃぁ……」

「ありゃ?お前、こんなとこでどうしたんだい?」

 

 予期せぬ事態に困惑している浦々の後ろから、声がかかる。果たして、その声の正体は浮田重々。そのブルーカラーめいた服装は、派手な返り血にまみれている。

 

「テメェら、何でここにいるんだよ」

「ヒヒッヒ……厄介事が色々あってねぇ。ここに来たのは……そうだな、行き掛けの駄賃って所さね」

「……ああ、そうかい。俺の獲物を横取りしねえなら何でもいいさ」

 

 重々の端的な説明を聞き、浦々は獲物に向き直る。己の知らぬ所で何らかの荒事があり、己の知らぬ所で終わっただけの話だ。今、己の前にいるクソ共をぶち殺す事に比べれば何程の物か。

 

 重々は、浦々が事情を掘り下げてこなかったことにホッとする。浦々の激しい気性からすると、暴力の機会があったのに俺を呼ばないとはどういうことだ!とキレることもあり得たからだ。

 

 その重々と浦々の眼前では、粛々が上里の眼前に立ち止まっている。朗々は幽霊女の踊り食い以外は何ら動く様子はない。これから()()が始まるという事か。

 

「上里翔01だ11」

「……何の用だい?」

「お前には01こで死んで1101う」

 

 粛々の殺害宣言と共に、少女であった死体達が崩れ落ちる。幽霊女はもう既にその存在全てを喰いつくされ、死せる電子の神のみがそこにいる。

 

「え」

 

 上里が呆然とするより先に、首がすっ飛ぶ。その首が落ちるより先に、ゴロツキ共は上里勢力残党を皆殺しにかかる。

 

 キツネ耳ヘアーの女は、ワイヤーに絡め取られて顔面を握りつぶされ、触手女は地面の下から突き出た槍で串刺しにされた。キッチンドランカー少女は毒吹き矢で死に、分析少女は哀れにも転倒死した。そこには、何の奇跡も介在する隙間はなかった。

 

――窓の無いビル直下――

 

「唯一さん!唯一さん……!」

 

 ゴロツキ共が上里勢力を抹殺しようとする中、有機的な鎧を纏った男が、ズタズタに引き裂かれた女の身体を抱えて慟哭していた。

 

 重々の襲撃を上里勢力の少女達による肉壁で凌いだ後、襲撃してきたゴロツキ共と唯一の一派は膠着状態にあった。しかし、ふとした拍子に上里勢力の少女達が()()()唯一に容赦なく攻撃を仕掛けてきたのだ*1

 

 上里勢力の少女達の勢いは、それこそ怒涛と言ってよかった。暴力にかけては一家言あるゴロツキ共も、その殺到の前になかば呆然としていたほどだ。その少女の洪水に立ちはだかった交雑も、コンマ1秒も持たず跳ね飛ばされた。

 

 その後に残ったのは、この惨殺死体一歩手前の唯一の身体だ。交雑は唯一を確保する前にザン・コクに致死細菌を複数打ち込み戦闘不能にしていたが、そんなことは何の慰めにもならなかった。

 

「誰か!誰か助けて……!」

 

 助けを求める交雑。その声に応えるものは誰もいないと思われた。しかし……。

 

ズル……ズルズル……

 

 背後から聞こえる何かを引き摺るかのような、ゾンビが這うような音に、思わず視線を向ける交雑。死にかけのザン・コクがゆっくりと、しかし着実に彼らの元に這い寄りつつあった。

 

「なっ!?死んだはずじゃ……!?」

「助けて……やるよ……」

 

 交雑の驚愕をよそに、ザン・コクは立ち上がり、拳を振り下ろす!交雑の悪魔的品種改良を施された、病原菌に満ちた拳を!リンゴの入った紙袋を潰したような音と共に、交雑達はひしゃげ死ぬ!

 

 それを見届けたザン・コクはドシャリと倒れるが、その傍には虫染みた白衣の影、すなわち『解体屋』が重態のザン・コクを回収しに来ていた……。

*1
この時、上条当麻らの働きによって上里翔流が”この世界”に帰って来た。故に、『上里翔琉は唯一が縫い付けた右手が無ければこの世界に帰ってこれない』という大前提が崩壊したことによって唯一の支配が覆されたのだ。

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