――ロンドン――
「持ってきたようだな。では、儀式を始めよう」
神裂火織の遺体を運んできたヴェイズとアーランズを一瞥もせず、朗々は儀式の開始を宣言する。その足元にはデスクトップパソコンの本体が大量に散乱していた。
「これを使って組み立てる訳かね? 我等の魔法陣を」
「然り。貴様らはその女を五体投地の体勢にせよ」
朗々は座禅姿勢で宙に浮きながら、コンピュータをネンリキで組み替えていく。雑然とした残骸の山が、異様なセフィラじみた構築物となっていく。アーランズとヴェイズは神裂の死体を四苦八苦して横たわらせた。
「其は信託なり。貴様らの操る力は一端にすぎぬ。遍く力を操る術を知るがよい」
そしてまた、朗々が人工セフィラを組み上げるにつれて、『目覚め待つ宵闇』の2名は奇妙な感覚を覚え始めた。知らないようで馴染みのある知識が彼らの頭の中に入ってきたのである。彼らの怪訝な表情を悟った朗々は、振り返ることなく語り始める。
「そういえばなんだが、神が堕ちたらどうなるんだ?」
朗々の言う『神託』に目を白黒させながらも、アーランズはぽつりと胸によぎった疑問を呟いた。
「偽りの神々が、その愚かさに相応しい腐肉の身体となりて地に落ちるのだ。その骸の山は愚かなる偽神を奉じる祭壇に十重二十重に積み重なるであろう! そしてその神威は撒き散らされ、その持ち腐れていた力は万民に行き渡るであろう! そしてもって、混沌の開闢となるのだ……!」
いつも超然としている朗々が、今回ばかりは恍惚とした様子で天を仰ぎ、長口上を朗々と語った。その様に異様さを感じながらも、アーランズ達は粛々と準備を進める。
「……しかし、愉しみだな。我々が仰ぎ見ていた神々が、二眼と見れぬ肉塊になって地面に落ちるんだろう? ゲームのシナリオでもこんなに皮肉を効かせたものはそうはないぞ」
「神々が全て堕ちるとなると、既存の魔術にも大きな影響がありそうですね」
「その通りだ」
己の呟きに応答があるとは思わなかったヴェイズは身を固くする。
「紛い物の神々と薄っぺらな階層に頼りし者共は、地を這う虫ケラめいて道に迷うことになろう。だが、汝らは幸いなり。汝らは我らの手によりて導かれている。汝らの手にあるのは無定形な『力』を操る法なり。迷える羊共と違い、汝らは作り物に依らぬ『力』を得ているのだ」
天高く手を掲げる朗々は、今や異形セフィラ様構築物の頂点にまで浮き上がっている。五体投地体勢となった神裂火織の死体は、料理中にほぐれる肉めいて、その姿が崩れていく。そして、遠くに見える
神々が、堕ちようとしていた。