とある外道の6人組   作:毛糸ー

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2.手当たり次第に斬れ!

――『女王艦隊』第十七番艦――

 

 『女王艦隊』に殴り込んだ『剣の契約』の一団は、()()()()()()を相手に大立ち回りを繰り広げていた。

 

 本来『女王艦隊』を動かす魔術師は一隻につき数人で足りる。しかし、最近起こった

リドヴィア=ロレンツェッティの皮ジャケット販売事件を受け、ローマ正教は厳戒態勢を敷き、現在の『女王艦隊』指揮官、司教ビアージオ=ブゾーニの要請に応じて多数の戦闘要員を送り込んだのだ。

 

 ……ちなみに、この大規模な増援で一番割を食ったのは『鋼龍』ではなく上条当麻一行と天草式十字凄教なのだが、それは別の話だ。

 

 そして、『鋼龍』のシンパ『剣の契約』と『謝肉祭』がモーテルに潜んでいたことを知らなかったとはいえ、モーテルと巨大帆船には収容人数に大きな開きがある。いかな『鋼龍』といえど、鎧袖一触で蹴散らせるとローマ正教の魔術師達が思うのも無理はなかった。

 

 だが、『剣の契約』や『謝肉祭』、ひいては『鋼龍』はそこまで容易い相手ではなかった!

 

「ギャハハァッーッ!」

「殺したい放題だぜェ!」

「ヒャッハーッ!血祭だァッ!」

「殺せ殺せ殺せ!」

「前へ進め!前へ!」

 

「コイツら、正気か!?」

「クソッ!ただのゴロツキだぞ!押し返せ!」

「ぎゃぁぁ……!」

「何でこいつら、こんなに楽しそうなんだよ……!」

 

 『女王艦隊』第十七番艦に乗り込んだ『剣の契約』は、魔術師の群れに突っ込んで彼らの雑多な武器を振り回し、次々と命を刈り取っていた。魔術師達は恐れる者がないかのように突っ込んできた『剣の契約』構成員に不意を突かれ、次々と骸となっていく。

 そうして第一波の魔術師達を殺し切った『剣の契約』の者達は、バラバラに分かれ、残された者たちを殺しにかかった……!

 

――『女王艦隊』第二十一番艦――

 

 『謝肉祭』が乗り込んだ船は、今や地獄めいた有様となっていた。元々は魔術師であった謎生命体と共に、ローブに身を包んだ異形の者達が歩いていく。足元には屍山血河が広がり、生者の気配は感じ取れない。『謝肉祭』構成員と奇怪生命体以外は。

 

 彼らのそばに侍る謎生命体は、人間を組み換え、犬めいた形状に変えたような存在で、肉や内臓は露出し、奇妙に捻じれていた。

 そしてその犬を連れる者達は、明らかに異形であった。ある者は目からヤギめいて角を生やし、またある者は明らかに人間の骨格を持っていなかった。

 

BOW!WOW!WOW!

 

「うわ!?なんだこいつ!?」

「ヒッ……!?ギャァァッ!?」

「クソッ!?」

 

「あらあら、まだ敵がいたのね……」

「殺してまた『加工』しよう」

「ここは屠殺場か?うじゃうじゃ寄ってきやがる……」

 

 そして、奇怪犬は飼い主よりも早く隠密敵を察知して喰いつき、その飼い主達、つまり『謝肉祭』構成員達はまたも敵が現れたことにうんざりしながら、殺しの準備を整えた……!

 

――『女王艦隊』第三十八番艦――

 

 この三十八番艦では、虐殺が起こっているのは同じだったが、様相が少し異なっていた。

 

 他の船の死体はズタズタになるまで斬り付けられ、あるいは叩き潰され、あるいは捻じ切られ、あるいは滅多突きされており、程度の差こそあったが原型が崩れたものが大半であった。

 だが、この船の死体はある者は一文字に斬られて即死し、またある者は頭蓋に穴をあけられ、脳髄を吸い出されて死んだことが分かる遺体であり、概ね原型が保たれていた。

 

 これは一撃で勝負を決めることができるという明らかな強者の証であった。然り。この船に潜入しているものはわずかに三名。一人は『謝肉祭』教祖、ハイドラ。もう一人は『剣の契約』棟梁、笹浪。そして最後の一人が辣腕カルトデザイナー、キラーBであった。

 

 三人は、死体の山の前で一息つき、僅かな生存者を尋問にかけていた。

 『女王艦隊』の旗艦『アドリア海の女王』を目指せばいいのは分かっていたが、迂闊にもハイドラ、笹浪の両名とも旗艦の特徴を聞き忘れていた。辣腕カルトデザイナー、キラーBが合流したのは作戦結構直前であり、手遅れであった。

 

「この艦隊の旗艦はどれだ。言わなければ……」

(全く手際が悪い……泥縄にもほどがある)

 

 生存者を尋問するキラーBは、『鋼龍』同盟組織の中でも頭が足りない連中の手際の悪さに苛立ちながら、淡々と脅しの言葉を口にする。

 

「……奴に脳髄を啜られるんだな」

 

「ん?」

 

「……!!」

 

 その言葉に、ボーッとしていた背高ノッポのローブ男が反応し、生存者の方を向く。それだけで彼は恐怖に震え、目をそらそうとする。キラーBはそれを引っ掴み、無理矢理顔を固定する。

 

「ほら、よく見ろ。事と次第によってはお前を殺すことになる相手だ。しっかり見ろ。敵を知り己を知れば百戦危うからずというだろう」

(こちらはそれを徹底できていないが……)

 

 生存者の体は震え、もはや陥落は時間の問題と思われた。その時!

 

SLASH!

「グギャァア!?」

 

 突如、笹浪が残った生存者を右腕切断!笹浪は切り落とされた腕を拾い、キラーBへとパスする!危なげなくキャッチしたキラーBは意図を察せず、笹浪に尋ねる。

 

「……何のつもりだ」

 

「こういう狂信的な連中はな、肉体的拷問より精神的拷問の方が効きそうだと思うがね。その腕から肉をこそげとって喰わせると言えば、ペラペラしゃべってくれるだろうさ」

 

「なるほどなァ……。殺戮集団の豆知識も侮れんということか」

 

 思いがけず尋問の手間を短縮できそうな手段を手に入れたキラーBは、無慈悲な視線で生存者を射抜く。彼は震えあがり、こんな地獄に引き込んだ指揮官、ビアージオ=ブゾーニを恨んだのだった……。




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