これからも「とある外道の6人組」をよろしくお願いします!
――
………ガガピーガガガ!
「お、来た来た」
通信機越しに喋るドロームの言葉は、山手と佐久にとっては拍子抜けだったが、運転手にとっては極めて喜ばしい知らせを意味していた。
『おう、おんしら、揃っとるけ?今夜は満月が綺麗じゃのう。一緒に見んけ?』
「……はぁ?」
「何を言ってやがる?こりゃどういう……?」
佐久・山手の二人にとって、この通信は全く意味不明だった。確かに今は夜だ。だが月は満月でもなんでもなく、今はそれを見に行く猶予がないぐらい、ドロームにもわかるはずだが……。
だが、運転手は不敵に笑い、あまりに場違いな通信の正体を明かす。
「符牒だよ」
「あ?」
「俺と長老との間だけで、極秘に交わしていた符牒だよ。このメッセージはな、『全部上手くいった。機嫌がいいからお前らに同行する。ワシが来るまで待っとけ』って意味だよ」
「……お前ら本当にチンピラか?というか、ドロームの奴が来るのか!?」
果たして、運転手の言葉通り、通信の5分後にはドローム・A・ヴィスタが現れた。やってきた彼は異常に上機嫌で、3人を促した……!
「さぁ!行こうやんけ!刑務所へドライブとしゃれこもうや!」
「ケケケケ……待ってましたぜ」
「嘘だろ……本当に来やがった……」
「諦めろ、佐久。コイツの誘いに乗った時から、コイツ等が自由気ままな事なんて分かってたことだろう」
――『鋼龍』軍用車――
木原幻生が収監されている刑務所に向かう車内の雰囲気は二分されていた。前方の座席に座るドロームと運転手が上機嫌な雰囲気を醸し出す一方、後部の座席に座る佐久と山手のコンビは陰鬱とした雰囲気を漂わせていた。
((何で奴らが上機嫌なのか聞かなくていいのかよ?))
((嫌だ!ぜってぇ厄ネタだろ!ただでさえローマ正教の件があるのに、これ以上厄介事を抱え込んでたまるか!))
後部座席では、元『ブロック』の二人が、この非常時に『鋼龍』が何を成し遂げたのかを聞く役目を互いに押し付け合っていた。厄介事をこれ以上押し付けられたくないというのもあったが、聞くのが怖くもあったのだ。
現に、彼らの乗る軍用車は今の喧騒が聞こえない学園都市の中でも、人が通らない裏路地を走って遠回りしている上、ルームミラーに移る運転手チンピラとドロームは楽しくてたまらないといった笑みを浮かべ、明らかな危険事案の匂いがひしひしとしていた……。
だが、厄介事は彼らを放っておいてはくれなかった。
「おう!おんしら、何シケた面さらしとんのじゃ!何ぞ、喋らんかい!」
((おい!呼ばれてるぞ!))
((それは佐久の事だろ!))
「おう!長老が話振ってるだろ!何とか言えよ!車内が気まずいだろ!」
((ああ畜生!何とでもなれ!))
ドロームの呼びかけに続き、運転手の大声が響き、ついに佐久辰彦は屈した!
「あのですね……何であんたらそんなに上機嫌なんです?今、学園都市は異常事態でしょ?まさか、これもあんたらが……!」
「いやぁ、ちゃうちゃう。そんならもっと馬鹿笑いしとるわい」
この異常事態も『鋼龍』が仕込んだのではないかという疑念を口に出そうとしたが、それは他ならぬ『鋼龍』のボス、ドロームによって否定された。だが、この後に続いた言葉は、その想定よりもさらにひどかった。
「いやな、ワシはこの度、統括理事会入りしたのよ!」
「「は……? はぁぁあぁぁぁぁぁ!?!?」」
――特能総研――
ゲッソリとした佐久・山手コンビ、そしてこの度統括理事会入りしたドローム、加えて『鋼龍』のチンピラが刑務所から『廃人状態の木原幻生から暗部の情報を引き出す』という名目で確保してきた木原幻生の肉体を前に、ザゾグと木原幻生は話し合っていた。
「……今の貴様は、本当に見えんのだな。貴様の事を話したら、木原交雑から狂人扱いされて危うく精神病棟送りになる所だった」
『ひょひょひょ……それが普通だろうねぇ……。しかし、本当に肉体を確保するとは、驚いたよ。しかし、脳の件はどうするつもりだい?勿体ぶるのはよして、教えてくれてもいいじゃないか』
「こいつを使う」
木原幻生の脳髄は学園都市第五位『
『!ひょひょひょ……それはセルロースナノファイバーかね?』
凡人が見れば何か繊維の塊、ともすればゴミに見える代物でも、木原幻生はその正体に感づいた。
セルロースナノファイバー。それは炭素繊維の一種で、ワイヤーや防弾装備としての注目が集まっているが、脳神経よりも細く精密な配線ができるという長所もある。
「コイツは脳を代替するのに便利な素材だ。貴様も知っているだろう?」
『……それをどうやって手に入れたかについては聞かないことにしておくよ。過剰増殖の問題はどうするつもりだい?』
いみじくも木原幻生の言うとおり、この新材料、活動状態で放置しておくと際限なく自動増殖する性質もあり、脳の代替に使用する場合、頭蓋の空間が足りなくなると無理に折り畳んでスペースを確保しようとしてしまう欠点がある。
この繊維をアンドロイドの脳に活用していた木原は、異物として人間の脳を取り込ませ、常に適度なダメージを与えることで解決していたが……。
「人間の脳髄を使ったらアシがついた時に厄介なことになる。だからな、
『何?』
「有機コンピュータを使えば、脳髄の構造を模すことは容易い。ソイツをブチ込めば、容量の問題も解決という訳だ」
『ひょひょひょ!ひょひょひょひょ!やはり君は”木原”という枠に収まらない!セルロースナノファイバー配線の破断と拒絶の仕方をコントロールすれば疑似的な
「気に入ってくれると思ったよ。さて、『博士』を呼んで改造にかかろうか」
ザゾグはニヤリと笑い、幻生の脳髄をセルロースナノファイバー脳に置換せんと手術机を準備し始めた……!
統括理事会会員、ほぼみんなロクデナシだし、ゴロツキが統括理事会入りしてもいいはず……!
創約3巻未読なので、セルロースナノファイバー関連に瑕疵があれば感想欄で遠慮なく指摘してください!