これからも「とある外道の6人組」をよろしくお願いします!
――少年院――
少年院に着いた佐久、山手、賽の一行は、傭兵たちとは別れてとある場所へ向かっていた。結標淡希の仲間たちが収監されている特別房である。
そして佐久と山手がキャスター付き台車で運んでいるのは、人間がすっぽり入りそうなスーツケースをいくつかと、それよりもさらに大きいスーツケースであった。賽は大きい方のスーツケースの中身は検討がついていたが、小さい方の中身は全く分からなかった。
大きい方に入っているのはヒダルマだろう。奴は、放火された家の中で『リザレクター』をオーバードーズしていた重度のヤク中で、”生前”から半分死体のような輩だからか、寝つきが非常にいい。それ故、寝ている所をこのように運ぶのも不可能ではない。
だが、小さい方のスーツケースには一体何が入っているのか……?脅しに使う爆薬は、二人の代わりに自分が運んでいるというのに。
「小さい方のスーツケースには何が入ってる?でかい方はどうせヒダルマさんだろうがな」
「確かにでかい方にはヒダルマさんが入ってる。小さい方にはな、
「……『人形師』の奴が作ってたやつだな。成程、カモフラージュにするつもりか」
賽は山手の答えを聞いて、彼らの考えを概ね悟った。寝そべったヒダルマの上に、『人形師』作焼死体人形をいくつか置くことでただでさえ焼死体めいたヒダルマを焼死体の山に溶け込ませ、奇襲を狙うという作戦だろう。
「そうだ。これらを使って結標淡希を脅す。その爆薬を特別房に取り付けた上で、爆薬の実験で死んだ奴らというていでこの焼死体の山を見せてやれば、あの女は冷静さを無くす。そこを奇襲させる、という寸法だ」
「ほーぉ……。一ついいか?ヒダルマさんがそんな高度な計画、理解できると思うか?」
賽は、結標淡希奇襲暗殺計画に関して、一つケチをつける。それは、ヒダルマが非常にアホだということだ。元々重度薬物中毒者だったヒダルマは、ゾンビとなった後はさらにアホになった。それも、一般常識が欠落するレベルで。
「な……!」
「そんな絶望的な顔すんなよ。きちんと方策はあるさ。…………長老、このことが分かっていやがったな?」
賽が色の抜け落ちた表情になった佐久と山手に見せたのは、犬笛であった。
「……ブラックジョークじゃないよな?」
「いや。コイツを吹くと、ヒダルマはすぐに起きるんだよ。脳味噌が獣に近いからかもしれねぇな」
ドン引きする佐久と山手をよそに、賽は犬笛を吹く。普通の人間には聞こえない音を聞きつけたのか、大きいスーツケースの中からもぞもぞ何かが動くような音が鳴りだした!賽が歩み寄りスーツケースを開けると、中から焼死体ゾンビが這い出した!ヒダルマである!
「「……!」」
改めてヒダルマの異形の姿を見て戦慄する佐久、山手の二人をさておいて賽は簡単な指示を出す。ヒダルマの頭で理解できる限界を見極めながら。
「おう、ヒダルマさん。元気か」
「アバー……。げんきだ」
「ヒダルマさんよ、お前にやってほしいことがある」
「ウー……なんだ?」
「……おい、お前ら、結標淡希の見た目を言え」
佐久達は、結標淡希の見た目を想像し、思ったことをそのまま口に出す。上半身サラシにブレザーを羽織り、冬服のミニスカートに金属ベルトだけの恰好の女の評価は二人とも一緒だったと見え、言葉がはもった。
「「痴女だ」」
「……痴女、理解できるか?」
この期に及んでまだヒダルマの理解力を過大評価する二人を睨みながら、賽はヒダルマに質問する。当然、色よい答えが返ってくるはずもない。
「……わからん」
「おい、結標淡希の見た目は?」
今度は二人も間違えなかった。ヒダルマの残念な脳味噌でも理解できる内容を伝える。見たままの恰好を。
「サラシを巻いてるな」
「ミニスカートだ」
「アバー……わかる、わかる」
うなずくヒダルマを見て賽は命令を下した。命令と言っても簡単なものだ。
「よし。ヒダルマさんよ、ここに寝そべってくれ。寝てもいい。というか寝ろ。俺が笛を吹いたら、俺とコイツ等以外の奴は皆殺しにしていい」
「アバー……わかった」
そういって寝そべるヒダルマさんの上に、佐久と山手が焼死体人形をのせていく。これで傍目からは焼死体の山にしか見えない絵面が出来上がった。そして、爆薬を特別房の扉に取り付けた。後はカモが来るまで待つだけとなった三人は、暇を持て余し雑談を始めた。
「純粋な疑問なんだがな、『グループ』とかいうカス共は本当に来るのか?結標淡希とかいう奴の個人事情なんざ無視されるんじゃねぇか?」
「来る。間違いねぇ。俺らはまず、第五学区のウイルス保管センター、第二十三学区の航空宇宙工学研究所付属衛星管制センターにハッキングをかける
「コイツで『グループ』『メンバー』の連中の目を集めた。んで、奴らがしっちゃかめっちゃかやってる間に傭兵共を呼びに行こうとしたところにあんたが来た。後はご存じの通りだぜ」
「……オイ待てよ。『メンバー』とかいうクソクズ共はどうすんだ?『グループ』じゃなくて奴らが来るかもしれねぇだろ」
「蠢動さんからの連絡だと、『メンバー』は『グループ』と同時に『スクール』を相手にしようとしてほぼ壊滅したそうだ。一人消息不明だが、ほぼ無視していいだろうな」
「フン……二正面作戦をするからだ。蛆虫共が。むやみな二正面作戦は下策だっつう戦略の基本も知らねぇのか」
『人のシノギに茶々入れる畜生共』と暗部組織を認識していることが透けて見える、万感の罵倒が乗ったカス、クソクズ、蛆虫という賽の発言を聞き、佐久、山手は微妙な顔をした。暗部組織は上からの指示を受けて動くことが多い。それがたとえどれだけ滅茶苦茶でも、実行しなければならないのだ。
「……奴らのことはよく分からんが、上層部から同時に対処しろと言われれば従わざるを得ないのが暗部組織なんだよ」
「ほーお……随分不自由なことで。『アイテム』とかいう腐れクズ共もそうなのか?」
「大抵の暗部組織はそうだな。俺達みたいな特定の統括理事会会員専属となると話も違ってくるが。……話を戻すぞ。とにかく俺達は学園都市に外部からの傭兵をなだれ込ませた」
「そうなると、上層部の連中も捨て置けねぇ。『アイテム』の連中は『スクール』と揉めてるし、傭兵たちと俺達に対処するのは『グループ』しかいねぇって訳さ」
「……『アイテム』の連中が死んだら、『スクール』に八つ当たりすればいいな。で、『グループ』の連中は来たのか?」
さらっととんでもないことを言った賽は、佐久に確認する。その言葉を受けて折り畳み式ノートパソコンを取り出した佐久と山手は、PC起動後にしばらく指を動かし、少年院のシステムを掌握した。
「ちょっと待て……よし。カメラをハッキングした。これでこの少年院内の全ての監視カメラの映像を見れる」
「…………あの褐色女、何するつもりだ?まぁいい……『グループ』の奴らは、来やがったな。全員血祭りにあげてやる」
「……少なくとも、結標淡希が殺れればいいな」
そういって佐久が見せたPCの画面は、各監視カメラごとの映像を同時に映すために分割されていた。そしてそこには、作戦の狼煙があがったことを示す映像が映っていた……。
標的が属する組織『グループ』の移動用救急車が、少年院の駐車場に止まったのだ。
『アイテム』『スクール』『グループ』の戦力に比べて『メンバー』『ブロック』のみすぼらしさよ……。
これで横並びってマジ?
今作の『メンバー』のリーダーについて紹介する予定はないです。
時系列表は作った方がいいな……読み返してて記憶と実際の出来事の順序が逆転してて驚くことがちょくちょくある……。
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