とある外道の6人組   作:毛糸ー

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C.戦争狂の暗躍

――10年前:ブラジル――

 

「ほ、本当に……本当にその手術をすれば不死身になれるんだな!?」

 

 ブラジル政府の高官は興奮していた。彼は元来、死を恐れていた。死から逃れるためなら、何でもすると思っていた。そして今、そのための方策が転がり込んできたのだ。

 

「そうですとも。この手術は幾多の例がありましてな。そのどれも、成功しております」

 

 その鍵は眼前にいる、包帯まみれの東洋人。この東洋人が最初に面会を求めてきた時、高官は相手にしなかった。だが、東洋人は不死の秘策をもって高官に接近したのだ。すなわち、東洋人が言うところの再生力強化手術(リジェネレーション)を行えば、不死身の再生者(リジェネーター)となれるというのだ。

 

 そして高官にとっては嬉しいことに、手術に対する対価は必要ないという。()()()()()()()()()()()()()便()()()()()()()()()()()()()()()()()。高官は期待に胸を膨らませながら、東洋人へついていった……。

 

 …………賢明な読者諸君ならもうお分かりいただけるだろうか。包帯まみれの東洋人の正体は、負業部隊(ふごうぶたい)所属の石井特務少尉である!負業部隊(ふごうぶたい)の研究者であり、今はブラジルに()()()を仕込むために暗躍しているのだ。

 

 再生力強化手術(リジェネレーション)自体は、負業部隊(ふごうぶたい)の全構成員が行い、不老の肉体を手に入れている。しかし、今回行う再生力強化手術(リジェネレーション)は不完全なものであり、特殊髄液を定期的に摂取しなければ体がドロドロに溶けて死ぬ。

 

 その特殊髄液を確保できるのは、負業部隊(ふごうぶたい)だけだ、と言えばもうからくりは分かるであろう。

 

 そしてまた一人、ブラジルの高官が負業部隊(ふごうぶたい)の傀儡に成り下がった……。

 

――現在:ブラジル国会議事堂――

 

「お前達正気か!?第三次世界大戦の期に乗じて、南米全土を支配するだと!?」

 

 ブラジルの国会議事堂で、一人の国会議員が激昂していた。現在の政権が、第三次世界大戦の期に乗じて南米全土をブラジル連邦共和国の支配下に置く、南米統一作戦を発動するという常軌を逸した政策を発表したのだ。

 

「何度も言わせるな。これは我々が国際社会で存在感を増していくために必要なのだ」

 

「ふざけるな!南米は第三次世界大戦に巻き込まれずに済んだのだぞ!!どうしてわざわざ波風を立てる必要がある!!!」

 

 そして、この蛮行を許すことができなかった国会議員は、国会議事堂から退廷した。そして、この蛮行をどう止めればいいか、思考を巡らし始めた。

 

(クソ!クソ!どうしてしまったのだ!?首相も、宰相も、閣僚も、何を考えている!?どうすればいい!?リークするか!?いや、駄目だ……首相は国民の抗議を受けてでも侵攻を決行するつもりだ)

 

 議員は考える。ブラジルが侵略者の汚名を受けないための方策を。狂った現政権を止める方法を。

 

(そもそも、現政権は国民の支持が離れているという訳でもない。それに、国内は安定している。なぜ、侵攻という手段をとることになった?)

 

 議員はさらに、思考を深めていく。そもそも、今の政権はなぜ南米統一という世迷い事を提唱するに至ったのか?

 

(ブラジルには資源は十全にある。領土問題は南米統一を掲げるには弱い……いや、そもそも、なぜ第三次世界大戦は起こった?)

 

 そして議員は、そもそもの発端である第三次世界大戦の原因についても思考を傾ける。

 

(ロシアの宣戦布告は何か妙だ……学園都市が最新技術を独占しているのは事実だが、そこまで糾弾するようなことか?……ん?これは……今回とよく似ている構図なのでは?)

 

 議員はふと、ロシアの難癖に近い宣戦布告に、現在ブラジル政府で話し合われている南米統一構想に似たものを感じた。難癖に近い口実に、有無を言わさぬ武力行使。

 

(……もしや、何者かの陰謀か……?)

 

 そして、議員は隠された事実に気付いてしまった。然り。第三次世界大戦も、此度の南米統一作戦も、裏で糸を引いていた者たちがいるのだ。

 

 第三次世界大戦の黒幕は右方のフィアンマ。彼の目的は人類の救済。そのためには、どれだけ骸が積みあげられようと、止まることは無い。

 

 他方、南米統一作戦の黒幕は負業部隊(ふごうぶたい)。高官たちを思い通りに動かし、南米を戦乱に包もうとしているのだ……!

 

――現在:国会議員の自宅――

 

 国会から帰ってきた議員は、己の邸宅で夕食をとりながら、英気を養っていた。無論、南米統一作戦などという蛮行を止める方策を練るためである。だが、彼は心ここにあらずという様子で、夕食の味も分かっていない様子であった。

 

「旦那様、デザートでございます」

 

「ああ。………………?」

 

 長年彼に仕えてきた執事が、議員にデザートを出す。そして、それを食べようとした議員はふと、違和感に気付いた。私の執事は、こんな戦場さびの利いた声であったろうか?そして、執事の方を振り向く。

 

「な!?貴様、何者だ!!」

 

「おや……アレの効き目が悪いな。計算では、毒入りリンゴを食べて死ぬはずだったんだがね。白雪姫のように」

 

 スーツに身を包んだ瀟洒な老人であったはずの執事が、全身に灰色に薄汚れた包帯をつけた、闇医者めいた老人に変わっていたのだ!無論、この怪現象にはタネがある。

 

「ほう……判断力の低下するガスを散布したが、効いていないか。もう少し、散布量を増やした方がいいな」

 

「貴様は何者だ!優秀な私の執事をどこにやった!」

 

 議員は奇怪な医者の独り言を聞き流し、ピストルを構えながら詰問する。即発砲するのは、何か不味いと、議員の直感が告げていた。

 

「ああ。死んでもらったよ。今は、姿かたちもないのではないかな」

 

「貴様ァーッ!!!」BLAM!

 

 医者の無慈悲な物言いに怒り狂った議員は発砲!医者は腕で受け止める!そして、医者の腕から銃弾がもう一度打ち出される!

 

BLAM!

「グアッ!?き、貴様、何者だ……何を企んでいる……!」

 

 銃弾を受けた議員は目を白黒させながら、医者を誰何し、企みを聞きださんとする。もしや、この医者が、南米統一作戦の黒幕ではないか、と思いながら。だが、続いた医者の言葉は掴み所がなかった。

 

「……我々の戦争はいまだ終わっていないのだよ。これはただの、狼煙に過ぎないんだ。……だからだね、こんなところで時間をとっていては、興醒めなのだよ……」

 

 医者は呟きと共に議員の背後に回り、錐で脳髄をかき回して、殺した。この議員の死は、負業部隊(ふごうぶたい)の傀儡となったブラジル高官たちによって隠蔽された。そして、ブラジルによる無謀な南米統一作戦が開始された……。




第三次世界大戦の宣戦布告、他国からしたらかなり奇妙じゃなかったんでしょうか。

確かに最新技術を独占しているのは腹立つでしょうが、だからといって大国から宣戦布告されるだけの大義名分が用意できるとは思えないんですよね。……魔術師は秘匿されてる訳だし、マスコミとかはイチャモンとしか思ってなかったんじゃないか?

※2024/01/23 修正
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