これからも「とある外道の6人組」をよろしくお願いします!
――タタラ日本支社・会長室――
「会長、
タタラグループが『反学園都市サイエンスガーディアン』に支援することを決めた会議の後、黒駒は会長に能力発現型人造人間計画の大失敗について報告していた。人造人間に『原石』と呼ばれる天然の能力者が出たことを知り、タタラの人造人間培養部署は、能力を宿した人造人間の開発に取り掛かった。
だが、結果は散々なものだった。何の役にも立たないような能力でも、無理に発現させようとすると肉体的・身体的に大きな問題を抱え、戦闘に活用するどころか、一生介護を必要とする代物となってしまうのだ。
「……なるほど。
灰は作られてすぐめきめきと剣術の実力をつけ、幾度かタタラの非合法任務にも携わっている。生半可な検査では人間と全く区別がつかない第三世代人造人間であるため、海外に行って任務を行うことも多い。それ故、この度『サイエンスガーディアン』の本拠地、バゲージシティへ援軍に向かったのだ。
そして話はサイエンスガーディアンにうつる。あの会議の後、タタラグループの全力を持ってサイエンスガーディアンに助力すると連絡を入れたところ、一党のリーダーであったウェストランド=ストライニコフは、リーダーを多々羅に譲ると言い出したのだ。
最初は固辞していた多々羅であったが、率いるグループの規模を見ても、手腕を見ても多々羅道雄以外にリーダーはあり得なかった。しまいには、ウェストランド直々に多々羅がリーダーに収まってくれなければ学園都市に抗することはできないと泣きついてきたのだ。
不本意ながらサイエンスガーディアンのリーダーを務めることになった多々羅は、溜息をつく。当初、タタラは適当に技術や物資を支援し、なかば高みの見物を決め込むつもりであった。だが、多々羅がリーダーとなったことにより、勝たなければ学園都市にタタラが潰される状態に陥ってしまったのだ。
「……サイエンスガーディアンの件は、当てが外れたな。奴らをコマめいて動かし、学園都市の内情を探り出してやろうと思ったら、私が駒(注:馬の古い言い方)めいて働く羽目に陥るとは」
「それに奴らが決めた本拠地もまずいです。暖房装置が破壊されれば、一気に寒波が襲い掛かって一網打尽にされるでしょう」
そう言ってバゲージシティの位置取りのまずさを指摘するのは
そして、洗が指摘するように、東欧の一都市を丸ごと買い取ったバゲージシティは、その性質上冬場は寒波にさらされている。それゆえ、暖房を十全に効かせる必要がある。だが、そのための装置を破壊されれば、冬将軍にさらされ成す術もなく全滅するだろう。それを学園都市が見逃すとは考えにくい。
「方法があるとすれば元々バゲージシティに住んでいた住民を肉壁にすることだが……学園都市の連中がそんなことに配慮するとは思えんしな」
「それ以前に、他社からの反対も予想されますが……」
「凍死するよりマシだと言ってやれ。それに、地元の住人も故郷に戻れた上に仕事が貰えるのだ。文句はなかろう」
氷結地獄を避けるために多々羅が考え付いた策は、元住人をバゲージシティに戻すことであった。バゲージシティは元々、東欧の一都市であったが、第三次世界大戦の折、住民は追い出され、終結後も本来の住民に街が返されることなく有耶無耶になっていたのだ。
そこでバゲージシティに住民を戻し、第三次世界大戦での借りを返すとともに、学園都市に対する肉壁とすることにしたのだ。サイエンスガーディアン内からは無関係の住民を巻き込むことへの反論もあるだろうが、少しでも生き残る確率を高めるにはこれしかないだろう。
「温いことを言う奴等は何人か殺して見せしめにする必要もあるやもしれませんな」
「独立した暖房施設をもつシェルターを地下に作る手もありますが……」
「元住人の誘致と地下シェルターを同時並行で進められればなお良い。片方しかできなければシェルターを先にした方が良いだろう。住民は通知を出せばすぐに帰ってくるだろうしな。それと、洗よ。見せしめ殺は控えた方が良い。流石にリーダーになって早々粛清は不興を買う可能性が高い」
バゲージシティの暖房問題に一段落をつけたところで、次にタタラの裏を統括する者たちが話題としたのは『グレムリン』のことである。『グレムリン』の者たちが『鋼龍』を捨て駒にするために、同盟のていで近づいたことはすでに定例会で報告されている。
それゆえ、多々羅が初めに懸念したのは、『グレムリン』は『反学園都市サイエンスガーディアン』を捨て駒にするつもりではないか、である。答えは分かり切っているが、黒駒・洗の二名に尋ねる。
「……サイエンスガーディアンは『グレムリン』を雇っているわけだが、『グレムリン』はサイエンスガーディアンに忠誠を誓っていると思うか?」
「あり得ないですね。良くてビジネスパートナー、悪ければただの捨てゴマでしょう。悪名高い『鋼龍』ですらコマにしようとした連中です。奴らにとっては企業連合なぞ、恐るるに足らずといった所でしょう」
「奴らが何を企んでいるかは知りませんが、ろくでもない事なのは確かでしょう。対抗手段を持って消してしまった方が良いかと」
思った通りの悲観的な答えが返ってきたため、多々羅は目頭を揉みながら『グレムリン』を消すための方策を考える。
(次の定例会で『鋼龍』あるいは『目覚め待つ宵闇』に対オカルト戦力を融通してもらうよう頼むか……)
反学園都市の御旗があがるのはもうすぐだ。その旗を学園都市に折られるか否かは、その時にならなければ分からない。
お察しの通り、バゲージシティ編はタタラの章です。
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