――『ストレンジの九龍城』ドロームの工房――
「で、聞こうやないけ、
工房に引きこもったドロームが、先程まで『ストレンジの九龍城』入口で大暴れしていた
「ウイィ……アー……ホス卿はアンタと同盟を組みたいそうだ」
何という冒涜的な光景であろうか!緑の炎はヒトガタめいた影を形作り、ドロームに応えたのだ!この緑の炎はトゥールスチャ。ドロームと同じ”異世界”出身のプラズマ生命体である。そして、ホス卿とは、トゥールスチャのボスで、当然ながら、”異世界”出身だ。
「田吾作がァ。自分で面ァ見せろと伝えんかい。話はそれからじゃぁ」
不機嫌なドロームの言を受け、トゥールスチャは
「ウィィィ……アー……面倒だから、嫌。だそうだ。アーアアア……」
「どうせ日がな一日、レムリアの悲劇を鑑賞しとんのやろ、あのピンボケ。呼び出さんかい。おどれのようなヤク中を間に挟んどったら、交渉が進まんわい」
「ひでェなァー……悪いがそりゃ無理だ」
「なぜじゃ。言ってみい。ボケたことほざいたら、殺すぞ」
「ヤク……ヤクくれ。ヤク、足りな、グワーッ!?」
ヤク中の緑プラズマ生命体は、突如頭部めいたわだかまりが唐竹割りされ、悲鳴をあげる!そして、おお!見よ!ドロームの右腕を!まるで
「どういう……つもりだ……!」
わだかまるプラズマの塊、即ちトゥールスチャは、やっとのことで形を整えると、息も絶え絶えにドロームに抗議する。
「たわけ。ボケたことほざいたら殺す言うたじゃろ。むしろ今死んどらんことに感謝せぇ」
「ウゥゥ……横暴だぞ……ヤク中がヤクを求めるのは、自然な事だ……!」
ドロームの取り付く島もない発言に再び抗議するトゥールスチャであったが、ドロームは無慈悲だった。
「あのボケ呼び出せ。今度は瀕死じゃ済まんぞ」
「分かった、分かった……」BOMB!
ついにトゥールスチャも観念し、彼のボス、アザト・ホースを呼びだす。彼のプラズマ・ボディに小爆発が生じたかと思うと、小さな緑人魂がゆっくりとドロームとトゥールスチャの間に移動する。そして人魂から、ゆっくりと声が聞こえだした……。
「やぁ」
「ホス卿。同盟云々の前に、おどれに聞きたいことがある」
「何かな?」
「ローマで、ワシらの部下燃やしたの、そこのヤク中じゃろ。コイツがヤクがらみの事以外を独断でやるとは思えん。おどれの指示じゃろ」
常人が聞けば、ほぼ間違いなく善人と錯覚するであろう穏やかな声に、しかしドロームは剣呑な態度を崩さない。剣の契約がローマ正教勢力を削り切れなかったのは、恐らくホス卿が関係しているからだ。そして、それは事実であった。
「うむ」
「……どないなつもりじゃあ」
「彼らが生存していれば、もっと悲劇をもたらしてくれるからだよ。笑える悲劇をね」
ホス卿の言うとおり、現在ローマ正教はローマ教皇の座を巡り権力闘争の真っ最中であり、血で血を洗う抗争が繰り広げられている。
「……チッ。仁義なき戦いでも見たい気分だったんか、ドチンピラ。おどれのおかげで『剣の契約』の連中は存分に殺せなかったやないけ」
ドロームが言うように、ホス卿は趣味が悪い。
そして、ドロームは、第三次世界大戦終結時に派手に暴れた鋼龍同盟組織『剣の契約』、『謝肉祭』、『鋳鉄工業』を”異世界”に送り帰している。その時に、『剣の契約』の面々のみが不満げであったのを、ドロームは脳裏に刻み付けていた。
加えて、ホス卿は『鋼龍』の作戦行動に茶々を入れたことを一切謝罪していない。それゆえ、手を組もうというホス卿の申し出に対するドロームの答えは一つ。
「面も見せず、ワシらに茶々入れたことにも謝罪せず、同盟の申し出け。ワシも舐められたもんじゃのう……組むわけないじゃろ。タコが」
「そんなつれない事を言うなよ。同じ旧支配者のよしみじゃないか、ハイオグー・ヤイ」
何たることであろうか……!今、ホス卿は旧支配者と言ったか!?哀れな”異世界”の考古学者、エミ・タミコの妄想の産物であるはずだった、『恐るべき古々しき者ども』は、実在するというのか!?
そして、ハイオグー・ヤイとは旧支配者としてのドロームの通り名である……!だが、ドロームは『響きが気に入らん』ということで、ドローム・A・ヴィスタの名を使い続けているのだ!それゆえ、他の旧支配者も、彼をドロームの名で呼ぶ。ハイオグーの名で呼ぶのは、空気の読めないホス卿だけだ……!
「その名前で呼ぶせいで、余計に同盟を組みたくなくなったわい。失せろ」
「そうか、残念だ。どうすれば同盟を組んでくれるんだい?」
死ぬほど図々しいホス卿に対し、ドロームは舌打ちをしながら答えを返す。こういう時のホス卿は、答えを返さないと
「チッ……
その言に、人魂越しにホス卿はきょとんとする。ホス卿が一番好きなのはいわゆる自分たちの邪魔をするヒーロー*1が無力感と絶望でのた打ち回る様であり、それを供してくれる
「ハ、ハハハハ、ハハハハハハッ!ハハハッ!やはり君は、私の予想を大きく超えてくるなぁ!ハハハハハッ!」
「チッ……何が面白いんじゃあ。消えろや。そこのヤク中連れて」
そして、ホス卿は呵々大笑しだした。ドロームは、舌打ちをしながら、さっさと自分の工房から消えるようにホス卿とトゥールスチャに促す。
「ハー……ッ、ハー……ッ、ああ、ああ、分かったよ。今度は何故、神を引き摺り堕とすなんて目標を立てたのか、そこの所を知りたいね」
そういうと、ホス卿の声を中継していた人魂は消え、そしてそのすぐ後にトゥールスチャも消えた。残身の体勢を取った後、ホス卿もその部下も去ったことを悟ると、ドロームは工房から出て行った……。
ホス卿は本当にろくでもないお方……。
ホス卿の