とある外道の6人組   作:毛糸ー

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初めましての方も、継続して読んでくださっている方も、「とある外道の6人組」を読んでくださり、本当にありがとうございます!


2.悪党二人

――『ストレンジの九龍城』ドロームの工房――

 

「で、聞こうやないけ、()()()()()()()()()()()は何を言うてきとんのじゃ」

 

 工房に引きこもったドロームが、先程まで『ストレンジの九龍城』入口で大暴れしていた警備員(アンチスキル)()()()()()()()につまらなさそうに問いかける。常人ならばドロームが発狂したと思うだろう。だが、この場で正しいのはドロームだ。

 

「ウイィ……アー……ホス卿はアンタと同盟を組みたいそうだ」

 

 何という冒涜的な光景であろうか!緑の炎はヒトガタめいた影を形作り、ドロームに応えたのだ!この緑の炎はトゥールスチャ。ドロームと同じ”異世界”出身のプラズマ生命体である。そして、ホス卿とは、トゥールスチャのボスで、当然ながら、”異世界”出身だ。

 

「田吾作がァ。自分で面ァ見せろと伝えんかい。話はそれからじゃぁ」

 

 不機嫌なドロームの言を受け、トゥールスチャは()()()()した。依り代となっている警備員(アンチスキル)は、苦痛のうめき声。当然封殺される。トゥールスチャはヤク中めいて胡乱な視線を漂わせると、壊れかけのラジオめいて不明瞭な声で話し出した。

 

「ウィィィ……アー……面倒だから、嫌。だそうだ。アーアアア……」

 

「どうせ日がな一日、レムリアの悲劇を鑑賞しとんのやろ、あのピンボケ。呼び出さんかい。おどれのようなヤク中を間に挟んどったら、交渉が進まんわい」

 

「ひでェなァー……悪いがそりゃ無理だ」

 

「なぜじゃ。言ってみい。ボケたことほざいたら、殺すぞ」

 

「ヤク……ヤクくれ。ヤク、足りな、グワーッ!?」

 

 ヤク中の緑プラズマ生命体は、突如頭部めいたわだかまりが唐竹割りされ、悲鳴をあげる!そして、おお!見よ!ドロームの右腕を!まるで()()()()()()()()()()のようにカラテカめいて残身の体勢にある!

 

「どういう……つもりだ……!」

 

 わだかまるプラズマの塊、即ちトゥールスチャは、やっとのことで形を整えると、息も絶え絶えにドロームに抗議する。()()()()()()()()()()()()()()()()()が、突如手刀で唐竹割りを放ってきたのは、普通に無礼だからだ。しかし、相手が悪かった。

 

「たわけ。ボケたことほざいたら殺す言うたじゃろ。むしろ今死んどらんことに感謝せぇ」

 

「ウゥゥ……横暴だぞ……ヤク中がヤクを求めるのは、自然な事だ……!」

 

 ドロームの取り付く島もない発言に再び抗議するトゥールスチャであったが、ドロームは無慈悲だった。

 

「あのボケ呼び出せ。今度は瀕死じゃ済まんぞ」

 

「分かった、分かった……」BOMB!

 

 ついにトゥールスチャも観念し、彼のボス、アザト・ホースを呼びだす。彼のプラズマ・ボディに小爆発が生じたかと思うと、小さな緑人魂がゆっくりとドロームとトゥールスチャの間に移動する。そして人魂から、ゆっくりと声が聞こえだした……。

 

「やぁ」

 

「ホス卿。同盟云々の前に、おどれに聞きたいことがある」

 

「何かな?」

 

「ローマで、ワシらの部下燃やしたの、そこのヤク中じゃろ。コイツがヤクがらみの事以外を独断でやるとは思えん。おどれの指示じゃろ」

 

 常人が聞けば、ほぼ間違いなく善人と錯覚するであろう穏やかな声に、しかしドロームは剣呑な態度を崩さない。剣の契約がローマ正教勢力を削り切れなかったのは、恐らくホス卿が関係しているからだ。そして、それは事実であった。

 

「うむ」

 

「……どないなつもりじゃあ」

 

「彼らが生存していれば、もっと悲劇をもたらしてくれるからだよ。笑える悲劇をね」

 

 ホス卿の言うとおり、現在ローマ正教はローマ教皇の座を巡り権力闘争の真っ最中であり、血で血を洗う抗争が繰り広げられている。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そして、それを止めうるマタイ=リースは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……チッ。仁義なき戦いでも見たい気分だったんか、ドチンピラ。おどれのおかげで『剣の契約』の連中は存分に殺せなかったやないけ」

 

 ドロームが言うように、ホス卿は趣味が悪い。()()()()()()()を使ってローマ正教の枢機卿を狂わせ、権力闘争での殺し合いを鑑賞しているのだ。

 

 そして、ドロームは、第三次世界大戦終結時に派手に暴れた鋼龍同盟組織『剣の契約』、『謝肉祭』、『鋳鉄工業』を”異世界”に送り帰している。その時に、『剣の契約』の面々のみが不満げであったのを、ドロームは脳裏に刻み付けていた。

 

 加えて、ホス卿は『鋼龍』の作戦行動に茶々を入れたことを一切謝罪していない。それゆえ、手を組もうというホス卿の申し出に対するドロームの答えは一つ。

 

「面も見せず、ワシらに茶々入れたことにも謝罪せず、同盟の申し出け。ワシも舐められたもんじゃのう……組むわけないじゃろ。タコが」

 

「そんなつれない事を言うなよ。同じ旧支配者のよしみじゃないか、ハイオグー・ヤイ」

 

 何たることであろうか……!今、ホス卿は旧支配者と言ったか!?哀れな”異世界”の考古学者、エミ・タミコの妄想の産物であるはずだった、『恐るべき古々しき者ども』は、実在するというのか!?

 

 そして、ハイオグー・ヤイとは旧支配者としてのドロームの通り名である……!だが、ドロームは『響きが気に入らん』ということで、ドローム・A・ヴィスタの名を使い続けているのだ!それゆえ、他の旧支配者も、彼をドロームの名で呼ぶ。ハイオグーの名で呼ぶのは、空気の読めないホス卿だけだ……!

 

「その名前で呼ぶせいで、余計に同盟を組みたくなくなったわい。失せろ」

 

「そうか、残念だ。どうすれば同盟を組んでくれるんだい?」

 

 死ぬほど図々しいホス卿に対し、ドロームは舌打ちをしながら答えを返す。こういう時のホス卿は、答えを返さないと()()も粘り続ける。基本的にホス卿は隠居老人めいた生活を送っているため、暇人だからだ。

 

「チッ……警備員(アンチスキル)を皆殺しにしたら多少は検討しないでもなかったんじゃがのう」

 

 その言に、人魂越しにホス卿はきょとんとする。ホス卿が一番好きなのはいわゆる自分たちの邪魔をするヒーロー*1が無力感と絶望でのた打ち回る様であり、それを供してくれる警備員(アンチスキル)を皆殺しにする事なぞ考えもつかなかったのだ。

 

「ハ、ハハハハ、ハハハハハハッ!ハハハッ!やはり君は、私の予想を大きく超えてくるなぁ!ハハハハハッ!」

 

「チッ……何が面白いんじゃあ。消えろや。そこのヤク中連れて」

 

 そして、ホス卿は呵々大笑しだした。ドロームは、舌打ちをしながら、さっさと自分の工房から消えるようにホス卿とトゥールスチャに促す。

 

「ハー……ッ、ハー……ッ、ああ、ああ、分かったよ。今度は何故、神を引き摺り堕とすなんて目標を立てたのか、そこの所を知りたいね」

 

 そういうと、ホス卿の声を中継していた人魂は消え、そしてそのすぐ後にトゥールスチャも消えた。残身の体勢を取った後、ホス卿もその部下も去ったことを悟ると、ドロームは工房から出て行った……。

*1
呼び方は重要ではない。悪人の邪魔をしたり、悪人を許容しなかったりする連中全般だ。




ホス卿は本当にろくでもないお方……。

ホス卿の()()()()()()()はすぐ出てきます。
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