とある外道の6人組   作:毛糸ー

72 / 203
1.トラ!トラ!トラ!

――ハワイ・オアフ島――

 

「おい、サッサと行くぞ!キラウェア山も噴火した上、PMCめいた連中も動き出している!負業部隊(ふごうぶたい)は痺れを切らすぞ!!」

 

「ムーブムーブムーブ!!走るぞ!」

 

「やめてよね!ペンは剣より強いけど、大砲で吹っ飛ばされたらどうしようもないんだから!」

 

 上川、ザン・ニン、そしてベニゾメは、ハワイに潜伏していた魔術師の一人、サローニャ=A=イリヴィカを確保し、一路ハワイ空港に向かって走っていた。その遠景では、キラウェア山が大噴火し、トライデントなるPMCが兵力を展開している。

 

 当初、この三人組はハワイ空港で踊り狂う魔術師、サンドリヨンを確保する腹積もりであった。しかし、確保しようとした矢先、ザン・ニンが「踊り狂ってる程度で『グレムリン』の陰謀なのか?奴は目をそらすための要因なのではないのか?」と言い出したため、労力を割いてまで捕獲する価値はないと判断した。

 

 そしてハワイに潜伏しているというもう一人の魔術師、サローニャ=A=イリヴィカの確保に向かった。しかし、サローニャはハワイにある米軍基地にいたため、潜入に時間を取らされた。

 

 無論、ハワイは全て焦土と化す前提で行動しているため、強行突破と言う線も取れなくはなかった。しかし、ハワイが焦土と化す前の僅かな時間に、所属不明集団がハワイ米軍基地に押し入ったことがアメリカ本国にバレれば面倒なことになる。すぐさまその所属を探らんとするだろう。

 

 そのうちの一人が学園都市のジャーナリスト、別の一人がタタラグループのエージェントだとバレれば、面倒は二倍増しにもなろう。現職大統領は大企業による不正のもみ消しを許容する男ではない。『反学園都市サイエンスガーディアン』に妨害が起きることも考えられる。

 

 それゆえ、ばれないように基地へ潜入するために労を尽くしている所、基地が突如混乱状態に陥った。それに乗じて基地に侵入したが、サローニャは逃げた。正確には、キラウェア山を噴火させるための『起爆剤』を積んだ飛行機に乗って基地を去ったのだ。

 

 ドロームを海外通信で叩き起こし、『盗み見』で探らせたサローニャの位置を先回りして確保したはいいものの、その直後にPMCによる砲撃・侵攻が始まった。いつ負業部隊(ふごうぶたい)の攻撃が始まってもおかしくはない……。

 

――ハワイ近海・負業部隊(ふごうぶたい)潜水艦――

 

 ハワイ近海に、負業部隊(ふごうぶたい)に乗っ取られた南米某国の潜水艦が潜伏していた。無論、これからのハワイ攻撃のためである。負業部隊(ふごうぶたい)が特別に作らせた潜水艦のため、優に100名以上の兵士が乗り込める仕様だ。

 

 現在その操縦室で、他の兵士よりもラインの多い軍服を着た2人の男は、そわそわしながらうろついていた。彼らは晴病助(はれ やみすけ)軍曹と晴累九朗(はれ るいくろう)軍曹。坊主頭の野蛮人面をしたそっくりな顔をした彼らは、更にラインの多い軍服を着た、浪人めいたアトモスフィアの男の方を見た。

 

 彼は佐々木甲次郎中尉。今回のハワイ襲撃の総指揮官である。甲次郎中尉は細長い目であっても分かるほどにウンザリとした様子で、うろつく二人の軍曹を注意する。

 

「……そんなにうろついたところで出撃は早くならんぞ」

 

「しかし中尉殿、本来なら朝いちばんで襲撃が始まるはずだったでしょう!それを『鋼龍』とかいう連中のせいで今の今まで攻撃を延期とは……!」

 

「その通り。『グレムリン』の胡乱魔術師を確保し出国したという連絡がない以上、奴らが失敗したと考えるのが道理です。もう攻撃を開始してしまいましょう」

 

 背格好も髪型も同じ双子の二人をおかしそうに見た後、甲次郎中尉はゆっくりと話し出す。

 

「落ち着け貴様ら。連絡がないからと言って彼らが失敗したとは限らん。それに、『鋼龍』とやらは甘粕少佐殿の同盟相手だ。粗略に扱う訳にはいかん」

 

「しかし……!!」

 

 なおも反論する右目傷の病助軍曹をなだめるため、言葉を探す甲次郎中尉。しかし、レーダーを見ていた負業部隊(ふごうぶたい)隊員が大声で割り込んできた。

 

「なっ……!なんだ、あの軍艦は!?米軍の船ではありません!!……中尉殿!!攻撃の許可を!!奴らに先を越されるわけにはいきません!!」

 

「「……中尉殿?」」

 

 事ここに至っては、甲次郎中尉は決断する他無かった。恐らく、『グレムリン』とやらが負業部隊(ふごうぶたい)より先にハワイ攻撃を仕掛けたのだろう。……そんなことは許すわけにはいかない。

 

「……急速浮上用意!総員に伝達!戦闘準備!これよりハワイ攻撃に入る!!そして潜水艦操縦士!我らの突撃に際しては、巡航ミサイル『神風』で支援せよ!」

 

 二人の軍曹だけではなく、操縦士も残忍に笑う……!戦争の、始まりだ……!

 

――ハワイ・オアフ島――

 

KABOOOOOOM!KABOOOOOOM!

 

 魔術師を抱えて軍用車に乗る三人組の近くに、ミサイル着弾!PMCが用いるものとは違い、焼夷弾である!オアフ島の市街を焼き尽くすことしか考えていない負業部隊(ふごうぶたい)のものであった……!

 

「……ついに始まってしまったか。我々はここで終わりか……」

 

「やめてよね……!ここで私は死にたくないわ!」

 

(生き残るためには、どうすればいいんだ!?……落ち着け、おれたちの手札と奴等の事情を考えれば自ずと生き残る道は見えるはず……!……そうか!コイツは魔術師だ……!)

 

 絶望的な表情をした他二名に対し、ザン・ニンは必死に思考を巡らせていた。そして、見つけた。生き残るための道筋を。

 

 負業部隊(ふごうぶたい)は本来、科学・魔術の双方を利用して第二次世界大戦で大日本帝国を勝利に導こうとした部隊であるが、魔術の利用は遅々として進まなかった。彼らの本性を見透かした日系魔術結社達が協力を拒んだためである。

 

 そのため、負業部隊(ふごうぶたい)は自前の科学技術やファシスト党・ナチス党の残党から奪った技術による兵力拡充を進めていた。それは実際、魔術めいた技術の集積であったが、魔術そのものではない。加えて、魔術に関する研究もろくに進んでいない。

 

 そこに、自分たちがこの魔術師、つまり貴重な魔術の研究資料を献上すればどうなるか?魔術師の命を人質にとれば、命を取らずにいてくれることはほぼ確定するだろう。彼らの研究でも、魔術師の死体を研究しても何の意味もないという程度の知見は得られているからだ。

 

「おい!おれについてこい!生き残れる目があるぞ!」

 

 ザン・ニンはそこに思い至り、絶望した様子の他二人を鼓舞し、爆撃を避けながら負業部隊(ふごうぶたい)の隊員を探す……!




はい、えー……時間切れです。精々逃げ回ってもらいましょう。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。