とある外道の6人組   作:毛糸ー

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いきなり人が死にまーす!!ご注意くださーい!


新約 第3章:バゲージシティ殺戮大会『ナチュラルセレクター』
0.選手入場


――――『ナチュラルセレクター』。それは『反学園都市サイエンスガーディアン』が開催した格闘大会。今まで日の目を見ずにきた技術を掘り出し、『反学園都市サイエンスガーディアン』が、学園都市と互する力をつけるための大会である――――

 

――バゲージシティ・多々羅道雄居室――

 

「いよいよですな」

「ああ。いよいよだ」

 

 多々羅は側にいた護衛イワノフの言葉に同調する。兵力・設備など、諸々心配することはあれど、ついに学園都市と(一応は)互する立場となった。そのことに多々羅は深い感慨を覚えるのだ。

 

 元々、多々羅はタタラグループを大きくしていく過程で、「グループをどれだけ大きくしようと学園都市には敵わない」という無情な真実に気付いてしまった。それゆえ、得も言われぬ無常を覚え、グループの拡大を止めてしまったのだ。

 

 その矢先に、()が現れた。包帯を巻き付け、ボロボロの燕尾服と山高帽を纏い、葉巻を咥えた魔物、つまりドローム・A・ヴィスタが。二人の間にどのような約定が交わされたかは定かではないが、碌でもないものであることは確かだ。

 

 縮小傾向であったタタラの非合法実行部隊が再び拡大に転じ、加えて恐るべき技術が次々とタタラに流入したのだから。今回の『ナチュラルセレクター』と()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()との決戦は、それの総決算と言ってもいい。

 

 バゲージシティの本来の住人を招き入れて肉壁とし、『鋼龍』『目覚め待つ宵闇』という戦力をも雇い入れ、異形の技術を利用したタタラと、最新科学の粋を集めた学園都市との決戦が、今始まろうとしていた……。

 

――バゲージシティ・地下施設用リフト入り口前――

 

 『反学園都市サイエンスガーディアン』の大部分の首脳部は、地下施設に集まっている。いかにもな地下への入口をしたゲートの先に、その地下施設へのリフトがある。が、それはダミーだ。このリフトは選手や観客など、一般人向けの避難シェルターへつながるリフトである。

 

 もし学園都市からの襲撃者たちがこのリフトにまんまと引っ掛かり、虐殺を繰り広げた日には、学園都市を糾弾する準備が整う。これは無論、タタラの無慈悲な采配によるものである。

 

 本当の首脳部が集まる地下施設の入り口は、そのリフトの隣にある壁に偽装した隠し扉から入ることができる。その前には、ザゾグが座り、ちょうど入り口をふさぐ形になっている。本来ならばあり得ぬことだ。

 

 実際、彼はドロームや多々羅に無理を言ってこの場にいる。まるで、何かを待つように。そしてその背中からは、ドロームやトルネンブラ、トゥールスチャといった連中から立ち昇るのと同種の気配を纏っていた……。

 

――バゲージシティ・17番ゲート屋内スペース――

 

 砂漠傭兵めいた襤褸を纏う二人組を、ゲテモノ揃いの選手たちは避けて通る。ちょっかいをかけた選手が先程半殺しにされかけたからだ。その選手は二人を止めたタタラの不気味な兵士によって医務室へ輸送され、今はいない。

 

 だが、血痕が床に張り付き、この二人組がどれだけ狂暴なのかを選手たちに知らしめていた。そしてそのうちの一人は愚かな選手の喉元を食いちぎった肉をガムめいていまだ嚙んでいるとなれば、他の選手が近づくはずも無かった。

 

「……おい。ヨゴレ。やりすぎだったんじゃねぇのか」

 

 二人組の片割れがいまだ肉片をくちゃくちゃ噛むもう一人に注意する。彼の名はニタリ。ヨゴレと同様、『鋼龍』からこのバゲージシティに派遣されたゴロツキの一人。死体漁り、あるいはスカベンジャーと呼ばれる者たちの中でも狂暴な連中だ。

 

 彼ら二人組ともう一人は、”異世界”にて死体漁りに励んでいる所を、『金になる死体候補がある』とドロームから言われて”この世界”にやってきたのだ。顔に生々しい傷跡がいくつもあるヨゴレが、肉片を飲み込んでニタリに反論する。

 

「どうせオメーもあのアホの肉を喰い漁るつもりだったんだろ。文句言うな」

 

 彼ら死体漁りはスラムの死体から所持品などを剥ぎ、それを売り払うのを生業としている。しかし、彼ら二人組と()()()()は、食人改造手術*1を受けているため、共食いをしても死なない。それ故、死体を()()()()()利用できる。

 

 彼らは実際、先程彼らにちょっかいをかけてきたクソボケを始末し、()()()()()()()利用しつくすつもりであった。そこをあの()()()()()()()()()の兵隊が静止してきたため、ヨゴレの機嫌は非常に悪かった。

 

「大体よぉ、こういう、大規模な施設の防衛なら『人形師』一人で十分だろうが。それをオメー、オレ達やザン三兄弟やら、この”訳の分からん世界”に不慣れな奴をいっぱい派遣するのはどういう訳だよ?」

 

 懐から取り出した肉をクチャクチャ音を立てながら喰らうニタリは、歯軋りしながら涎を垂らして選手たちを睨むヨゴレにドン引きしながら返事を返す。選手たちはさらに遠巻きに彼らを視界に入れないよう、各々の控室に向かっていく。

 

「感情を統一しろよ……。あー、長老も言ってただろ、この大会にオレ達が関与してるのをバレたくないからだって」

「ああ!?オメー、そんなこと言ったら」BEEP!BEEP!

 

「緊急アナウンスです、緊急アナウンスです。学園都市はバゲージシティへの攻撃準備を行っています。予測攻撃開始時刻は1時間後です。選手・並びに観客の皆様は、今すぐ地下シェルターへご避難ください。落ち着いて、係員の指示に従ってください。」

 

「繰り返します。学園都市はバゲージシティへの攻撃準備を行っています。予測攻撃開始時刻は1時間後です。選手・並びに観客の皆様は、今すぐ地下シェルターへご避難ください。落ち着いて、係員の指示に従ってください」

 

 学園都市に居るドロームからのテレパシーによる連絡で、いち早く学園都市の襲撃を察知し、サイレンが鳴っている。選手たちは半ばパニックに陥りかけたが、攻撃まで1時間あると聞いて落ち着きを取り戻したようだ。

 

 そして、二人組は残忍に笑った。丁度、彼らがいつも組んで仕事をする()()()()も、外からやってきた。彼の名はオオセ。他の二人と同様、砂漠傭兵じみた襤褸を纏うが、その顔面は昔工場廃液を顔面に浴びたこともあり、謎めいたヒダが多く生えている。

 

「オオセ、来たか!今までどこにいたんだよ!」

「外……ウウウ……」

「オオセ、喜べ。一時間後にこん中にいる連中は、みんな食い漁っていいらしい」

「分かった、ニタリ……」

 

 収穫の時間だ。殺して奪って、皆殺し。死体を漁って、金目の物は全部奪って、肉は食い漁ろう。

 

――バゲージシティ・超高層ホテル最上層トイレ――

 

ブチリ。ドサッ。

 

 サイレンの音が響く中、『グレムリン』の魔術師、ウートロガルザロキは首を捻じ切られて崩れ落ちた。下手人は中肉中背の明らかに筋肉の付いたゴロツキ、ザン・コクだ。

 

 ザン・コクはザン三兄弟*2の末弟であり、兄弟の中で一番粗暴で凶悪なスラッシャーである。長兄のザン・ギャク、次兄のザン・ニンもバゲージシティにおり、学園都市の襲撃に備えている。

 

「さぁーて……このカスの首を持って、ストライニコフとか言う奴を脅せばいいわけだな。んで、その後で兄貴たちに合流すればいいと」

 

 ザン・コクはゆるゆるとウェストランド=ストライニコフの部屋に向かう。それは、『鋼龍』の面々の殺戮への抵抗の無さを暗示するような足運びであった……。

*1
アホ共が技術発展に尽くしたため、スラムの有力な住人ならばそこそこ上等な手術を受けられる程度には手術金額が値崩れを起こしている。

*2
ザン・ギャク、ザン・ニン、ザン・コクの三名を指す。




※2023/02/21 修正。ザン三兄弟は全員来てました。
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