――バゲージシティ・8番セーフルーム――
「で…そこの盗み食い三人組にアンタの作った装置を持たせるって訳か……」
「おいおい、大丈夫かね?逃げやしないのか?」
ザン・コクが死体漁り三人組を呆れた目で見やると、アーランズが懸念を見せる。先刻、アーランズ達を見捨てるかのように逃亡した死体漁り三人組は、偶然このセーフルームを見つけ、携帯食料を食い漁っていたのだ。それを見つけた灰にボコボコにされ、三人組はふん縛られたのだ。
今回のクソ音ブチ殺し作戦には、この盗み食い死体漁り三人組がそこそこ重要な役割を担う。アーランズとしては、危険を察知して自分達だけ避難し、『目覚め待つ宵闇』を見捨てたこの薄情三人組に作戦の重要部分を任せることを不安に思わずにいられなかった。
そのアーランズの様子を察してか、縛られた3人のうち、もっとも凡庸そうな顔をした男が言う。
「……この作戦に協力すりゃ、盗み食いがチャラになるんだ。俺達もそのチャンスを逃すほど馬鹿じゃない」
その発言を聞いたザゾグは、やはり傲岸にうなずく。『クソ音ぶち殺し作戦』の開始だ。
――バゲージシティ・廊下――
「クソッ、マリアン、雲川!大丈夫か!?」
「先生だって走り通しでしょう!?どこかで休まないと!」
木原加群は、突如頭痛を訴え気絶したマリアンを背中に背負い走っていた。その傍には雲川がいる!あの第一食糧工場から逃れた彼らは、マリアンを治療するための医療施設を探していた。その彼らに、突如悪意の籠ったノイズめいた声がかかる!
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当然読者諸君らにはこの声の正体は分かっていよう!クソ音こと、トルネンブラである!目を見開き、呆然とした様子の雲川とは異なり、加群は憎悪を滲ませてクソ音を糾弾する。
「き、さま……っ!!」
[[n~? ソノ荷物。重 いデショウ? 軽く死て アゲマスヨォ!!]]
クソ音は狂笑し、殺人音波をマリアンに集中せんとす……!だがそれに呼応するように、閉じられていたマリアンの瞼が開く……!!
当然ながら、奇跡が起こっているわけではない。廊下の物陰にいるザン三兄弟の長兄、ザン・ギャクがマリアンに打ち込んだノロイを利用し、マリアンを遠隔操作しているのだ。これも、『クソ音ブチ殺し作戦』の一環である。
『クソ音ぶち殺し作戦』の手順はこうだ。
①ザン・ギャクがマリアンにぶち込んだというノロイを利用し、マリアンを操作。ノロイを暴走させ、木原加群と雲川鞠亜ごと、マリアンを抹殺。
②”玩具”の木原加群と雲川鞠亜が死んでクソ音が狼狽している隙に、死体漁り三兄弟に持たせたザゾグ謹製『対クソ音用殺人電波発生装置』を使い、クソ音を排除。
③念のため学園都市の部隊の生き残りを掃討する。
作戦内容を思い返しながら、ザン・コクは残虐に笑う。このバゲージシティを色々と引っ掻き回し、自分達が学園都市のクソ共をブチ殺せない一因となったクソ音を始末できるのはもちろん、クソ『グレムリン』をも始末できるとは。
「クククク。素晴らしい作戦だよなぁ。ニンの兄者。オレが退屈する原因を作りやがったクソ音に加えて……『グレムリン』のカスも、長老に楯突くクソジジイの懐刀も殺せる。ザゾグ・ザンリックさまさまだ。作戦の成果は3倍、俺らは1000倍旨い飯にありつくって寸法よ」
「……貝積継敏の懐刀は雲川芹亜だ。あの胡乱ゴスメイド風小娘の雲川鞠亜ではない」
「それにしても、成果は2倍、俺らの飯は100倍旨くならぁ」
ザン・コクとザン・ニンは下らない話に花を咲かせる。今は彼らの動く時ではないゆえに。その彼らの雑談に耳を一切傾けず、ザン・ギャクはノロイの操作に集中する。奴らは突如動き出したマリアン=スリンゲナイヤーに驚いている。
殺すか。そう淡々と考え、ザン・ギャクがマリアンのノロイに力を注ごうとしたその時!
ビ キ ィ ィ ッ ! !
空間にひびが入ったかのような音が走り、そして実際に、何もないはずの、ザン三兄弟から見て木原加群らよりも更に後方の
さらにザン三兄弟にとっての凶事は続く。あの亀裂音を聞いて何を勘違いしたか知らぬが、死体漁り三人組が廊下に躍り出、『対クソ音用殺人電波発生装置』を当てだしたのだ!
[[アバーッ!?アバババババーッ!?]]
「!000!0!000!!00!!000!!0」
ザン・ギャクの凄まじい殺気を感じ取り、死体漁り共は盛大に舌打ちしながら引っ込んだが、トルネンブラは瀕死!このままでも死にゆく、無惨な有様と化していた!更に混乱の極致にいるゴロツキ共の横を、マリアンと雲川鞠亜を抱えた木原加群が走り過ぎる!
「何なんだ!?どういうことだ!?さっぱり分かんねぇぞ!?教えてくれニンの兄貴!」
「オレにわかるか!!クソッ!?何が起こってやがる!?」
「説明してもらおうかザン・ギャクさんよォッ!あの殺気、何のつもりだァッ!」
[[サヨナラ!]]
「黙れヨゴレ!走っていった奴らが見えなかったのか!?俺達は先走っちまったんだよ!!」
完全に浮足立ったゴロツキ達。彼らを正気に戻したのは、今の今までボーッとしていたオオセが放った一言であった。……その影で爆発四散した邪悪なる旧支配者に気付くものは、誰もいなかった。
「ウー……アアー……ノロイ、消えた……??変な感じも、ない、ぞ……」
ノロイが消えたという言葉を聞き、硬直する一同。中でも、『グレムリン』惨殺を楽しみにしていたザン・コクは、その言葉が聞こえてきた途端、あからさまにキレた。
「……どういうことだオイ」
「あのガキ、来てから……」
そう言ってオオセはツンツン頭の小僧を見やる。そして言葉を続ける。
「ノロイも……変な感じも……消えちまった」
「……ア?つまり……あのクソ『グレムリン』爆殺大作戦は……」
「失敗、だな」
それを聞いて、ザン・コクは到底文字に起こすことができぬ怒声を吐き散らかし、ザン・ニンは得物のタタミ針を……後方に、投げた!タタミ針は誰にも当たらなかったが、クソ共は炙り出せたか。
「……何の用だ?我々は機嫌が悪い。邪魔をするようなら……殺す」
ザン・コクの中では、もう作戦の趣旨が入れ替わってます。