とある外道の6人組   作:毛糸ー

90 / 203
闖入者に次ぐ闖入者。

……そもそも『6人組』陣営のボスが異世界からの闖入者でしたね!


12.クソ闖入者ズ

――バゲージシティ・廊下――

 

「……まさか気付かれるとは」

 

 ザン・ニンの誰何に応じて現れたのは、小学生低学年めいた外見をした少女めいた女と、青い動きやすそうなドレスに身を包んだ、格闘家めいたアトモスフィアを纏った女。低学年女がタタミ針を投げたザン・ニンに驚くように言う。彼がにらんだ通り、見てくれ通りの年齢ではないようだ。

 

「だから言ったでしょ?コイツ等をただのゴロツキだと見てかかると、痛い目見るって」

近江手裏(おうみしゅり)にサフリー=オープンデイズだな。ナチュラルセレクターの選手がなぜここにいる?」

 

 ザン・ニンが言うように、彼女らはナチュラルセレクターの選手であり、本来なら地下シェルターに避難しているはずの者達である。青ドレスの女、サフリーが言う。

 

「いや、ちょっと……利益優先のMIBをぶちのめしたついでで」

「ニンの兄貴。コイツ等もう、殺しちゃわねぇか?」

 

 青ドレスの女が言い終わる前に、ザン・コクが殺意に濁った目玉を闖入女二人に向けながら言う。ご丁寧にショットガンへの装填ももう終えている。ザン・ニンが気付いて止めようとするが、ザン・コクがハヤイ!

 

「イヤーッ!」「……ごぼっ?」

 

 金属めいたきらめきが走ったかと思うと、サフリーの腹にショットガン銃剣が突き刺さる!ザン・コクはそれを振り払い、追い打ちめいて踏みつけると、近江手裏に向き直る。ザン・ニンが凶行を咎めんとするが……

 

「おい!?正気か!?おれ達は一応、ここの警備でいるんだぞ!?ナチュラルセレクターの選手を殺すのはご法度だ!!そこを分かっているのか!?」

「……うるせぇな、ニンの兄者。コイツ等全員、『グレムリン』の内通者ってことにすりゃいいだろうが。ギャクの兄貴はもう殺ってるぜ」

「何っ!?」

 

 ザン・ニンは慌てて後ろを振り向く。だが、そこにあったのはツンツン頭の小僧を壁に押し付け、今にも絞め殺そうとするザン・ギャクの姿だった。もうすでに殺されていないことにかすかな安堵を覚えたが、明らかに観客然とした小僧を殺させるわけにはいかない。

 

 たとえ、それが自分達の計画を根本からブチ壊しやがった筋金入りのクソ野郎だとしても。顔面を覆う柿渋染めの布の下で青筋を浮かべながらも、ザン・ニンは兄を止めんとする。

 

「兄貴!そいつは観客だ!殺したら洒落にならんぞ!」

 

 だが、ザン・ギャクはいつの間にか取り出したらしき葉巻の煙をくゆらせながら、ツンツン頭の小僧の喉から手を放そうとはしない。殺す気はなさそうだが……。ザン・ニンは舌打ちし、すでにショットガンを撃ちまくるザン・コクを止めに走っていった。

 

 

 ザン・ニンが走っていくのを横目で見ながら、ザン・ギャクは目の前の小僧を検分する。彼の率直な感想としては、ツンツン頭のこのガキは取るに足らぬ小僧でしかない。”異世界”で何十匹も殺してきた、正義感だけが取り柄、かつ身の程知らずのカスの一匹にすぎないだろう。

 

「だと0110いう10のに1チョロ1010と10苦労な事1011」

 

 ザン・ニンが走っていった方向とは逆を見ると、そこには『右方のフィアンマ』がいた。元ローマ正教の最暗部『神の右席』のリーダーにして、恐るべき魔術『聖なる右』の使い手。だが現在はその右腕は切り落とされている。

 

 そのフィアンマは現在、恐らく隠密の何かを使いながら、背中から殺気を立ち昇らせながら睨んでいる。無論、ツンツン小僧の首を絞め、気絶に追いやったザン・ギャクを、だ。髪から服まで赤い男が、ザン・ギャクに命令めいて吐き捨てる。

 

「そいつを放せ」

「嫌だ01と言01たら01?0」

「……分かり切ったことを聞くなよ?俺様はかなり、頭にきている……!」

 

 そういうと、フィアンマの後ろに朧な巨大右腕の幻が出現する。ザン・ギャクはその虫めいた三白眼をゆらゆらと揺らしながら考える。この男は問題なく殺せるだろう。だが、もう彼は何もかも面倒すぎて、さっさとこのクソ騒ぎを終わらせて寝たい気分になっていた。

 

 先程から、弟二人と小娘が立てていた喧騒が止み、何者かが後ろからやって来るのを悟った状態では、猶の事だった。

 

「010100本11来なら011101殺す01所だが命1011した010貴様を殺し01上で更なる11面倒と01殺し1101たい気分で11ない010011見逃し0110る00この0111の身柄持01て消10ろ」

「……まさか私に気付いているとは。やはり『鋼龍』は油断ならないね」

 

 然り。いみじくもザン・ギャクが指摘した通り、金髪の青年がいる。ザン三兄弟の下二人とサフリー、そして近江が倒れたのはこやつの仕業であろうか。青年の驚きの声に構わず、ザン・ギャクは今の今まで首を引っ掴んでいたツンツン頭のガキを放した。

 

「イヤーッ!0」

「がっ……!?」

「「!?」」

 

 ホッと息をついたフィアンマと、油断なくザン・ギャクを見据える青年の前で、彼は恐るべき行動に出た。電撃的な速さでグラディウスを抜き放つと、そのままガキの右腕、今回のプランが失敗した要因を断ち切ったのだ!

 

 ザン・ギャクは攻撃的行動に移ろうとした二人の()()()()しながら、ツンツン腐れ小僧の右腕の断面から溢れ出した()()を引っ掴み、彼が()()()を悟って暴れる()()を、容赦なく打擲する。

 

「イヤーッ!0イヤーッ!0イヤーッ!0……イヤーッ!0イヤーッ!0イヤーッ!0」

 

 苛立ちゆえか、それとも気紛れかは、ザン・ギャクの表情からはうかがい知ることは出来ない。満足したのか、興が覚めたのかは分からぬが、右腕から出てきた()()を打擲し終えた彼は、その場でくの字に折れ曲がったフィアンマと金髪を容赦なく見据えると、歩いて消えて行った。

 

 

 ……これをもって、バゲージシティでのバカ騒ぎは終わった。『グレムリン』の面々はザン・ギャクらが倒れた選手やバカ兄弟を回収している隙にバゲージシティから消え、学園都市の科学者が一人ザゾグの配下に吸収され、一人はサイエンスガーディアンの人質と化した。

 

 ただし、学園都市の襲撃を実質跳ね除けたと言ってもいいサイエンスガーディアン側も無傷ではない。第一食糧工場が派手に吹っ飛び、加工できない謎の白い物質が場に残された。緒戦は互いに痛み分けとなったと言えよう。

 

 タタラにとっては学園都市を誘き寄せるための疑似餌でしかなかったナチュラルセレクターはつつがなく開催され、優勝者が決まり、出場者全員が持つテクノロジーが吸収された……が大したものはなかった。

 

 ……そしてその更に数日後、学園都市の使者がバゲージシティを訪れた。




……それにこのバカ騒ぎを閉じるきっかけも闖入者。なんてこった!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。