とある外道の6人組   作:毛糸ー

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はい、えー……ノープロットの一端覧祭(ひとはならんさい)編、スタート!
ある一つの事項以外ノープランです。


新約 第4章:シージ・トゥ・ザ・ジャンキー・ビューティー
0.”街の裏側”で始まる祭りの準備


――天体水球(セレストアクアリウム)バックヤード――

 

 現在、学園都市は一端覧祭(ひとはならんさい)の準備期間の真っ最中であり、学生たちが街中、あるいはその外を走り回り、何とか各々の出し物を当日に間に合わせようと奮闘している。

 

 ここは、そんな喧噪とは無縁の天体水球(セレストアクアリウム)バックヤード。ここにいる3人は、ドロームから送られてきた謎めいた指示を前に、頭をひねっていた。

 

『酒・煙草・違法薬物類(大麻や覚せい剤・コカインなど)をありったけ用意しろ』

 

 

「……楽な仕事でいいんだが、こりゃ何が狙いだ?」

 

 指示内容を見ながら首をかしげるのは、佐久辰彦。この一党の副リーダー的立ち位置の、熊のような大男である。

 

「あいつらチンピラの集まりなんでしょ?なら、やることは決まってるじゃない。ドラッグパーティーよ」

 

 露出の多いチャイナドレスに身を包み、頭にデフォルメクラゲのバッジが付いたテンガロンハットをかぶるのは、ベニゾメ=ゼリーフィッシュ。卓越した狙撃のワザマエを併せ持つ、胡乱ブラックジャーナリストである。彼女の言葉も、()()()()()()()()()()()に対しては十分以上に当てはまるものであった。

 

 しかし……

 

「いや、あいつらがドラッグパーティーなんてやるとは思えない。お前は知らないかもしれないが、奴らはヤクでの陶酔より、暴力の愉悦の方が大好きな連中だぞ」

 

 あからさまに凡庸な顔をした男、山手が言うように、ドローム率いる『鋼龍』の連中は一端覧祭にドラッグパーティーをやるほど能天気ではない。そして山手が言うように、この一党に加入して日が浅いベニゾメは、実際『鋼龍』への理解度が足りていない……!

 

「じゃあ、あんたたちは『鋼龍』の連中が何を考えてるのか分かるっていうのかしら」

「うぐっ……そういう訳ではないが……」

「……奴らの無茶を見てきて、その思考回路を推し量る方が無理だっての」

 

 ベニゾメの切り返しを聞き、言葉に詰まる佐久と山手。だが、バックヤードのスピーカーから、声が流れ出したために、彼ら彼女らはひとまず黙る。このスピーカーの主は蠢動俊三。諸事情あって脳をシャチに移植した非道科学者で、彼らのボスである。

 

『あれこれ言っておっても仕方ないだろう。奴の指示をこなし、その上で奴らが何を企んでいるのか見据え、今後の振る舞いを考えるとしよう』

 

 蠢動俊三の言を受け、三者はそれぞれ動き出した。不可解な指示をこなすために。

 

――ストレンジの九龍城:どこかの廊下――

 

 ストレンジの九龍城の廊下は、雑然としている。それぞれのゴロツキ共が各々の部屋に入りきらなかった物が投げ出されているのだから。その鉄パイプやら、謎めいた段ボールやスーツケースやらが散乱する廊下で、ドロームと賽は話し合っていた。

 

「……()()を呼ぶって、本気ですか?」

 

 賽が言う、()()とは、ザン・ギャク(別名:宇宿粛々)が所属している傭兵結社の構成員達のことである。そしてこの傭兵結社の人員は、『鋼龍』の面々をしてイカレている連中ばかりなため、賽が”この世界”に()()を呼ぶのに難色を示すのは至極当然と言えた。

 

「うむ」

「アイツら、俺達以上に自重って言葉を知りませんぜ」

「そうよのう。だから、良いのさ」

「ハァ……?」

 

 賽が困惑するのをよそに、ドロームは思考を巡らす。またぞろ学園都市に紛れ込まんとするやがて来る『グレムリン』、引いては十字教勢力との全面戦争。そのときに必ず()()は役立つ。クツクツとほくそ笑むドロームを横に、賽は”異世界”にいるクソ胡乱傭兵共を呼び出しに行った……。

 

――ストレンジの九龍城:チンピラの部屋――

 

「……ほう。奴らはよくやっているようだ」

 

 キラーBは一端覧祭の準備の片手間に新聞を読んでいた。英字新聞だ。ドロームは統括理事会の権限を存分に悪用し、外と内との交流を活発に行っている。余の者らは手出しできない。邪魔をすれば血が流れるからだ。それも、大量の血が。

 

「おやおや、本国はテロリストに右往左往か。純粋な武力でやってきている相手に必要悪の教会(ネセサリウス)は手を出せんしな。どうするつもりなのやら」

 

 脇からその英字新聞を見るアーランズが言うように、記事の内容は『反グレートブリテン及び北アイルランド連合王国同盟』なる犯罪結社がイギリス・あるいは旧イギリス植民地内で起こした事件についてである。

 

 この犯罪結社は、第三次世界大戦後に急激に成長し、イギリスの抱える内憂の一つと化した。主な活動はイギリスでの破壊活動。活動資金は脇の甘い国のハッキングや国際特殊詐欺・傭兵活動によって賄われている。魔術を使用しない、()()な犯罪結社と言っていい。

 

 ……英明なる読者諸君ならもう察しているかもしれないが、この秘密結社はキラーBが設立に携わり、負業部隊(ふごうぶたい)が技術提供などの支援を行っている『6人組』フロント組織である。その活躍ぶりに口角を吊り上げ、アーランズとキラーBは一端覧祭でのシノギの準備に戻っていった……。

 

――ストレンジの九龍城:食堂――

 

「オイィ……聞いたかァ!?」

「うるせーなおい!……で、何だ?俺は何も聞いてねェぞ」

 

 いつでもうるさい多面体ヘッド『人形師』のバカでかい声にいらつくアンドレ。無造作に振るわれた腕を回避した『人形師』は、引き続きハイテンションでまくし立てる。

 

「オイオイオイオイオイオイオイオイ……そんなんで大丈夫かァ、アンドレエエエェェェッ!お前と因縁の相手が来るってのによォ……!!」

「あ?因縁?誰だ?」

 

 因縁の相手と言われても、絞り切れぬ。アンドレは実際、”この世界”で散々暴れ散らかしており、血祭りに上げた者も両手どころか足指を合わせても足りない。怪訝な顔をしたアンドレに、悪魔的満面の笑みをした『人形師』は高らかに告げる。

 

「シルビアって聖人と……オッレルスとかいうクソ胡乱野郎だぜエェェッ!!……オマエ、詳しいだろうが」

 

 アンドレはそれを聞いて、鉄仮面で隠れた口元を残忍に歪める。シルビアとは、彼が仕留め損ねた聖人の女であり……オッレルスは彼がシルビアを仕留め損ねた原因そのものといっていい男である。特に、オッレルスの方はバゲージシティにも確認されている……!

 

「『グレムリン』に因縁の奴らかァ……!一端覧祭は楽しいことになりそうだなァ、おい」

「クククククククッ……。よぉく覚えとけアンドレ。『祭』ってついてる行事で、楽しいことにならねぇ行事なんざァ、存在価値がねぇんだよオォォォオォォーーーーッッ!!!」

 

 食堂で隣り合う両者はともに、来たるべき一端覧祭の日のために、邪悪な企みを巡らせ始めた……!

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