とある外道の6人組   作:毛糸ー

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1.良い計画は、邪魔者の排除から

――第七学区:ハンバーガーショップ――

 

 あるファストフード店の店内に、あからさまに怪しい男が一人いた。男は背中にゴルフクラブがいくつも入った返り血の付いたゴルフバッグを背負い、不機嫌そうに何かを待っていた。周囲の客がそれを気にした様子はない。男は隠密の心得があるからだ。周囲に同化し、目立たないようにする術。

 

 男の正面にある席には、同じく隠密の術を使っている者がいた。恐らく上質な布であったろう黒い襤褸をローブめいて纏い、狂気しかない視線を漂わせ、残忍に笑っている。奴の名は東条猩々。ドロームが呼び寄せた傭兵の一人にして、『飛び猿の猩々』なる異名の持ち主。

 

 その猩々は現在、注文したフライドポテトを貪り食っていた。明らかに胡乱な格好をしていることがどうでもよくなるほどに、店内に溶け込んでいる。それを見て男は呆れていたが、()()()()()が来た。ツンツン頭の小僧と……金髪クソチャラチャラ魔術師である。

 

 ツンツン頭の小僧は、幾度も『鋼龍』、ひいては『6人組』の邪魔をしてきたガキ、上条当麻であり……金髪野郎の方はトール。『グレムリン』の直接戦闘担当の魔術師であり、戦争請負人の異名を持つ凄腕だ。二人は同じ机に腰かけると、おもむろに話し合いを始める……!

 

 座る男と猩々にとって、二人の話の内容はそう重要ではない。ただチョロチョロと二人が動き回るのが邪魔なだけだ。ドロームは男と猩々に、『チョーシこきのガキ共に恐怖を植え付けろ』と直々に指示を出した。まだるっこしい。殺せばいいだろうが。

 

 男が考えを巡らす間にも、二人の小僧は色々と話をしている。その様子を、猩々は面白そうに見ている。……読者諸君は『飛び猿』という異名から想像できないかもしれないが、この猩々と言う傭兵、解体キチガイであり、手当たり次第に解体したがる悪癖を持つ。

 

 この悪癖は生来のもので、親から捨てられ寺に預けられた後も、この悪癖が止むことは無かった。……そして、その狂気はある日、地獄の極彩色花めいて花開くこととなる。

 

 男の修行僧達がある日、他の寺から来た美人の尼公に懸想していた。だが、猩々にとっては意味が分からなかった。所詮肉と骨、そして血の塊に何をそんなに夢中になっているのか。それを知るため、彼はその尼を()()した。

 

 当然その凶行はバレ、彼は逃げ出し、街を彷徨っては通り魔的に人間・非人間問わず解体した。そこを某企業に囚われ、身体改造を受け、更にまた逃げ出し、現在の傭兵組織に流れ着いたのだ。はっきり言って背中を預けたい手合いではない。

 

 その猩々を睨んでいると、件の人物は視線に気づき、薄笑いでツンツン小僧達の座る机を指さす。そこでは、何が気に入らなかったのか、トールが上条当麻の顔面を机に叩き付け、続けざまに蹴りを放っている姿があった。

 

「俺は!!もう!!助けたつもりが逆に苦しめてたなんて結末を誰にも押し付けたくねぇんだ!!だから、実際に動く前に準備をさせろっつうのが分からねぇのか!!」

「吐きやがったな……」

 

(((うるせぇガキ共が。公共の場所で暴れるなと習わんかったのか?)))

 

 男が睨む間にも、上条とトールの争いはヒートアップし、今にも大惨事が発生しそうな有様と化している。バシャリ。水たまりに足を勢いよく踏み入れたかのような音が、彼らの決闘、ひいては男と猩々のアンブッシュをインタラプト(≒妨害)した!

 

 この水音の正体を、男も猩々も良く知っている。六角散々(さんざん)。粛々(=ザン・ニン)や猩々の所属する傭兵集団のボス。所属する組織を次々裏切ったことから、ついた別名が『外道の散々』。その全身は真っ赤な包帯に覆われており、常時流血しているために足元には常に血だまりが出来ている。

 

 当然彼も隠密の達人であるため、その異様な風体を訝しまれることはほとんどない。今のように、()()()見つかるようにふるまわない限りは。

 

「ヒヒヒヒヒヒヒ……お二人さん、血気盛んで結構なことだが……迷惑ってもんを考えてくれないとねぇ」

 

 散々が二人に声をかけた時、猩々はトールの、男は上条の首に指をかけていた!男は昏々しい目つきで蔑みながら言う。

 

「また会ったなァ、ガキ。チョロチョロと蟲のようにうろつき回っては俺達の邪魔をしやがって」

「お前……!!今度は『グレムリン』と組んで、何を企んでる!?」

 

 男、つまり二重サファリハットを特徴とするスラッシャー、賽は威勢のいい上条を見下ろす。完全に五月蠅い蟲を見る目つきとなっている。不味いな。散々は考える。もはや賽は、目の前のツンツン小僧がこれ以上生の痕跡を残すことを良しとしていない。

 

 そしてまた、猩々の方も予断を許さぬ状況に陥っていた。

 

「上条ちゃん、いくらオティヌスが弱い者いじめクソ野郎でも、こんな屑どもと組んではないぜ。……それと、俺の首から手を……!?」

「ははははっ!威勢が良い事だ!別に抵抗しても構わんが、その時は内臓の一片から骨の欠片に至るまでバラバラにされることを覚悟しておけよ?」

 

 猩々が哄笑しながら腕の力を強める。猩々が少しでもその気になれば、トールの首は容赦なくすっ飛ぶだろう。ただでさえ今の状況でもトールの顔はうっ血しているのだ。これ以上妙な真似をされるわけにはいかぬ。

 

「オイオイ君らさァ……自重って言葉を知らんのんかいな。()()()警告で留めればいいんだから、そんなにカリカリしなさんな」

「それもそうだな」

「……コイツはここで消しておいた方が後腐れが無くていい。違うか」

「賽、ここで散々と殺し合うつもりか?相当散らかって面倒なことになるぞ」

「……チッ」

 

 賽と猩々の殺気が霧散したところで、散々は警告に入る。

 

「お坊ちゃん達ぃ……分かっただろう?これ以上変な真似を……特にフロイライン=クロイトゥーネを助けるなんて真似をしようもんなら、避けがたい死が君らの命を刈り取りに来るぞ?」

 

 

 突如現れた三人組が去った後、上条はトールに声をかける。

 

「……どうする、トール?」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。上条ちゃんはどうだ?」

()()()()()()()()()()()()()()

 

――第七学区:ホテル――

 

「ハロー」

 

 魔術を極めた存在、魔神に成り損なった青年、オッレルスは、突如発生した力の蟠りを警戒する。彼一人しかいない時を狙って接触しに来たか。

 

「……ワールド。どうも。ワシだ。ドロームだ。おどれと面を合わせるのはいつぶりかのう」

「…………シルビアの一件以来だな。ドローム・A・ヴィスタ。何の用だ」

「死にたくなけりゃァ、フロイライン=クロイトゥーネの一件から手を引かんかい。……自殺したいなら、止めはせんがのう!カカカカカカ……カカカカカカカカアアァァァァーーーーッ!!」

 

 己の要求を突きつけるだけ突き付けると、ドロームは姿を消した。そして、誰に聞かせるでもなくオッレルスは呟く。

 

「お前の命令を聞くつもりはない。死ぬつもりも全くないがな」




邪魔者の排除(できてない)
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