――第三学区:タービン発電所――
『鋼龍』やドロームによる警告活動から少し後。賽らの警告は全く意味をなさず、フロイライン=クロイトゥーネは『窓の無いビル』から解放された。
そして、表向きは官公庁の緊急電源のガスタービン発電所とされている場所に
「あーもう駄目だ、これやっちまったら取返しつかねぇぞ……」
『今更だろう?とうの昔にマークされているんじゃないか?』
「言わないで下さいよ蠢動さん……」
「やめてよね。あんたは水槽の中で気楽に指示出すだけでいいけど、私たちはこの一回で死ぬかもしれないんだから」
その者らは、『スウォーム』なる暗部紛いの組織である。リーダーの蠢動俊三は故あってシャチの体となっているためこの場にいないが、佐久辰彦、山手、ベニゾメ=ゼリーフィッシュの3人はこの発電所で
破壊活動とは……この発電所に爆薬を仕掛け、吹っ飛ばし、もって垣根帝督を解放することである!破壊活動自体は容易だろう。協力者もいることであるし。だが……破壊活動後の事に関しては一切分からぬ。恐らく、今のようには暗躍できなくなろう……。
「いやぁ、まさか新聞で読んだテロリストと同じ行為に我等が手を染めるとはなぁ!」
『スウォーム』の面々が一種悲壮な決意を固めているにも拘らず、彼らを手助けしている『目覚め待つ宵闇』の首魁、アーランズは気楽な一言を放っていた。彼らの仕事は、このガスタービン発電所に「人払い」の魔術をかけること。つまり、『スウォーム』が見つからないようにすることだ。
「ボス、流石にその発言はいかがなものかと思いますが」
あまりに気楽なアーランズの言葉を咎める副官、ヴェイズ。だが、その声も本気で咎めているわけではないが明らかだった。実際、この任務はアーランズ達にとって役不足であり、さっさとゴロツキ共が出している出店の手伝いに戻りたいというのが本音であった。
『グレムリン』とは別口の魔術師達も来ているようだが、ソイツ等は『鋼龍』で対応するようであるため、アーランズ達は実際、一端覧祭の間は暇なのであった。
……KABOOOM……
「おっ!吹っ飛んだな!」
「……これで奴らが撤収すれば、我々の任務は終わりですか」
「そうだな!」
明らかな爆発音がしたが、むしろこのつまらぬ任務を終わらせられる良い機会としてアーランズらはそれを歓迎した……。
――特能総研所有特殊車両内部――
ガスタービン発電所爆発事故が起こるか起こらないかの時。特能総研の特殊車両の内部に、普段は見慣れぬ男がいた。
「ヒャアァーッ!!これ全部使っていいのかよォッ!!」
サイバネ改造によりバイオアイを取り付け、全方位を見れるようになっているこの異相の持ち主は、『人形師』。それを後ろから睨むは、ザゾグ・ザンリック。新入りの木原乱数と、彼を案内していた『博士』も一緒だ。
「おいクズ。怒鳴るな。騒ぐな。唾を飛ばすな。その機械は一点ものだ。壊すな」
明らかに苛立った表情で言葉をかけるザゾグ。『人形師』がいじくっているのは、特殊音波の高低・音色・大小の組み合わせで
なぜこのような機械を『人形師』がいじくっているのか?それは、以前垣根帝督が見せた醜態にある。暗部抗争の折、『鋼龍』は様々な暗部組織に手出しをしたが、『スクール』とその下部組織には手出しをしなかった。何故か?
『スクール』の首魁、学園都市超能力第二位『
だが、能力もない、『鋼龍』のチンピラでも殺せるような
今回垣根帝督を投入するのは、ザゾグからの木原唯一に対する嫌がらせ要請に加え、フロイライン=クロイトゥーネを
故に、ドロームは
――第三学区:ガスタービン発電所近辺――
垣根帝督はガスタービン発電所から飛び出て、自由を謳歌するように思えた。だが突如、彼の思考に混線するものが現れた。
『おい役立たずのクソヤローさんよォッ!俺達が善意でお前如きを解放してやったと思ってんのかァッ!?俺達の指示には逐一従ってもらうぜェッ!!』
その声は、彼が過去に葬った幾多の取るに足らぬゴロツキめいたものであったため、彼は侮った。彼は現在、真っ白な
「グワーッ!?」
『おいドサンピン。……反逆できるなんて思うなよォ!学園都市の連中が、貴様ら腐れ超能力者の反逆を予期してねぇとでも思ってたのか?舐めてんのかァァァァァッ!』
突如頭を万力めいて締め付けられたかと思うと、その脳裏にゴロツキの声が響く!ゴロツキが言うように、服従するしかない。
正しく使おう『役不足』!