とある外道の6人組   作:毛糸ー

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適当な仕事やってると、最終的に手抜きした奴もその周辺もひどい目にあうよねって話。


6.手抜きは最終的に誰も得しない

――特能総研所有特殊車両内部――

 

「……んん?」

 

 垣根帝督に逐一指示を送信していたザゾグは、不穏な兆候に気付いた。垣根帝督が未元物質(ダークマター)を用いて展開している部隊の一体が、明らかに垣根帝督の意図していない挙動をしていることに気付いたのだ。

 

「おい垣根帝督。貴様の端末の一匹が明らかに貴様の意に逆らう動きをしているが、どういうことだ?」

『あ?ああ……問題ねぇよ』

 

 ザゾグの懸念にも垣根帝督はぞんざいに答える。実際、あの端末がエラーを起こしたのは些末な問題であり、自分が再度命令し直せば、あの端末が連れているフレメア=セイルヴェンと打ち止め(ラストオーダー)を問題なく殺すであろう。

 

 あの端末はかの少女らに情を見せているようだが、命令を遂行させた結果()()()()再度作り直せばいい。己が操る能力、未元物質(ダークマター)は無限の創造性を持つ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ザゾグはあからさまに問題を軽視している垣根帝督を見て、何か言いたげにしていたが結局何も言わなかった。そもそもザゾグは未元物質(ダークマター)についての関心は薄い。垣根帝督が破滅しようが栄達しようが、知ったことではなかった。

 

 ここで『人形師』が起きていれば、造反分子の即時抹殺を命令していただろう。そして、些末な問題は些末な問題のままで終わっただろう。だが、現在彼の者は気絶させられ、いまだ目覚めておらぬ。それゆえ、この些末な問題を放置したことが致命的な誤りと化した……。

 

――フロイライン=クロイトゥーネの脳内――

 

「んあ?」

 

 フロイライン=クロイトゥーネの頭蓋骨の隙間で微睡んでいた旧支配者、トゥールスチャは目を覚ました。彼女の視覚野から情報を取り出すと、上条とかいうガキが、これまたメスガキのバードウェイとかいうのとやりあっているようだ。

 

 まぁ、自分には全く関係がない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。丁度いいタイミングが訪れるまで、自分は惰眠を貪れる。

 

 トゥールスチャが考えた『素晴らしい作戦』とは、丁度いいタイミングでクロイトゥーネから離れ、別の場所で自分が彼女を改造した際になり得る姿のコピーを作り出し、奴らの元に派遣するというものだトゥールスチャは自画自賛しているようだが、この作戦、致命的な粗があった。

 

 『クロイトゥーネがヒーロー共の望む存在であり続けているようにギリギリまで見せかけろ』『クロイトゥーネ自身にも最後の最後まで希望を抱かせておくように』というホス卿からの命令を一切遂行できない点だ。

 

 ただ、トゥールスチャはこのころになるとホス卿の指示を一切忘失していた。それゆえ、彼はアホ面をさらして惰眠を貪る……。

 

――特能総研所有特殊車両内部――

 

「ハッ……!?」

「目覚めたか。貴様は錯乱し垣根帝督を霧消させんとしたため、私が貴様を気絶させベッドに寝かせた。まさか文句はあるまいな?」

「……あるわけないだろうがよォ。どうだ、奴は」

 

 ザゾグらに気絶させられた『人形師』は、簡易ベッドの上で目覚めた。格下を侮り、その結果裏をかかれ激昂した自らの醜態を一通り反省した『人形師』は、垣根帝督の様子を尋ねる。

 

「うん?ああ……奴の端末の一匹が造反したようだが、垣根帝督がその始末を請け負ったゆえ、全て奴に任せてある」

 

 ザゾグの答えを聞き、顔面にインプラントされた大量のバイオサイバネアイをかっ開く『人形師』。そんなことをすれば、どうせあのガキはしくじる。あのガキがしくじるということは、くたばって未元物質(ダークマター)が手に入らなくなるということだ。

 

 そもそも、『人形師』は今回の作戦に垣根帝督を使うことに反対していた。クロイトゥーネの監視ならば、自分の人形を使った方が確実だ。意を翻したのは、全てが終われば未元物質(ダークマター)を彼の人形の新たな材料として提供するという約束が為されたからだ。

 

 その未元物質(ダークマター)が手に入らなくなるという危機を前にして、『人形師』は黒いプレートで覆われた顔面を引きつらせる。

 

「馬鹿野郎!あいつに自分のケツをふけるわけがないだろうが!今すぐこっちで……!」

 

 『人形師』は怒声を上げるが、言い切る前に木原乱数・『博士』が慌てた様子を見せ始める。『人形師』は舌打ちするが、どうにもならぬ。

 

「ああ!?ザゾグ所長!造反分子以外の未元物質(ダークマター)、消えだしてんだけど、どうすりゃいいんだ!?」

「所長、反対に造反分子の未元物質(ダークマター)が勢いを増しているんだが、これ、消した方がいいんじゃないのかね?」

 

 ザゾグは二人の報告に唖然とし、数瞬考え、この異常事態が起きた理由を導き出し、机を殴る!特に強化もされていない机はへし折れ、木片を撒き散らす!……『博士』がオジギソウを展開し、それを全て消し去ったため、機材が壊れる最悪の事態は避けられた。

 

 だが、事ここに至っては、事態が彼らにとって不本意な方向に進んでいることを認めざるを得なかった。

 

「…………垣根帝督は未元物質(ダークマター)という能力と己との境界が極めて曖昧な状態にあった。その中で、未元物質(ダークマター)で作った端末に、『自分こそが垣根帝督だ』と反旗を翻されたら、どうなる?」

 

 ザゾグの深刻な口調を聞き、『博士』が後を続ける。木原乱数と『人形師』は、()()()()()()()()()を形作る未元物質(ダークマター)を何とか保護するのに忙しい。

 

「……元の垣根帝督の人格と主導権を奪い合うことになるでしょうな。そして造反分子が勝てば……」

「元の垣根帝督とその端末は跡形もなく消えような」

 

 二人の会話を聞き、『人形師』がギリッと歯噛みする。恐らく二人の懸念通りの出来事が起こったのだろう。ああ、このままただ働きか……。そう思われたその時!

 

「ザゾグ所長、コイツに未元物質(ダークマター)強制操作機構を組み込んだんすよね?」

「……そうだが?」

「じゃぁ、一か八かでやってみたらどうです?」

「…………!!博士!強制操作機構、最大出力!」

 

 木原乱数の言葉を受け、ザゾグらが動き始める。彼の言うとおり、この機械には、どうしても垣根帝督が自分達に従わないとき、彼の自我を消滅させて未元物質(ダークマター)を操作するための機構が備わっている……!

 

 ただ、強制操作機構は垣根帝督の自我の存在を前提とした機構である。だが、未元物質(ダークマター)が失われる危機の前では、実験などやっている暇はない。手早く……発動した!

 

「おお……!()()()()()()未元物質(ダークマター)が安定しました!」

「よォォォォォォォし!!それを人目につかねぇところに隠しちまえ!!長老は統括理事会会員だ!!隠しちまえば融通が利く!!」

 

 ザゾグを差し置き『人形師』が大声を上げるが、それを咎める者はいない。実際、特能総研としても未元物質(ダークマター)を確保しておきたいからだ。特能総研の面々は『人形師』の言葉に粛々と従い、居残った()()()()未元物質(ダークマター)を隠し始めた……。

 

――ストレンジの九龍城:ドローム居室――

 

「おいどういうことじゃおんどれェ!」

 

 ドロームはホス卿との通信を開き、大声で怒鳴る!クロイトゥーネが明らかに『スウォーム』の根城から離れ、あまつさえどこぞのクソ共に出された訳の分からぬものを喰い散らかし、そのままどこぞに立ち去ってしまったのだ。

 

「なんだなんだ……」

 

 ホス卿は明らかにハトが豆鉄砲を喰らったような面でドロームの怒声に応じる。当然、ドロームは畳みかける!

 

「おんどれこのボケ!クロイトゥーネ、どこぞにいっちまったやんけ!おどれ、自分の言うた約束も守れへんのか!」

「ええ……そんなことを言われてもなァ……私はお前の部下達がヒーロー共を八つ裂きにするのを楽しみに見守っていたゆえ、事情はさっぱりなんだが……?」

 

 ホス卿は当惑した様子でドロームの怒声に答える。ドロームはそれを見て訝しみ、そして数瞬後、凄まじく怒鳴った!

 

「あのクソボケ!!おどれの部下の緑野郎!!適当な仕事しよったな!!どないなつもりじゃあ!!おどれ、自分の部下の面倒も見れへんのかい!!」

「うーん……そこまで言うなら、奴を呼んでみようか。おーい、トゥールスチャー!」

「あ!?あい、何ですかい?」

「このボケカスが!!」

「おいおい……」

 

 ホス卿の声に応じて現れたトゥールスチャは明らかな寝ぼけ眼であった。ドロームはそれを見て怒声をあげ、ホス卿は呆れかえったのであった。

 

 

 この後、高架上の高速道路で戦っていた『鋼龍』の4人と『人形師』は呼び戻された。こうして、一端覧祭は終わった。

 

 『グレムリン』共は確保すべきフロイライン=クロイトゥーネを垣根帝督の生身の内臓で代用し。

 

 オッレルス一派は首魁のオッレルス自ら『グレムリン』の元に潜り込んだ以外は収穫は無く。

 

 上条達は可愛そうな女の子を救うことができ、安堵した。

 

 

 そして『6人組』にとっては、いたずらに統括理事会を警戒させ、得たものは何もない、まさしく徒労となった……

 

 

 

 

 かに思われた。

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