インフィニット・ジェネレーション   作:ハルン

51 / 52
ユニコーンガンダムぺルフォクビリティ...凄いパーツの数だ。作り応えがある!!

やっぱガンプラは最高だな!!


42話

 フランスでの一戦を終え、一度収容した5千人以上に及ぶ避難民の全員をIS学園に連れていくのは困難であり、長期化する可能性のある今回の戦いにで避難民全員を受け入れようモノなら、居住区や食糧が不足し、現在保っている一定の生活翠重が大きく下がってしまう可能性もある。

 また、けが人や病人などに使う医療系のモノが足りなくなるのは目に見えている。故に、子ども老人を優先的にIS学園へ受け入れ、他の避難民は途中で補給したアメリカの使われていない施設に避難してもらうことになった。

 

 

「幸いにも、あそこは食料や電気といったものはまだ生きている。生活するだけなら何とかなるだろう」

 

「そうだね。後は自給自足をすれば一か月以上は何とかなる見通しね」

 

 可能であれば、全員を受け入れたいが、それが出来ない自分にやりきれない気持ちになるイチカとエリス。そんな二人はアウドムラの両翼を下から支えながら飛んでいた。避難民を降ろし、IS学園への帰路に就こうとした時だった。エンジントラブルにより、高度が徐々に下がり始める中、イチカとエリスの二人が故障したエンジンの代わり兼固定武装として行動し、襲撃も無くIS学園に着くのだった。

 

 

 

 

 

「お疲れ兄さん。首尾はどうだった?」

 

「あまりよくないな。フランスの首都機能もそう長く持たないだろう。なるべく早めにケリをつけないとその後の復興が過酷なものになるだろうな。それに...」

 

「兄さん?」

 

 戻ってきたイチカにねぎらいの言葉をを掛けるマドカだが、イチカの顏はどこか優れない事に疑問を持つマドカ。

 

 

「人を撃った...。この世界で初めて...」

 

「兄さん...」

 

「コピーニューロとの戦いが長くなりすぎて忘れていた...。俺達のやっていることが戦争で、人殺しなんだって...。心のどこかで安心していたんだ...人を撃たなくて済むって」

 

「うん...」

 

「だけど、そんなのは幻想だった。クソッ...! 俺はあと何回人を撃てばいいんだ...。後、何回戦えば平和は訪れるんだ...」

 

「分からないよ兄さん。でも、分からないからこそ私達は戦うんだ。何が良くて何が悪いか分からない...自分たちの信じる平和を模索して行くしかないんだ。それが、正解だと信じて...歩み続けるんだ」

 

 平和への思い人類共通なのになぜこうも交差するのか、ほんの少し互いに寄り添うことで人は分かりあえるのに、なぜ出来ないのか。人類の永遠の課題にイチカは悩んでいた。

 

 

「そうだ兄さん。今、各地でレジスタンスが活発化しているのは知ってるよね」

 

「あぁ、アメリカ、イギリス、中東...いろんな所で、活発になっている一方で、自身の保身のためにコード・アメリアスに与する者もいる事もな」

 

「調べたところ、今勢いのあるレジスタンス『リガ・ミリティア』『イーリアス』『ロイヤル』『ヴァルキリア』『ナンバーズ』だな」

 

「んー、ほぼ全滅しそうな部隊名が聞こえたぞぉ...」

 

 コード・アメリアスの統治を良しとしないのはイチカだけではなく、他にも多くのレジスタンスが存在する中、マドカは指をひとつづつ折りながらレジスタンスを挙げていく。

 

 

「アプロディアはこのレジスタンスとの共闘を提案している」

 

「確かに、戦える人数が増えれば行動の幅が広がるが、(人材)が増えても(全体の技量)が落ちたら意味がない」

 

「多くの功績を挙げているリガ・ミリティアとの共闘が一番いいのではないか、という話だ」

 

「うーん、一度会ってみない事には分からないな」

 

「あぁ、だからマークやフロスト兄弟に交渉を頼もうと思っている。あの人たちは私達より修羅場を多く潜り抜けているからな」

 

 レジスタンスに共闘を持ち込み、共同戦線を張ることで今後のコード・アメリアスの襲撃に対処しやすくなるだろう。そういったことを考えている中、マドカはチラチラとイチカの後ろを見ていた。

 

 

「シャルロットの奴、落ち込んでいるように見えるが...」

 

「目の前で家族が死んで、な...」

 

「なら、そういう事なら兄さんが適任だ」

 

「なに、今のシャルロットに一番声が届くのは兄さんだ。なら、兄さんが対処するのが妥当だと思うが?」

 

「...なんでそう思うんだよ」

 

「女の勘だ」

 

 マドカの根拠のない溜息を吐きながら向かう。例えエリスと相思相愛になっても女心を今一つ理解できていないイチカであった。

 

 

「あー、その...シャルロット...」

 

「イチカ...!」

 

「うおっ!」

 

 つらそうな表情をしていたシャルロットはイチカの顔を見るなり、思いっきり抱き着き、突然の事態に焦るイチカ。

 

 

「イチカ...。僕、愛されていたんだ...お父さんとお母さんに...」

 

「...そうか」

 

「...一言言ってくれれば、あんな関係にならなかったのに!! 本当のことを喋ってくれれば、僕だって少し歩み寄れたのに!!」

 

「例え親が子供をどんなに思おうと、それ言葉に、行動にしないと分からない。お前のお父さんは、きっと不器用なんだよ。シャルロットへの愛情を上手く伝えることが出来なかった不器用な人だったんだ」

 

「こんな終わり方したくなかった! 代表候補生なんて地位なんていらない!! 僕は、お父さんとお母さんと平凡でも、一緒に暮らせれば...それでよかった!!」

 

「...そうだな、それが一番だ。特別なものなんて必要ない、大切な人と一緒に居られれば...人はそれだけで幸せなんだ」

 

「グスッ...うぅ...」

 

 イチカの胸に顔を沈ませ、涙を浮かべるシャルロットに優しく抱き返し、子供をあやすように頭をなでる。

 

 

「天国できっと、お前の幸せを望んでいるよ。だから、一生懸命生きて幸せになるんだ」

 

「僕の...幸せ...」

 

「あぁ、そうだ。自分の心に素直になるんだ。楽しいときは笑って、悲しいときは泣けばいいさ。そうやって生身の感情を整理せずに、自分の中に押し込んだって、自分がつらくなるだけだ」

 

「うぅ...グスッ...。うえぇぇぇーん!!」

 

「それでいいんだ。楽しいときは笑って、悲しいときは泣けばいい」

 

 イチカが多くの悲しみを乗り越えて、今の自分がある様にシャルロットにもこの悲しいを乗り越えて幸せになってほしい。そう思いながら、イチカはシャルロットの優しく抱きしめ、泣き止むまで傍にいた。

 

 

「やはり、兄さんは女たらしだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ひとしきり泣いたシャルロットだが、心の整理がついておらず、一人になりたいと言い自室に向かうのを見届けたイチカは第二整備室に向かっていた。

 

 

「よぉ、イチカ。こんな所で何してるんだ?」

 

「ガロード。あぁ、新しいフェニックスのオリジナルのモーションパターンを作っていたんだ。だけど、MSが無いから実際にうまくいっているのか判別が出来ないがな」

 

「へぇー、そういうのも作れるんだイチカ」

 

「そういうガロードは何していたんだ?」

 

 今回の戦闘で得た経験を早速モーションパターン反映させようとフェニックスの傍らでコンソールを弄るイチカ。奇遇にも同じ整備室に居たガロードがイチカに声をかけた。そして、イチカは自分が何をしていたか答えると同じ質問を投げ返す。

 

 

「なんか一緒に戦う奴らが増えるみたいだし、ひと目で判別できるようにエンブレムを作ってみるかって思ってよ。で、完成したのがこれよ!」

 

「不死鳥...フェニックスか...。あぁ、良いデザインだな。正式に採用されたら使わせてもらうよ」

 

「シャギア達にもエンブレムの話をしたんだけどよ。『そこまでなれ合うつもりはない』って一蹴されてよ...。前は敵同士だったけどよ、今は仲間なんだから少し位付き合い良くてもいいじゃねーかよ」

 

「アハハ...。互いに分かり合うのは難しいな」

 

 過去の因縁はそう簡単に消えないな、っと思いながら作業を進める。そんな中、鳥の形をしたロボットが姿を現した。

 

 

『ここに居たのですねイチカ』

 

「その声...アプロディアか」

 

『はい。施設内を移動できるように用に用意した端末です』

 

「コード・フェニックスと一緒に俺達の所に来た時もその姿だったな」

 

「特別必要性を感じなかったのですが、突然出てきて驚く、心臓に悪いと避難された方から言われまして...」

 

 いつもモニター越しで話しかけてくるアプロディアだが、その方法は慣れたイチカ達は特段驚いたりしないが、何も知らない人からの驚きの声が多く、不要な事態を避けるために急遽用意したという事実に苦笑いをするしかないイチカだった。

 

 

 

「それで、俺に何か用なのか?」

 

『はい。世界各国の有力なIS操縦者など一部の人間が行方不明になっています』

 

「俺はフランスで、コード・アメリアスに協力する人物と交戦した。もしかしたらコード・アメリアスの勢力下にいるか、誘拐された可能性もある」

 

「つまり、...人間同士の戦いになるって事か?」

 

「あぁ、現に俺はフランスで一人殺している。今後はそういった機会が増えると考えていいだろう。この事を他の奴らにも周知した方がいいだろうな」

 

 アプロディアの言葉にイチカは、心当たりを言う。人との戦いが、血で血を洗う戦いが起きる。人を撃つという行為は人が想像するよりも精神的に堪えるのもあるが、簪がNTとして覚醒した今、NTとしての強さにもよるが、仲間だけではなく敵の思念まで聞こえるとなれば、強靭な精神を持っていない彼女では、近い将来精神崩壊する可能性があるからだ。

 

 

「にしても、腹が減ったな。ガロードは何か食ったのか?」

 

「いいや、まだけど...」

 

「なら、食堂に喰いに行く。スタミナのあるものを食いたいんだ」

 

「戦った後って腹減るよな。神経と集中力使うからよ」

 

 腹が減っては戦はできない。空腹の状態では、いい考えも出ないし、いざという時に力が出ない。そんな状態で、戦いに行くなど、死にに行くようなものである。空腹を訴えたイチカはガロードと一緒に食堂に向かい、その後をアプロディアが付いて行く。

 

 

「さて、何を──―」

 

「何だと、もう一回言ってみろぉ!」

 

「何だ、喧嘩か?」

 

 食堂に付いたイチカ達に聞こえた怒声に、イチカはやや困惑しながらその声のした方を見る。

 

 

「だから、今家に向かうのは危険なんだって、何回言えば分かるんだよ!」

 

「家具然り、道具然り、思い出然り、家には大切なものが沢山あるんだよ!! それを全部見捨てろってか!!」

 

「物と命どっちが大切なんだよォ!」

 

「少し、様子を見るだけだ! すぐに戻る!!」

 

「こういう時位聞き分けろや! このクソジジィ!!」

 

「親に向かって何だその口の利き方! このバカ弾!!」

 

「おじいちゃんもお兄ちゃんもやめてよ!!」

 

 ついこの間非難してきた弾の家族が、どうやら言い争っているようだ。それを聞いた、イチカは頭を少し掻くと二人が言い争っている場所に向かう。

 

 

「ここは食堂だ。少し静かにしてくれないか?」

 

「悪い一夏...。だけどじいさんが、家の様子を見に行くって言う事聞かなくて...つい熱くなちまった」

 

「厳さん。気持ちは分かるけど、今は非常事態なんだ。貴方の行動の為に人員を裂くほどこっちも余裕がない以上、そういった独断行為は慎んでほしい」

 

「一夏! お前まで弾と同じことを言うのか!!」

 

「同じ事を何度でもいいますよ。今は非常事態なんだから、少しは大人しくしてくれと。食堂を営んでいる貴方が食事場でのマナーが成ってないんじゃないんですか? 人一倍マナーに厳しい貴方が聞き分けが無いのなら実力行使に出ますよ?」

 

「このぉ、言いたいことを言わせておけばぁ!!」

 

 仲裁に入ったイチカだが、最初こそ場を治めようと丁寧に説明していたが、次第に棘を含んだ発言になり始め、仕舞には煽りが含まれ始める始末。

 

 

「遅い」

 

「グゥッ...!?」

 

「安心しな手加減してある」

 

「いや、もう少し穏便な方法があっただろう...」

 

「この手に限る」

 

「この手しか知らないだろう...」

 

 堪忍袋の緒が切れた厳は、イチカの顔面に目掛け拳を振るうも、ガンダム・ザ・ガンダムの称号を持つドモン・カッシュ直々鍛えられたイチカに当てる事は出来ず、余裕のある回避をすると懐に潜りこみ、鳩尾を殴る。その際、筋骨隆々の厳の身体が地面から浮いたのは気のせいではない。最終的に肉体言語で黙らせるとはこれいかに。

 

 

「俺達もこの戦いを終わらせるために、文字通り命がけで取り組んでますから、もう少し我慢してください」

 

「ごめんなさい一夏さん。おじいちゃんが迷惑を掛けて」

 

「すまねぇ、一夏。俺たち家族の問題に巻き込んで...」

 

「気にするな。困ったときはお互い様だ」

 

「まぁ、だからって殴るのはどうかと思うがな」

 

「うっ、今後はなるべく穏便な方法で済むよう努力しよう」

 

「俺は家族のことを思って...」

 

 

 わだかまりを残しつつ、(一方を)静かにしたイチカは当初の目的通りご飯を食べる事に専念できる。鳩尾を殴られた厳は足を引きずりながらイチカ達とは別の席に妻である蓮と一緒に座った。

 

「にしても、お前強くなったよな。流派ナントカは俺も学べば強くなれるのかな」

 

「流派東方不敗は一子相伝だからな、そう易々とは教えれないかな。そもそも俺はまだまだ半人前だから誰かに教えるなんて恥ずかしくてできないな」

 

「あれで半人前...」

 

「師匠の背中は今だ遠いし、最終秘伝も身に着けていないからな。超えるべき壁は大きいよ」

 

 流派東方不敗に少し関心があった弾は自分も取得できるか聞くが、イチカは一子相伝であり、未熟な自分が教えることが出来ないと断ると頼んだスタミナ定食を口に運んでいく。一武闘家として、尊敬している師匠の背中は大きく同じ場所に立っていない事を再度自覚しながら、いつか必ず超えてみせると闘志を燃やすイチカだった。

 

 

 

 

 

 

 

 ご飯を食べ終え、フェニックスのメンテナンスをするイチカは一通りの作業を終え、隣に置いていた端末を開き、新しい機体の設計をしていた。

 

 

「シャルロットの戦い方は、距離を選ばず多彩な武器で戦う...か。MSに多くの武装を取り付けても火力が上がっても、機動力が落ちてしまう。だからと言って、火力を下げて機動力を下げても本末転倒だし...あー、もう! 多彩な武装じゃなくて、幅広い戦術が取れる機体ならシャルロットの戦い方を崩さずに済むか?」

 

 イチカはシャルロットの新しい機体を考えていたが、シャルロットの戦い方、砂漠の呼び水を始めと高速切替はイチカの知っている限り実現できる機体が無い。見当たらないなら一から作ってしまえばいい、と考える事を放棄したような答えにたどり着き、コンセプトを考え、それに合った機体を選んでいたのだが中々見つからず、困っていた。そんなイチカの下に必死の形相で、弾が駆け寄ってきた。

 

 

「大変だ一夏! じいさんが、じいさんが!!」

 

「落ち着け、厳さんがどうしたんだ?」

 

「姿が何処にもねぇんだ! 様子を見におふくろの元に向かったらトイレに行ったきり戻ってきてないって、IS学園をくまなく探したけど影も形もないんだ!!」

 

「なんだと? 厳さんが行きそうな場所に心当たりはあるか」

 

 落ち着きがない弾に落ち着くよう指示すると、なにがあったのか耳を傾けると厳の姿が何処にもなく、嫌な予感がした弾はイチカの元を訪ねたのだ。イチカは現がどこか行きそうな場所はないか聞いてみると弾はまさか、と頭を抱える。

 

 

「実家...。あのバカジジィ、性懲りもなく...!」

 

「まずは、空いている奴で部隊を組んで捜索をする。弾お前もついてきてくれ」

 

「あぁ、分かっている。あのバカ親父一発殴ってやらないと気がすまねぇ! お袋や蘭を心配させやがって!!」

 

「アプロディア、今開いている奴を第二ゲート集めてくれ」

 

『分かりました。招集を掛けます』

 

 

 

 

 

 

 

「集まったのは弾、マドカ、ガロード、楯無の四人か」

 

「何処に向かったか見当がついているなら、少人数で向かうのがいいと思うわ」

 

「だが、楯無。お前のエクシアはまだ80%しか完成していないのだろう?」

 

「大丈夫よ、足りない分は技量()で補うわ。これでも国家代表だからね!」

 

「すみません。祖父の為に、集まってもらって...」

 

「気にするな。言っただろ? 困ったときはお互いさまだって」

 

「よーし、いっちょ人助けしますか!」

 

 第二ゲートに集まった四人に頭を下げる弾。それを、イチカは気にした素振りを見せずに弾の肩に手を置く。

 

 

『発進準備が整った方からどうぞ』

 

「イチカ・ギルオード、フェニックス...飛翔する!」

 

「更識楯無、アメイジングエクシア...飛翔するわ!」

 

「マドカ・ギルオード、ガンダムサバーニャ...狙い撃つ!」

 

「ガロード・ラン、ガンダムX...出るぜ!」

 

「五反田 弾、クロスボーンX1改・改...出る!」

 

 出撃した5人は、カタパルトか発進していき姿が見えなくなった減の捜索に当たるのだった。

 

 

 

 

 

 

「それがお前の新しいガンダムなのか?」

 

「ん? そういえば弾には見せてなかったな。これがフェニックスガンダムの新しい姿だ」

 

「だがよ、前の状態との判別が難しいからよ。名称を少し変えてみたらどうだ?」

 

「名称を変える?」

 

「前の状態を能力解放で、今の状態を能力覚醒と後ろに付けて分かりやすくすればいい」

 

「確かに、フェニックスの力が解放された経緯を考えれば、そういう言い方が妥当なのかな?」

 

 人型に近づき、さらなる力を解放したフェニックスを始めてみる弾。よりわかりやすくフェニックスガンダムの後ろに能力覚醒を入れれば分かりやすいと進言するマドカ。他愛もない会話をしていいると見慣れた街並みの荒れた姿が見えてくる。

 

 

「思ってたより被害が少ない」

 

「俺が来る前は何機かうろついていたんだがな...」

 

「五反田食堂周辺と経路を探そう」

 

 ビル等の建物は、半壊している物が多いが全壊している物は少なく、全体的に壊れていないほうが多い。恐らく戦闘によって破壊された物だろうと推察するイチカ。

 

 

「待てセンサーに熱源反応...。敵の可能性があるな」

 

「目視で確認した。前に戦ったアマクサと前にデータベースで見た黒いクァバーゼだ。数はクァバーゼ8、アマクサ12」

 

「一人4機で終わるな」

 

「まだ実践慣れしていな俺にその数はきついぜ」

 

「死にたくなかったら手を動かすことだ。それに戦いに勝つんじゃない、生き残ることを考えて行動しろ。勝利など後からついてくる!!」

 

 フェニックスのセンサーに反応があり、一端動きを止め物陰に隠れ様子を窺い、マドカが目視で木製帝国の機体と数を確認すると何をすべきか確認し、行動を開始する。

 

 

「各自散開! 敵性勢力を各個撃破せよ! 行け、ファンネル!」

 

 イチカが先行し、縦横無尽に飛び交うファンネルで牽制しながら鞘から抜刀し、アマクサの右肩を切り裂くとガロードがビームサーベルで切り裂きバスターライフルで止めを刺す。

 

 

「ランダムシュートッ!」

 

「エクシアの機動力なら!」

 

 X1改・改がピーコックスマッシャーを構え、側転しながら放たれたビームは不規則な軌道を描き、2機のアマクサに被弾しシールドや脚部を破壊する。そして、出来たすきを逃さず、エクシアの機動力を生かし二機のアマクサを切り刻んでいく。

 

 

「一気に殲滅させる!」

 

 ライフルビットを全基前方に展開し、放たれたビームによる制圧射撃はクァバーゼ2、アマクサ4機を一気に戦闘不能に陥れた。

 

 

「やっぱ、戦い慣れしてるな一夏」

 

「ッ! 弾、後ろだ!!」

 

「しまっ...!」

 

 次々落としていくイチカの姿に夢中になった弾に出来た隙を見逃さず、一機のクァバーゼが弾の背後を取り、頭部に内蔵されたメガ粒子砲を突きつけていた。

 

 

「待っていろ! 今助ける!!」

 

「ここぞとばかりに連携が良くなってる!」

 

「邪魔をするなッ!!」

 

 弾の危機に救援に向かおうとするイチカ達だが、敵も行かせはしないと言わんばかりに攻撃が激しくなり、連携が良くなったことによって苦戦を強いられ始めていた。

 

 

「ここまでなのか...!?」

 

「チィ...! 弾! 上のスラスターを落とすんだ!!」

 

「上のスラスター? こういう事かッ」

 

 例え駆けつけることが出来なくても、アドバイスを送ることはできる。イチカはX1改・改のスラスターを落とすように指示すると、イチカの言った意味を理解した弾はX1改・改のスラスターを落とすとクァバーゼの頭部メガ粒子砲に衝突し砲身が下向き、地面に向かって放たれる事で間一髪直撃を避けることが出来た。

 

 

「このッッ! ブランドマーカー!!」

 

 イチカはX1改・改の四角錐状のビーム刃を形成したブランド・マーカーを拳に移動させ、の頭部を殴りつけるとX型の傷痕を残し、機能停止する。

 

 

「今は戦闘中だ。目の前の戦闘に集中してくれ! そんなんじゃ、大切な人の所に帰れないぞ!!」

 

「大切なひと? ...あぁ、そうだ俺達には帰るべき場所も、守るべき人もいるんだ! こんなところで死んでたまるか!!」

 

 ビームザンバーをクァバーゼに投げつけるが当たらず、ビルに刺さるが、シザーアンカーでビームザンバーを回収し、チェーンを掴むとそのまま周る様に動き攻撃範囲が伸びたビームザンバーで周囲の敵を切り裂いていく。

 

 

「敵の数が減った! 一気に攻めるッ」

 

 クァバーゼ3、アマクサ3と残る敵の数を確認し、フェニックスが荒ぶる不死鳥の様なポーズを取ると全身を気弾で渦巻き状に包み込む。

 

 

「超級ゥ覇王ッ電影弾ッッ!!!」

 

 敵陣に向かい超級覇王電影弾を撃ちこみ、アマクサを三機仕留める。

 

 

「酔舞・再現江湖デッドリーウェイブ!」

 

 相手を惑わせる舞の動きを取りつつ気を練り上げた後、その気を発しながら相手に突撃し、1機のクァバーゼとすれ違うと同時に相手に気を流し込む。

 

 

「爆発!」

 

 イチカの掛け声とともに流し込んだ気を爆発させて相手を粉砕する。飛び道具を使いながら戦うのがメインなIS組とガロードは「こいつ...素手の方が強いんじゃねぇの?」と思いが一つになっていた。

 

 

「兄さんの異質さに驚いている暇があったら手を動かせ」

 

「そうだ! 残りの敵...」

 

「残りは私が仕留めた。私が居なかったら不意打ちを喰らっていたぞ」

 

 弾達が呆けている間に残りのクァバーゼを仕留めていたマドカ。戦場では気の緩みによって悲惨な結果になるのはよくある事だが、それを身内で起きて欲しくないマドカは注意を促すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「食堂までに生体反応も死体も見つかっていない...。あるのは大きめのタイヤ痕だけか」

 

「今の所、血痕も見つかってないか...。つい先日、襲撃があったにしては静かすぎるな」

 

「残党が居ない事がおかしいって事?」

 

「あまりにも静かすぎる。...まるで嵐の前の静けさの様な...」

 

 敵に発見されるリスクを下げるべく低空飛行をするイチカ達は地面に着地し、周囲の状況を確認しながらに問を浮かべる。

 

 

「それにこのタイヤ痕、一般車両にしては大きい。トラックかと思ったが、線は一本だけだ。恐らく、バイクの類だろうがそれにして大きすぎる」

 

「敵の可能性があるって事か?」

 

「大いにな」

 

 ──── ウワァァァァァァァァ!!? 

 

 

 状況推察をしていたイチカ達の耳に成人男性の悲鳴が届いた。

 

 

「あの声、じいさん!」

 

「急ぐぞ!!」

 

「声は食堂のある方だ!」

 

 声の主が弾の父、厳のものであると認識した弾はスラスターを吹かしながら急行し、そのあとをイチカ達が急いで追いかける。

 

 

「あれは、ゴッドガンダム!」

 

「師匠!?」

 

「てめぇ、じいさんから離れやがれッ!」

 

「弾、前方に熱源接近!」

 

「あれは...バイク?」

 

 食堂前の道路で震える厳とゴッドガンダムの姿があり、その周囲にはナニカの金属片が散らばっていた。厳を襲撃しているのがゴッドガンダムだと思った弾は、ビームザンバーを構え、前に出ようとした瞬間だった。弾達がいる方とは逆の方からセンサーが何かが接近していることを知らせる。そして、飛び上がる様に出てきた装甲車両に近いバイクのような物体が厳を轢き殺そうとしていた。

 

 

『タアァッ!!』

 

「なっ!」

 

「じいさんを...守った?」

 

 だが、厳が轢かれる前にゴッドガンダムが厳の前に出ると拳一つで粉々に粉砕する。そして、その光景に驚く一同。

 

 

「今のは、ベスパのガリクソンだった。...じゃ、さっき見たタイヤ痕は奴の?」

 

「師匠...」

 

 先程のタイヤ痕がベスパのガリクソンのものだったと考えるマドカだが、イチカはただゴッドガンダムを見つめる事しかできなかった。

 

 

『答えろイチカ! 流派ッ! 東方不敗は──―』

 

「王者の風!」

 

『全新!』

 

「系列!」

 

『天破!』

 

「侠乱!」

 

「『見よ、東方は、赤く燃えている!!』」

 

 互いに声を挙げ、残像が残る速さで拳を繰り出しながら接近し、最後は同じポーズの状態で拳を突き合わせた二人は次第に距離を取る。

 

 

「兄さん! さっきのガリクソンの反応が、さっき私達が来た方からこっちに向かっている!!」

 

「何っ!」

 

 ゴッドガンダムを警戒するイチカだが、マドカは大量のガリクソンが向かっていることを知らせる。

 

 

『イチカ、前にもこんな事があったな。そして、あの時も流派東方不敗最終奥義を放ったはず。その名は──―』

 

「あ、あれは...!」

 

『石破天驚拳!!』

 

 ゴッドガンダムの拳に光が集まり、巨大な拳の形の気弾を放ち、イチカの後方から現れた大量のガリクソンを一網打尽にする。

 

 

「覚えている、覚えているぞ。あの時もそうだ...。俺はこの人に助けられたんだ...」

 

 そしてイチカは過去を思いだすように語り始める。

 

 

「修行の最中に師匠とはぐれた俺は、獰猛な猛獣たちに囲まれてしまった...。あの時の俺は猛獣の群れに恐怖し、身動きが取れなかった。その時に師匠がさっきの技、石破天驚拳で俺を助けてくれたんだ」

 

『この技だけはお前に伝えることが出来なかった。あの頃から、何も変わっていない。目先のことに捕らわれ、一番大切なことを見失う』

 

「師匠...。アンタは...敵なのか...」

 

『お前の問いに対して、語る口は持っていない。知りたければ拳で語れ』

 

 イチカはゴッドガンダムの、師匠であるドモンが理解できずにいた。コピーニューロである以上、本物のドモンではない事は理解してる。だが、自分を試すような行動の真意が分からず、漏れた言葉に語ることは無いと腕を組み立ち尽くすのみだった。

 

 

「イチカ君、複数の熱源接近!」

 

「増援! またベスパか...!」

 

「生体反応...。人が乗っているのか!!」

 

 迫りくる機体に人が乗っている事に、今までの様にニューロやコピーニューロだと思っていた弾や楯無は驚きを隠せずにいた。

 

 

「アイツから悪意を感じる...。恐らく、敵だ」

 

「敵? 同じ人間が敵になるっていうのか!!」

 

「寧ろ今までが可笑しかったんだ。戦争は人間同士の手によって起きるものだろ」

 

「そ、それは...」

 

「何だい? まだ、野蛮な男どもがいたのか」

 

 人と機械の戦いではなく、人と人の戦いになりつつあるということを理解し、その事を聞いていたマドカは驚く素振りを見せずにいた。そして、目の前にいるゲドラフ率いるリグ・シャッコーから悪意のある人の声が聞こえた。

 

 

「発砲した? やはり敵!!」

 

「今ので死んでれば、苦しまずに死ねたモノを!!」

 

「お前もコード・アメリアスの配下かッ!」

 

 先制攻撃だと言わんばかりに攻撃してきたリグ・シャッコーにイチカは抜刀し、接近戦を仕掛ける。

 

 

「じいさん、ここはもう危険だ! 早くIS学園に戻れ!!」

 

「弾ッ!? オメェはどうするつもりだ!!」

 

「俺は此処で、敵を食い止める!!」

 

「馬鹿ヤロウ! 子供が危険な目に合ってる中でおめおめ逃げられるか!! 俺も手伝う!!」

 

 戦場に変わったことを理解している弾は、厳に逃げる様に促すが、まるで現実が見えていないのか生身で加勢すると言い始めてきた。そんな、厳に対してゲドラフが乗るアインラッドに搭載された2門のビームキャノンが放たれる。

 

 

「ヒィ!」

 

「じいさん!」

 

 だが、ビームが厳を焼き尽くす前にX1改・改が、身を挺して護り、ビームシールドによって防がれる。

 

 

「とっとと逃げろクソじじぃ! 今のを見ただろ生身で喰らったらどうなるかなんて言わなくても分かるだろ!!」

 

「ウッ...!」

 

「大人の尊厳、意地? そんなもん、現実を理解できていない大人がいたって邪魔になるだけだ!!」

 

「ゲホッゴホッ...」

 

 厳の胸ぐらを掴み、怒りの籠った声で話す。そして、言いたいことを言った弾は突き放すように厳を解放する。解放され咳き込んだ厳は、何処か納得のいかない顔をしながら厳は立ち去って行く。

 

 

「あのタイヤビームを弾くぞ!」

 

「あのタイヤはビームライフル程度なら防ぐ。ゲドラフ自体もビームシールドを装備している以上全方位からの攻撃に高い防御性を持っている。かなりの高出力のビームなら効くがな」

 

「そんな敵にどうしろっていうんだよ!!」

 

「タイヤはサバーニャのシールドビットで止める。お前たちはゲドラフの両腕にあるビームシールド発振器を破壊すればいい。そうすれば、左右からの攻撃が有効になるだろ?」

 

「分かったわ。その作戦で行きましょ!」

 

 ゲドラフとアインラッドの堅牢性に苦戦する弾達だが、その対抗策を言うと、現状それ以外の策が無い為、マドカの作戦で行く事になった。

 

 

「行け! シールドビット!!」

 

 ゲドラフが押し潰さんと迫りくるが、その攻撃を待っていたマドカはシールドビットを展開し、物理的に動きを止める。

 

 

「うおおぉぉぉ!」

 

「ハァァァァ!!」

 

 動きの止まったゲドラフを左右からビームシールド発振器をビームザンバーとアメイジングGNソードで破壊する。

 

 

「そっこだぁ!!」

 

 ビームシールドが使用出来なくなったゲドラフのトドメをガロードがバスターライフルで射す。

 

 

「確かにこれなら、倒せるが...」

 

「敵の数に対して時間が掛かりすぎるわね」

 

「なら二人一組で戦うのがいいだろう。私と楯無、弾とガロードの組み分けでいいな?」

 

「「「了解!」」」

 

 時間がかかりすぎると言う懸念を抱き、即時に新しく組み分けを行い行動するように指示をするマドカ。そして三人はその案に賛成し、行動を開始するのだった。そして、少し離れたところでは──―

 

 

「何故、コード・アメリアスに協力する! 奴のどんな甘言を聞けば協力しようなんて考えが出来る!!」

 

「私はね、この汚染された地球を浄化したんのよ!」

 

「地球の...浄化?」

 

「そうよ、地球は度重なる人間の身勝手な環境破壊に滅びの危機に瀕してるわ。それを回避するために協力してるのよ!」

 

「どんな大義名分があっても、大量虐殺をしていい理由にはならないだろ!」

 

「むしろそれが目的なのよ!」

 

「何だとッ...!」

 

 ビームファンとビームサーベルが幾度となくぶつかり合う。そして同じように言葉もまた弾丸となってぶつかり合っていく。イチカはコード・アメリアスに協力する心情が理解できず、なぜ協力するのか聞くと地球のためだと返ってきた。地球が滅びから護る為に戦っているという彼女だが、コード・アメリアスによって多くの命が奪われている事実がある以上、それが正当だと思えなかった。だが、人々が死んでいくのは計画の内だと言う彼女にイチカは疑問を浮かべた。

 

 

「地球に住む人間が、地球を我が物顔で食い潰しているなら、その人間の数が減れば地球は守れるのよ!」

 

「そんな理屈でっ!」

 

「人間が地球にしてきたことを思い出しなさい! 私達は今こそ、地球をありのままの姿に戻すべきなのよ! あのタイヤは火薬を使わずに有害な人を轢き殺すには持って来いだった!」

 

「その為に、火薬を使わずに人を殺して家を壊すと言うのか!! それが人のやることかよッ!!」

 

 ハンドビームガンとビームファンの攻撃を回避しながら、鞘に納められた剣を連結させ、弓にして攻撃したり、両剣のように扱いながら応戦していた。

 

 

「腐らせるものは腐らせ、焼く物は焼く! それが私の考えた地球クリーン作戦よ!」

 

「そんな作戦が認められと思うのかッ!」

 

「認められないなら強行するまで!! 地球に住む子供たちが、いつまでも自然豊かな地球で暮らせるように、肥やしにするのよ!! 例え批判されようと、いずれ評価される日が来る!」

 

「嘘を言うなっぁぁ!!」

 

 両剣状態の剣をブーメランのように投げるもビームファンによって弾かれるが、それを見通していたイチカは炎の翼を展開し、急接近すると回し蹴りを繰り出す。

 

 

「ウワァァァァァ!?」

 

「どんな大義名分があろうが、アンタのやっている事は人殺しに過ぎない!」

 

「グッ...! 何も知らない子供が減らず口を!!」

 

「戦争に参加してる時点で、破壊してることに変わりないんだよ!」

 

「私のやってることは慈善活動よ! 貴方達男どもがくだらない争いばっかり起こすから、自分の生活の為に木を斬り、山を拓いて自然を破壊してるばっかのくせに!!」

 

「その破壊と言う名の恩恵に預かってるのはお前も同じだろう! 自分だけ善人ぶるなっ!!」

 

 回し蹴りの衝撃で地面に墜落したリグ・シャッコーに近寄ると、リグ・シャッコーは手に持っていたビームサーベルで何度も突くがイチカはそれを難なく躱し、リグ・シャッコーの肩を掴むと顔面を何度も殴り、最後に思いっきり振りかぶり殴りつける。

 

 

「この野蛮人が!! アンタみたいなのがいるから、地球は...!」

 

「地球、地球...。地球を免罪符に何をしてもいいわけないだろ! 地球の為なら殺人が許されるわけないだろうがァァ!!」

 

 自分勝手な大人に怒りを覚えながら、イチカはバーニングクロスでリグ・シャッコーを薙ぎ払う。

 

 

「グッ...。確かにお前は強い。だけどね、地球クリーン作戦の要はゲドラフだけじゃないんだよ」

 

「なんだと?」

 

 リグ・シャッコーの至る所から放電される中、追い詰められた彼女はその鋼鉄の仮面の下で、不敵に笑う。そして、それがどういう意味か理解するのに時間はかからなかった。

 

 

「あれは...アドラステア!?」

 

「そうさ、あれが作戦の要。あの戦艦でIS学園を、地球の不要なものを踏みつぶす! 既にいくつかは地球の肥やし済みよ!!」

 

「あんなもんIS学園に向かったら...!」

 

「サテライトキャノンで...!」

 

「待て、ガロード! サテライトキャノンじゃ、被害が大きくなる! 何をするつもりだ!! 兄さん!!」

 

「タイヤ付きを止める!!」

 

 周囲の建物を踏みつぶしながら進む40mあるであろう大型のバイクが近寄ってくる。彼女がいう地球クリーン作戦の要であるアドラステアが進路方向にはIS学園が危険だと理解したイチカは炎を纏った両腕を突き出し、燃え盛る不死鳥がアドラステアの前輪部分に向け飛んでいくが、その進行を止める事は出来なかった。アドラステアから無数のミサイルが飛び交うが特大の気が行け手を阻む。

 

 

「お見事...」

 

 ゴッドガンダムの超級覇王電影弾がミサイルからイチカを護る。真意が理解できずに内心困惑することしかできないでいた。

 

 

『気を抜くなイチカ! む? そっちに行ったぞ!!』

 

「何? ウワァァァァァ!!」

 

 アドラステアを止める事をに集中していたイチカに2機のゲドラフが進行し、咄嗟に構えようとするもアインラッドに衝突され、飛ばされるイチカ。

 

『イチカ! 今こそ石破天驚拳、撃ってみせろ!』

 

「なにっ? クッ...!」

 

 ゲドラフ衝突から体勢を立て直すとゴッドガンダムが石破天驚拳を打てと言ってきた。自分が持つ武装ではアドラステアを止める事を出来ないと理解したイチカは一度上昇し、高度を取ると目を瞑り集中し、イメージするのは武闘家として、弟子として追い越すべき人の背中を、両脇を閉め、右手を突き出す。フェニックスの右手に光が集まる。

 

 

「ハァァァァ...! 流派東方不敗が最終奥義ッ石破天驚拳ッッ!!」

 

 フェニックスの拳から拳の形の気功弾が放たれると、フェ二ックスを追尾していたゲドラフ諸共アドラステア消滅させる。

 

 

「う、撃てた...。流派東方不敗最終奥義を俺が...!」

 

『イチカ、流派東方不敗最終奥義石破天驚拳、確かに伝授したぞ。その技があれば、コード・アメリアスにも後れを取らないだろう』

 

「待ってくれ師匠!」

 

『この瞬間をしかと胸に刻み込め。そして、七日後のガンダムファイト楽しみにしているぞ。来い、風雲再起!!』

 

 イチカが石破天驚拳を習得した姿をどこか満足そうに見つめたゴッドガンダムは呼び出した風雲再起と共に何処へと去って行った。

 

 

「私の...私のアドラステアが...」

 

「投降しろ。命まで取るつもりはない」

 

「ここで私が、投降したら...。地球はこいつらに破壊されてしまう!?」

 

「何? グッ...!?」

 

 最早真面に戦うことが出来ないリグ・シャッコ―のパイロットに投降を呼びかけるイチカだが、ふらつきながら立ち上がるとそのままスラスタを吹かし、目の前に居たイチカは思わぬ行動に受け身が取れず、尻もちを着く。そして、リグ・シャッコ―はマドカ、楯無を、そして弾を過ぎ去っていく。

 

「アイツ、逃走するつもりか?」

 

「見て、リグ・シャッコ―の進路方向から車が来るわ!」

 

「アレに乗っているのは...!?」

 

 逃走しようとしたリグ・シャッコ―を追いかけようとしたイチカ達だったが、一台の車が逃げようとするリグ・シャッコ―に向かって猛スピードで直進していた。

 

 

「一体何を...。まさか、特攻でもしようと言うのか!?」

 

「ガキどもだけに危険な目に合わせられるかよ!!」

 

「よせ、じいさん!!」

 

 猛スピードで直進する車がしようとしている事に気づいたイチカ達は、止めようと急いで行動する。だが、車がリグ・シャッコ―と衝突する寸前に飛び降りた厳は燃え盛る炎を見て不敵に笑う。

 

 

「ハハッ...。ISが無くたってやれば出来るじゃないか」

 

「よくも邪魔をしたわね...」

 

「ハッ...」

 

 燃え盛る炎を見て、仕留めたと思った厳だが、炎の中から女性の声が聞こえ、先ほどまでの笑いも止まり、言いようもない恐怖が押し寄せてきた。そして、炎の中から装甲の一部がへこんだリグ・シャッコ―がビームファンを構えながら、厳に近寄る。

 

 

「無粋な野蛮人が私の邪魔をするなッ!」

 

「アア...ァ...アァ...」

 

「死ねッ!」

 

「じいちゃぁぁぁん!!」

 

 怒りを露わにしながらビームファンを振り下ろすリグ・シャッコ―、直前に迫る死に身動きが取れず、怯える事しかできない厳に一つの影が近寄って来た。

 

 

「アアアアアアアァァァァ!!!?」

 

「だ、弾...。お、前...」

 

 X1改・改が、身を挺して厳をビームファンから護るも、弾の右腕ごと(・・・・)切りおとされてしまう。壮絶な痛みに気を失う事すら許されず、悲痛な悲鳴を上げる弾。

 

 

「弾ッ! 気をしっかり持って!!」

 

「クッ...! もう追いついて...。なら、この機体ごと自爆してやる!!」

 

「自爆だとォ!? グッ!!」

 

 追い詰められた女は自からの死さえ厭わない行動に出た。自爆と言う方法で道ずれにしようとした考えたのだ。女は近くにいたX1改・改抱き着くとするも弾は無事な左腕で必死に抵抗するが抵抗空しく、拘束されてしまう。

 

 

「直径1キロはこのリグ・シャッコ―に積まれた爆弾で吹き飛ぶ! 後3分、恐怖に怯えるがいい野蛮人共!!」

 

「クソッ...! ビームサーベルじゃ、弾まで傷つける! それに爆弾が誘爆しちまう!!」

 

「このッ...離れやがれぇ!!」

 

「ハハッ! 梃子でも動く訳にはいかないぃ!!」

 

「覚悟を決めるか...」

 

 X1改・改に取りつき離れないリグ・シャッコ―をどうしよか悩んでいた時、X1改・改スラスターを全開にし、イチカ達から離れていく。

 

 

「弾? 何をする気だ...。よせっ!」

 

「何をするつもりだって? 此奴と一緒に地獄に落ちるのは俺一人で十分だ!!」

 

「まだ、何か方法があるはずだ...! だから、生きることを諦めるなァァ!!!」

 

「ありがとよ、イチカ。最後まで助けようとしてくれてさ...。家族の事、虚さんのこと頼んだ」

 

「ダアアァァンッッ!!」

 

 弾が自分一人だけ犠牲になる道を選んだことに気が付いたイチカは、生きることを諦めるなと叫びながら追いかけるも、追いつく前に光が二人を呑みこんだ。

 

 

「兄さん!」

 

「凄い爆発...!」

 

「あぁ...弾...」

 

 爆発から身を守る様にシールドビットを展開するマドカ。機体を通して伝わってくる衝撃と轟音からかなりの火薬が積まれていたことが理解できる。

 

 

「なんて爆発力だ...。辺りが一面吹き飛んでやがる...」

 

「この爆発じゃ、生存なんて...」

 

「兄さん! 気をしっかりして、兄さん!!」

 

 余りの惨状に絶句するガロード、そしてその爆発から生存は極めて厳しいと思った楯無。マドカは膝立ちのまま爆発地点を見つめたたまま動かないイチカに呼びかけながら駆け寄る。イチカの戦意が消沈している為か、フェニックスのサイコフレームがグレーに変わっている。

 

 

「要救助者の確保次第、戦線を離脱する! 楯無、トランザムで要救助者を連れていってくれ。ガロードは落とされないように私に掴まってくれ。私は兄さんを運ぶ」

 

「「了解!」」

 

 これ以上長居するのは良くないと考えたマドカは、戦線の離脱を決定し、爆発の衝撃で頭を打ち気絶した厳を担いだ楯無と一緒にトランザムを使い、IS学園に戻るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうだった一夏! 厳さんは見つかった?」

 

「鈴...」

 

「救助者は無事保護した...。だがな...」

 

 IS学園に戻ったイチカ達は機体を解除し、歩いていると鈴が心配そうに駆け寄ってくるが、何処か元気のないイチカ、作戦の成功を言い淀むマドカ。

 

 

「鈴...。弾が...」

 

「え?」

 

「おじいちゃん!!」

 

 イチカが悔しそうな表情をしながら、重い口を開けようとした帰ってくるのを待っていた蘭が気絶していた厳に駆け寄る。

 

 

「おじいちゃん大丈夫! おじいちゃん!」

 

「うぅ...蘭...」

 

「おじいちゃん!」

 

 気絶していた厳の体を揺する蘭は、意識が覚醒した厳の姿を見て笑顔になる。

 

 

「一夏さん、おじいちゃんを見つけてくれてありがとうございます!! 所で、お兄の姿が見えないようなんですけど...」

 

「蘭...。弾は...」

 

「いててて、此処は...、そうだ! 弾、弾は何処だ!!」

 

 目を覚ました厳から離れた蘭は戻ってきた人の中に弾の姿がない事に疑問に思う中、後頭部を抑えながら厳は、状況の整理をするとイチカに駆け寄る。

 

 

「頼むイチカ! 弾の、弾の捜索を頼む! きっと、きっと生きているはずだ!! だから、頼む」

 

「おじいちゃん、それどういうこと?」

 

 イチカに弾の捜索をお願いする厳、自分の兄の捜索をお願いする祖父の姿に困惑する蘭。そして、そんな厳の姿を見たイチカの何かが切れた。

 

 

「厳さん...。歯ァ食いしばれぇ!!」

 

「うがっ...!!」

 

「イチカ君!?」

 

「一夏さん!?」

 

 イチカは、頼み込んでくる厳の顔面を目掛け思いっきり殴る。突然の事態に理解が追い付かない厳、いきなり怒りの表情で厳を殴ったことに驚く楯無と蘭。そんな周りのことを気に留めずイチカは、地面に倒れた厳に近寄ると両手で胸ぐらを掴み、引き寄せる。

 

 

「捜索隊を編成しろだと? 自分がどれだけ都合のいいこと言っているのか理解できているのかァ!!」

 

「何って...孫を、弾を心配して...」

 

「それが都合いいって言ってんだよッ! 一体何のために救助隊を編成したと思ってんだ!! アンタが身勝手なことをするから、余計な真似をするからだろ!!」

 

 血気迫る勢いで叫ぶイチカに厳は今までの様な威勢のよさは消し飛び、目だけで人を殺せるなら今のイチカなら可能だろう。それほどまでにイチカの目には殺意が宿っていた。

 

 

「アンタの身勝手な行動で、どれだけ周りに迷惑をかけるつもりだ! 勝手に外に出歩いて...、アンタが余計なことしなければなァ!! 弾は出撃する事も無かった!! アンタのせいで出撃することになった弾は...弾は!!」

 

「一夏...弾がどうなったの?」

 

「こいつを護る為に右腕を失い、敵の自爆から俺達を護る為に一人で......」

 

「嘘でしょ...」

 

 厳を掴む力が強くなってくイチカ、恐る恐る弾がどうなったのか聞く鈴に、イチカは簡潔ながら弾の身に起きた事を説明した。イチカの言葉の意味を理解した鈴はその場にへたり込む。

 

 

「アンタが思っている以上に俺達に余裕はないし、俺達はいつ自分が死ぬか分からない中で命を削りながら戦っているんだよ!! いいかよく聞け!!」

 

「ウッ...」

 

「命は何にだって一つだ! 失ったら二度と戻ってくることは無いんだ!!」

 

 イチカは厳を無理やり立たせるとそのまま三歩ほど下がる。

 

 

「自分のせいで捜索隊出させておいて、自分の都合で捜索隊を出せだと? そんな自分勝手な大人、修正してやるぅ!!」

 

 自分の都合しか考えない身勝手な大人に鉄拳制裁を下し、その様子を誰も止める者は居なかった。

 

 

「捜索隊は言わずとも出すさ。だがな、生きているあいつが見つからなかったら...。それは、リグ・シャッコ―のパイロットが殺されたんじゃない。アンタの軽率な行動があいつを殺したんだ!!!」

 

「おじいちゃんは...私達よりも、お店の方が大切なの?」

 

「ち、ちがう...。俺はお前達を...」

 

「お兄たちが何の為に戦っているのか分かってるの! 私達を護る為なんだよ! なのに、周りを危険に巻き込んで、お兄が...! そんなに、お店が大事ならお店と一緒に勝手に死んじゃえばいいんだよ! この人殺し!!」

 

「待ってくれ蘭!」

 

「自分のことしか考えないから、周りが見えないんだ! こんな自分勝手な人、家族だと思いたくない!! 私の前に出てこないで!!」

 

「俺は、俺は...! ウワァァァァァ!!」

 

 イチカの言葉をようやく理解した厳はイチカの言葉攻めと蘭の拒絶によって、自分が取り返しのつかない事をしてしまった事に気づくもすでに遅く、自分のやったことに頭を抱え叫ぶことしかできなかった。

 




弾君は一回リタイヤとなりました。今年中には終わらせるように頑張りますかので応援よろしくお願いします。

感想待っています。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。