安心してください、履いてませんよ   作:とにかく明るかった安村

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ちなみに恥樫照夫は20巻で数コマだけ登場してます


武者は犬ともいへ、畜生ともいへ、勝つ事が本にて候

「うおおお……」

 

 放課後。

 体育祭に向けて訓練をどうしようか考えながら帰ろうとしたところ、教室の前には人だかりが出来ていた。

 

「何事だぁ⁉」

 

 目の前の光景に戸惑っていると麗日が驚きの声を上げる。

 

「出れねーじゃん! 何しに来たんだよ」

「敵情視察だろザコ」

 

 疑問を口にする峰田に対しナチュラルに毒を吐く。

 お前、ほんとにヒーロー志望か……? (ヴィラン)の間違いじゃない?

 

(ヴィラン)の襲撃を耐え抜いた連中だもんな。体育祭の前に見ときてえんだろ」

 

 と、そんなことを言いながら意味深な視線をこちらに向ける爆豪。

 そんな熱い視線を向けるなよ、興奮しちゃうじゃないか♠

 

「まぁ、そういうのは意味ねぇからどけ、モブ共」

「知らない人の事とりあえずモブって言うのやめないか!」

 

 爆豪のあまりと言えばあまりの言い草に飯田がツッコミを入れる。

 

「どんなもんかと見に来たが、ずいぶん偉そうだなぁ。ヒーロー科に在籍する奴は皆こんななのかい?」

 

 爆豪や飯田がわちゃわちゃうあっていると。なんとも不名誉なセリフが聞こえてくる。

 

 声のした方を見れば、紫色の立った髪と濃い隈が特徴的な生徒がズイッと前に出てくる。

 

「こういうの見ちゃうとちょっと幻滅するなぁ」

「おいおい、たった1人だけを見て全体がそうだと決めつけるのはどうなんだ? ヒーロー科を貶める前に自分自身の価値を貶めることにならんかね?」

 

 爆豪のせいで評判が落ちるのもどうかとおもうので、委員長である俺が前に出てそう言う。

 俺の姿を見て、紫髪の生徒が一瞬あとずさり、周りの連中もざわつきだす。

 

「おい、あれ……」

「あぁ、パンイチマンだ……」

「襲撃事件の時は全裸だったらしいぜ」

「じゃあ、ゼンラーマンか」

 

 どうやら、俺は他のクラスにもその存在が知れ渡っているらしい。

 

「あんたは……」

 

 俺の姿を見て、気だるげな表情を浮かべていた紫髪くんは、わずかだが目に光を宿す。

 

「あんたの事は知ってるよ。食堂でのマスコミ侵入事件、そして(ヴィラン)襲撃事件でも大活躍だったらしいじゃないか」

「いやー、それほどでも」

「善ちゃん。多分だけど、さっきのは皮肉も入ってると思うよ」

 

 照れる俺に対し、葉隠がツッコミを入れてくる。

 

「……あんたに会ったら聞きたいと思ってたんだ。あんたの個性は確かに強いだろう。だけど、デメリットがあまりにもデカすぎる」

 

 せやろか?

 

「ヒーローを目指すと言った時も色々言われなかったか? なのに……なんで、あんたはそうやって明るくヒーローを目指せる。普通なら、心折れても仕方ないだろう」

 

 紫髪くんの言うことも一理ある。

 ちょうど、昨日叔父さんからの電話でも似たようなことを聞いてたしな。

 実際、俺がヒーローを目指すと言った時は周りからも「お前はヒーローじゃなくて(ヴィラン)向きだろ」と笑われたり、親からも一歩間違えれば世間の笑い者だと反対された。

 分かってるさ。

 脱げば脱ぐほど強くなる。いくら発光の個性があろうと、全裸なのは間違いない。

 とてもヒーローではないというのも。

 だけど……だからこそ俺は明るく振る舞う。困難を乗り越えてこそヒーローなのだ。

 

「まぁ、君の言いたいことは分からんでもない。だけど、憧れちゃったものは仕方ない

「っ!」

 

 一度、ヒーローに憧れてしまったのなら諦めきれない。

 いつか、小さいときに個性で悩んでた俺を救ってくれたヒーローのように、誰かを笑顔にするヒーローになりたいのだ。

 

「強く想う将来(ビジョン)はあるならなりふり構ってちゃダメなんだよ。……お前もそうなんだろ?」

「何?」

 

 話している途中で思い出した。

 実技試験の時、ちらっとこいつに似たやつを見た気がする。

 それが現在、ヒーロー科に居ないということは、普通科ということになる。

 そして、この雄英には体育祭のリザルトによっては、ヒーロー科編入も検討してくれるらしい。

 俺に、さっきの質問をするってことは、こいつは……まだ諦めていない。

 

「あんたの目は、まだヒーローになりたいって言っている。お前の個性がどんなんかは俺は知らない。だから知ったこっちゃないと言われればそれまでだ。だけどな……よぉく考えてみろよ? 公衆の面前だろうと、戦うたびに全裸、もしくはパンイチにならなきゃいけない奴に比べたら、たいていの奴はそれよりマシな個性だと思わん?」

 

「「「確かに!」」」

 

 紫髪くんに向けて言ったつもりだったのだが、なぜか周りの連中に大きく納得されてしまった。くそがよ。

 

「あんたの心が折れない限り……あんたはヒーローになれるよ(・・・・・・・・・)

「……く、くくく……はは! 俺の個性なんか知らないくせに、よくそこまで言えるもんだ。だけどまぁ、ちょっとだけ吹っ切れたよ」

 

 俺の言葉に突如笑い出した紫髪くんはおかしそうに腹を抱えて笑う。

 だが、先ほどまでの陰鬱とした雰囲気は纏っていなかった。

 

「俺は普通科の心操。心操人使だ。お前らヒーロー科の足元を掬いに宣戦布告に来た男だ」

「おう、受けて立つぜ」

 

 俺は紫髪……心操に手を差し出すとがっちりと握手を交わす。

 

「俺の個性であんたらを超えて見せる」

「ヒーロー科の底力見せてやるよ」

「うぉぉぉぉ、感動した!」

 

 俺と心操がお互いにニッと笑っていると、突如大声が聞こえてくる。

 ビクッとしながらもそちらを向けば、何ともメタルメタルした奴が乱入してきた。

 

「隣のB組のモンだけどよぅ‼ エラく調子づいちゃってるから警告してやろうと思ったが、えらく漢気溢れたやつもいるじゃねぇか!」

 

 そう言うと、金属男は俺と心操の手を握る。

 

「俺の名前は鉄哲徹鐵! お互い正々堂々頑張ろうぜ!」

 

 すげぇ名前だな、鉄哲徹鐵。親御さんはどういうつもりでつけたんだ鉄哲徹鐵。

 思わずフルネームで呼びたくなるぞ鉄哲徹鐵。

 

 まぁ、そんなこんなで爆豪のせいで険悪になった雰囲気は俺のファインプレーにより熱血スポコンのような空気になって解散となった。

 

 一悶着あったものの、その後の2週間はあっという間に過ぎていく。

 参加種目の決定、それに伴う個々人の準備。

 やることがたくさんあって、時間が足りないくらいだった。

 特に俺は、発光の時間制限の関係上、全力を出すタイミングというのが限られている。

 なので、主にパンイチでも充分に動けるように重点的にトレーニングをしていった。

 

 そして当日。

 

「祢伊木戸」

 

 控室で入場待機をしていると、轟が話しかけてくる。

 

「轟……どうした?」

「客観的に見ても……実力はお前の方が上だと思う。最初のオールマイトの授業でも、俺はまんまとやられたしな」

 

 あー、あれか。

 まさかいきなり建物ごと凍らされるとは思わなかったらめちゃくちゃビビったわな。

 

「お前には勝つぞ。それに、緑谷……お前にもだ」

 

 俺への宣戦布告、そしてまさかの出久への流れ弾。

 出久自身も自分に振られると思ってなかったのか「ドゥエッ⁉」と愉快な反応をしている。 

 

「おお⁉ クラス最強に宣戦布告⁉」

「轟が何を思って俺と出久に宣戦布告をしたかは知らん。だけど、皆……他の科の奴らも本気でトップを狙ってる。俺だって本気で勝ちにいくさ」

「ぼ、僕も本気で勝ちに行くよ!」

 

 と、震えながらも真面目な表情でそう宣言する出久だった。

 この体育祭、一筋縄ではいかなそうだな。

 

 

「雄英体育祭! 我こそはとシノギを削る年に1度の大バトル!」

 

 いよいよ体育祭が始まり、プレゼントマイクが大音量でアナウンスをする。

 

「どうせてめーらアレだろこいつらだろ⁉ (ヴィラン)の襲撃を受けたにも拘わらず鋼の肉体と精神で乗り越えた奇跡の新星! ヒーロー科! 1年A組だろぉぉ⁉」

 

 プレゼントマイクの紹介を背に、俺たちは入場を開始する。

 予想以上の人の多さに、選手宣誓で目立てないのをますます後悔する俺だった。

 さすがの俺も体育祭を退場は嫌だしな、自重はするさ。

 競技以外はなぁ……!

 

「選手宣誓!」

 

 そんなことを考えながら指定位置に並ぶと、ピシャンと鞭を鳴らしながら18禁ヒーローのミッドナイトが開会式を進行していく。

 ていうか、高校生相手に18禁ヒーローっていいのだろうか。

 

「アレがOKなのに俺がダメな理由がわからん」

 

 18禁とかストレートすぎるでしょ。

 

「あれ、肌色の超極薄タイツらしいぜ」

「なるほど、だがそっちの方が逆にエロくない?」

「わかる」

 

 俺のつぶやきに峰田が反応したので、俺はあほ会話を繰り広げる。

 

「静かにしなさい! 選手代表! 1-A『祢伊木戸善羅』!」

 

 峰田と話していたら怒られてしまったので、無駄話をやめ登壇する。

 

「宣誓――」

 

 そして、俺は台本通りの面白みのない選手宣誓を述べる。

 くそう、重ね重ね全裸を封じられたのが痛い。

 俺は恨みを込めた視線で相澤先生の方を見るが、目が合った先生は勝ち誇ったように鼻で笑っていた。

 

 ちなみに、全裸がダメでもパンイチならセーフじゃね? と気づいたのは、宣誓を終えて降壇した後であった。

 

「さーて、それじゃあ早速第一種目行きましょう」

「雄英ってなんでも早速だね」

 

 と、麗日がツッコんでいたけれど確かに何でもかんでもサクサクしすぎて自由にも程がある。

 

「いわゆる予選よ! 毎年ここで多くの者が涙を飲むわ(ティアドリンク)‼ さて、運命の第一種目! 今年は……」

 

 とミッドナイトが叫ぶとモニターに文字が表示される。

 

「コレ‼」

 

 障害物競走……。雄英の事だから、普通の障害物じゃないんだろうなぁ。

 

「計11クラスでの総当たりレースよ! コースはスタジアムの外周約4㎞! 我が校は自由さが売り文句! ウフフフ……コースさえ守れば何したって(・・・・・)かまわないわ!」

 

 ん? 今、何してもって。

 

「さあさあ、位置につきまくりなさい……」

 

 俺はさっそくジャージを控室においてきてパンイチになりスタート地点に着く。

 周りがざわついてこちらに注目するが、むしろ好都合。

 

「スタート!」

 

 ゲートのランプが青にかわり、一斉にスタート――

 

「させると思ったか、くらえ必殺『閃光フラッシュ』!」

「そんな頭痛が痛いみたいな目がぁ⁉」

 

 コースさえ守れば何してもいいというミッドナイトの言葉通り、俺はスタートと同時に時間最短、光量最大の閃光を放つ。

 ふはははは、卑怯汚いは敗者の戯言よ!

 

 案の定、突然の光にほぼ全員が目をふさいでいた。

 被害を免れていたのは……1-Aの連中であった。

 

「善ちゃんなら絶対にやると思ってたよ!」

「全裸じゃなくてパンイチの時点で予想できたからな!」

 

 ちぃ、普段ならありがたい信頼もこういう時に足を引っ張るな。

 

 

 こうして波乱の体育祭はスタートしたのだった。




心操攻略RTA

ぶっちゃけ、たいていの個性で腐ってる連中は主人公の「こっちは戦うたびに全裸だぜ」で封殺できると思います。
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