安心してください、履いてませんよ 作:とにかく明るかった安村
「祢伊木戸のウラのウラをかいてやったぜ、ざまぁねえってんだ! 純粋な勝負なら勝てねぇが、この競技ならオイラにもワンチャンあるぜ! くらえオイラの必殺……」
と、同じく抜け出した峰田が何かをやろうとしたのだが、それは最後まで行われることはなかった。
なぜなら、入試の時の仮想
「さぁ、いきなり障害物だ! まずは手始め……第一関門、ロボ・インフェルノ!」
ズンという地響きと共に、そこには入試の時にぶっ飛ばした0P巨大
「入試ん時の0P
「多すぎて通れねぇ!」
と、周りの生徒達も巨大
「どこからお金が出てくるのかしら……」
皆が驚いている中、八百万はちょっと的外れな感想を述べていた。
……たしかにどっからお金が出てるんだろうとは思うけども。
とまぁ、それはおいておいて……皆が立ち止まっている今がチャンスだ。
目立つにはまたとないチャンスである。
「空蝉!」
俺は高速脱衣術により素早くパンツを脱ぎ、股間を光らせながら空高く跳躍する。
『うわぁ、話には聞いてたがさっそくやりやがった祢伊木戸ぉ! 一応、初見の奴らに言っとくがあれは趣味じゃなくて個性のせいらしいから変態扱いしてやるなよぉ!』
『個性のせい、というのもあるだろうが大半は奴の趣味な気がするがな』
プレゼントマイクのせっかくのフォローを相澤先生が台無しにする。
まったく、あの人はいちいち俺に辛辣だが何か恨みでもあるのだろうか。
こんなに優等生だというのに。
「とまぁ、そんなことよりもロボ・インフェルノとやら。せいぜい俺の役に立ってくれよなぁ! 裸拳!」
ロボ・インフェルノに向かって飛びながら拳を強く握り、ぶんなぐろうとした直前、ロボはパキパキと一瞬で氷づく。
俺はそれに一瞬驚くも、勢いを止めることができずそのまま打ち砕いた。
「チッ」
下を見れば、轟がこちらを見ながら舌打ちをするのが見える。
なるほど、通るために凍らせたところを俺が打ち砕いたってわけか。
意図しない協力プレイに納得いかないって感じだが、俺としてはド派手に決められたので悪い気はしない。
『1-A、祢伊木戸と轟! 協力攻撃で巨大な障害を粉砕だぁ! なんかもうチートだな!』
プレゼントマイクの実況に轟は不満そうな顔を隠そうともしない。
……ふむ、入場前の態度といい何やら闇を抱えてそうだな。
と、俺は再びパンツを履きながらそんなことを考える。
全力を出すなら常に全裸の方がいいのだが、発光には時間制限とインターバルがある以上そうはいかない。
さすがに公衆の面前でおっぴろげになるほど俺の性格は終わっていない。
普段はパンイチで行動し、いざという時は全裸……という感じで競技をこなすのが俺の今回の方針である。
「オイオイオイ、あっさり第1関門越えちまって物足りなさそうだなトップ組! だが次はどうかな? 第2関門、落ちればアウト! それが嫌なら這いずりな! 『ザ・フォール』!」
俺が第2関門へやってくると、そこには飛び石のように転々とする地面とそれを繋ぐロープだった。
「先に行くぞ」
目の前の光景に一瞬躊躇したすきに、轟はぼそりと呟きながらロープの上を走っていく。
個性も強力だが、素の身体能力が高いな轟は。
だが、この俺に身体能力で挑むなど片腹痛い。
要は、ここを渡れればいいのでわざわざロープを使う必要はない。
これくらいなら、まだパンツも脱ぐ必要はないだろう。
「ということで……ふんぬらば!」
俺はクラウチングスタートの態勢になると、そのまま地面を蹴り上げロケットのように地面に飛び移り、そのまま間髪入れずに地面を蹴り飛んでいく。
『轟の身体能力も中々だが、そもそもロープ使わねぇってもう無茶苦茶だな祢伊木戸は!』
『あいつを常識の範疇で考えるだけ無駄だぞ』
ふははは、もっと褒め称えるがいいさ。
「ということで、お先にな轟」
俺はさっきの意趣返しとばかりに、すれ違いざまにそう言いながら向こう岸へとたどり着くのだった。
◇
【第三者SIDE】
「1位の奴、圧倒的だな」
「増強系の個性だろうが、それを信じられないくらい十全に活かしてやがる」
目の前で繰り広げられる光景を見て、観客たちが口々に感想を述べる。
「普通なら脱ぐだけでも躊躇するってーのに、まるで躊躇いがないな」
「目的の為なら自身の身は一切顧みないというのはある意味プロヒーローにふさわしいメンタルだ」
と、もしも祢伊木戸に聞こえていたらすさまじいほどに天狗になっているくらいには褒め称える観客。
「だけど、全裸はなぁ」
「……だなぁ。しかも光るって、別の意味で個性が強すぎる」
「メディアとしては間違いなく目立つんだろうが、サイドキックとして雇うなら相応の覚悟が必要だな」
と、光る全裸に対して、プロヒーローでさえも少しばかり引いているのだった。
◇
【祢伊木戸SIDE】
飛び地地帯を抜けてやってきたのは、一見何もない広場だった。
『早くも最終関門! かくしてその実態は……一面地雷原! 怒りのアフガンだ! 地雷の位置はよく見りゃ分かる仕様になってんぞ! 目と脚酷使しろ!』
地雷って……そんなん学生の体育祭に出していいシロモンじゃないだろう。
プレゼントマイク曰く威力は大したことはないらしいが。
ちらりと後ろ見れば、轟が猛追。そして、その後ろから爆発太郎こと爆豪が地響き立てながら追ってくる。
割と突き放したと思ったんだが、さすがは雄英。
他の奴らも只者じゃないな。
ならば、ここで手加減するのも失礼というもの。
『おーっと、ここで祢伊木戸がまたパンツに手をかける! お前、やっぱ全裸になるの趣味だろ!』
プレゼントマイクの野次のような実況を無視し、俺は再び全裸になる。
そして、そのまま地雷原を走り出す。
目を酷使? 地雷の威力が弱いというのなら酷使する必要などない。
そもそも見つける必要もないのだ。
何も考えず走っていると、カチッという音が聞こえ地雷が爆発する音が聞こえる。
だが、全裸状態の俺は(自称)オールマイト並。
地雷が爆発するころには、はるか前方である。
これが地雷原全体とかの広範囲高威力だったら、流石に少しは考えるが、これくらいの規模であれば障害にすらならない。
『ふぁー⁉ なんだあれ! もはや弾丸じゃねーか! あいつの個性バグってんじゃねーのか! なぁ、イレイザーヘッド!」
『俺に聞くな』
実況がなにやら騒がしいが、俺はそんなことも気にせず無傷で通り抜ける。
だが、この時の俺はまだ気づいていなかった。
己の個性にかまけて慢心していたせいで、致命的なミスをおかしていたことに……。
『さぁさぁもはや予想通りというか大半はやっぱりなと思うかもしれねーが、圧倒的速さでスタジアムへ帰ってきて――今、祢伊木戸善羅が1位でゴールだぁ! 大昔ののオリンピックは全裸でやってたというがその体現者が現代に復活だぜぇ!』
プレゼントマイクの実況と、観客の喝采を浴びながらゴールを迎え、落ち着いたことで俺は気づく。
気づいてしまった。
『さあ続々とゴールインだ! 順位などは後でまとめるからとりあえずお疲れ‼』
その後も実況は続くが、今の俺はそれどころではない。
刻一刻と迫る時間に、俺は冷や汗が止まらなかった。
「はぁ……はぁ……くっそー、2位かー。やっぱり善羅くんは強いね」
俺が空前絶後のピンチに襲われていると、汗だくの出久がやってくる。
2位と3位は轟と爆豪だと思っていたんだが、思わぬ結果だな。
だが、今の俺には出久を素直に称賛する余裕がない。
「って、どうしたの⁉ すごい汗だよ⁉」
「出久、非常にまずいことになった」
「えっ、け、怪我でもしたの?」
「……が」
「え?」
「パンツが……ボロボロになっていた」
俺はそう言って、右手に持っていたパンツだったものを見せる。
それは、俺の超スピードと爆風によりボロボロになり、ただの布切れとなっていた。
さすがに、これをパンツとして身に着けるにはあまりにも心もとない。
「え、えぇぇぇぇ⁉ それパンツなの⁉ ていうか、着替えは⁉」
「ジャージは控室。パンツの替えはない。そして、時間的に俺の発光が切れそう」
思えば、ゴールしてすぐに控室に向かえばよかったのだが、焦りすぎてその考えに至らず、俺の股間は文字通り風前の灯火である。
「と、とにかく今すぐ控室に行こう! 僕が頑張って隠すから」
「出久……天使かお前?」
まさか、葉隠以外にも天使がいたとは……結婚しよ?
その後、出久Withクラスの男子連中が俺を囲むようにして股間を隠してくれたため、俺は退場処分にならずにジャージに着替えることができたのだった。
ありがとう、お前ら。最高の仲間だぜ……!
主人公、弱体化!(ノーパンズボンマン)
当初は脱ぐのにある程度抵抗のある主人公にしようと思ったのですが、なんでこうなったのかは私にもわかりません。