安心してください、履いてませんよ 作:とにかく明るかった安村
透明だからってためらいなく全裸になる胆力が好き
――雄英高校、それは個性と呼ばれる超常能力が日常となったこの世界で誕生したヒーローを養成する科のある日本でもトップクラスの学校だ。
誰もがヒーローを目指すならばここと言われるくらいに人気の学校であり、偏差値79、入試倍率300倍と言われる超難関校である。
俺、祢伊木戸 善羅もヒーローを目指す中学3年生だ。
個性は強力ではあるがヒーロー向きではないとさんざん言われてきつつも、それでもあきらめきれずにこうしてやってきたわけだ。
……それにしても、でけぇな雄英!
普通の学校の何倍あるんだって話だ。
敷地も尋常じゃないくらい広いと聞いているし、トップクラスの学校は伊達じゃないということだ。
「あたっ」
「んあ⁉」
目の前の巨大な校舎に目を奪われながら歩いていると、目の前の誰かにぶつかってしまう。
「あっと、ごめん。よそ見して……て……?」
ぶつかった相手に謝るべく目線を目の前に向けると、そこには不可思議な光景が広がっていた。
なんと、どこかの学校の女子制服が浮いているのである。
頭や手足などあるべきものがなく、服だけがそこにあった。
「うーうん! 私もボーっとしてたから気にしないで!」
俺が呆気にとられていると、女子制服が話しかけてくる。
いや、声のした場所は本来頭がある場所から聞こえてきた。
「えっと……」
「あ、ごめんごめん! 私は葉隠透! 個性の関係で常に透明なんだ!」
俺の表情に気が付いたのか葉隠はオーバーアクションでワチャワチャしながらそう説明する。
ふむ……顔こそ見えないが、なんだかくっそ美少女な予感がする。
「それにしても、君めっちゃイケメンだね! 君も雄英の入試を受けに来たの? って、ここに居るんだから当たり前か! 名前は⁉」
なんかめっちゃぐいぐい来るなこの子。
コミュ力くそ強女の子は好きですか? はい大好きです。
「俺は祢伊木戸 善羅。個性は……あー……」
「あーいいよいいよ! お互いライバルだからね、個性は迂闊に話せないよね。気にしないで善ちゃん」
何この子天使か?
会っていきなり愛称呼びもそうだが、自分は個性を話したのに俺には話さなくていいとか天使過ぎて同級生の性癖歪んじゃうでしょ。
「違う違う。個性を秘密にしたいんじゃなくて、どう説明しようか迷っててさ」
俺の個性は『全裸無双』。
脱げば脱ぐほど強くなり、全裸になるとほぼ最強となる増強型の中でもトップクラスと自負している強個性だ。
副次効果なのかなんなのか分からないが、時間制限付きで光ることもできる。
が、それをいくらコミュ強とはいえ初対面の女子に全裸になると無敵です、とは説明できない。
「んーと、俺の個性は……そうだな……とりあえず条件付きでどんどん強くなる増強型ってところかな」
「なるほど、増強型ね! シンプルだからこそ強個性多よね。その条件が気になるところではあるけど、さすがにそこまで根掘り葉掘り聞くのは遠慮しておくね」
根掘り葉掘りってよぉ……じゃなくて、葉隠は俺の曖昧な説明に対してもウンウンと納得したようなアクションを取る。
「おっと話し込んじゃってごめんね。私、人と話すの大好きでさ。迷惑だった?」
「いや、俺も一人で来てて緊張してたし、葉隠と話せてよかったよ」
「えへへ、よかった。それじゃ、私はもう行くね! お互いライバルだけど頑張ろうね!」
葉隠はそう言うと、ブンブンと手を振りながら校舎の中へと入っていく。
……彼女と同じ学校に入れたら学校生活も楽しくなりそうだな。
まぁ、倍率も高いしむずかしそうではあるが、希望を持つのは自由だろう。
俺はそんなことを考えながら校舎へと向かうのだった。
◇
「今日は俺のライヴにようこそー!! エヴィバディセイヘイ!!」
広大なホールに集められた先の壇上で、ボイスヒーローの『プレゼントマイク』が叫ぶ。
現在、筆記試験を終えた俺たちは実技試験の説明という名目で集められていた。
試験内容は10分間の『模擬市街地演習』。3種の仮想
いかにも俺向きの試験だと内心ガッツポーズをする。
途中、眼鏡をかけた真面目そうな奴がプレゼントマイクに質問して『0Pのお邪魔虫』について聞いたりしつつも説明会は終了し、俺たちは試験会場へと向かうのだった。
「広すぎんだろ」
そして、いざ演習場にやってくると、そのデカさに俺は度肝を抜かれる。
演習場とは言いつつも、もはや完全に街である。
改めて雄英のやばさを見せつけられた感じだ。
「あ、善ちゃーん!」
雄英のやばさに恐れおののいていると、聞き覚えのある声と共にジャージがこちらへ向かってくる。
というか葉隠だった。
「一緒のグループだったんだね。これはますますライバルですなぁ……負けないよぉ!」
葉隠は、そう言うとフンスフンスと鼻息を荒くして腕をぶんぶんと降りまわす。
透明とはいえ女子と仲良く話しているのが目障りなのか、周りの男子連中からは怨嗟の視線が向けられる。
ふはははは! モブ共の嫉妬が心地よいわ!
「善ちゃん、半そで短パンなんだね。寒くない?」
時期を考えると確かにまだ肌寒いだろうが、これも試験対策なのだ。
全裸になればなるほど強くはなるが、もちろんある程度露出が高くても強くなる。
さすがに試験でいきなり全裸にはなれないので、まずは半袖半ズボンで様子を見ようというわけだ。
もしそれで苦戦するようなら、最悪パンイチで挑む所存である。
試験時間は10分間。一瞬の判断が明暗を分けるだろうから、そこらへんは間違えないようにしないといけない。
「まぁ、これも個性の都合でね。それより、葉隠の方こそ大丈夫か? 俺の個性は戦闘向きだけど……」
詳しいことは聞いていないので何ともいえないが、もし葉隠の個性が透明化だけだとするとこの試験は少々不利なんじゃないかと感じている。
「あはは、心配ありがと。まぁ……ちょーっとばかし大変だけど、私なりに頑張るよ! 雄英入りたいしね!」
やはり不利なのか。
できれば彼女を手伝ってあげたいが、これは試験。彼女自身も望まないだろう。
「そっか。まぁ、ライバル同士だけど応援してるよ。お互い頑張ろうな」
「うん!」
『ハイスタートー!』
俺と葉隠が話していると、唐突にプレゼントマイクの声が響く。
『どうしたぁ⁉ 実戦じゃカウントなんざねぇんだよ‼ 走れ走れぇ‼ 賽は投げられてんぞ!』
「うおお、マジかよ!」
「ごめんね、善ちゃんまたあとでね!」
プレゼントマイクのアナウンスを皮切りに受験者たちが一斉に走り出す。
俺も負けじと試験会場へと向かう。
試験会場にやってくると、説明のあった仮想
いや、思ったよりでけぇな!
「だけど、俺の敵じゃあ……ねぇ!」
一瞬ビビりはしたがすぐに気を取り直すと、俺は拳を握りそのまま仮想
仮想
――よし、半そで短パン状態でも戦える!
充分活躍できることを察した俺は、そのまま仮想
◇
「っし、結構稼いだろ!」
それからどれくらいの時間が経っただろうか。
そろそろ標的の数も少なくなってきたと感じた頃、メキメキと建物を破壊しながら見上げる程に巨大な仮想
(所狭しと大暴れするギミックとは聞いてたが……デカすぎない⁉)
流石にこれは受験生が相手できるレベルではないだろう。
その巨大
当然だ。ただでさえとんでもなくデカイ上に倒しても0P。
今回の試験において、倒すメリットが全くない敵なのだから。
「俺も逃げ……」
「だれかぁ~」
ともすれば、聞き逃してしまいそうなほどに小さな声。
だが、身体能力が上がっている俺には確かに聞こえた。
そちらを向けば一見何もなく瓦礫が崩れているだけ。
逃げている受験生たちも、声に反応し一瞬見渡すが、首を傾げつつもすぐに走り出す。
俺も、前情報がなければ見落としていただろう。
だが……俺は知っている。俺だけが知っている。
「葉隠! どこだ!」
そこには透明化の個性を持つ葉隠が居ると。
「善ちゃん! ここ! 瓦礫のとこ! 逃げ遅れて挟まっちゃった!」
俺の声に気づいたのか、バンバンと地面を叩きながらアピールする葉隠。
開始前に着ていたジャージが見当たらないということは、今は全裸なのだろう。
全裸⁉
おいおい、花のJCがためらいなく全裸かよヒュー!
……なんてあほなことを考えている場合じゃない。
例のお邪魔
おいおい、試験で死人を出す気かよ!
迷っている暇はないと確信した俺は、すぐさま葉隠に声をかける。
「葉隠! 今から全裸になるがお前を助けるためだから他意はない!」
「どゆこと⁉」
俺の言葉に慌てる葉隠だったが説明している暇はない。
「空蝉!」
俺は長年の研鑽により編み出した脱衣術『空蝉』により一瞬で全裸になる。
もちろん、女子の前なので謎の光も忘れない。
「ひゃあ、善ちゃんの善ちゃんが光ってる!」
割と余裕あるな葉隠ェ!
葉隠の言動にツッコみながらも、俺は迫ってくるお邪魔
「ふんぬらば!」
「うええ⁉ 大丈夫なの善ちゃん⁉」
「これくらいなら、余裕……だっ……とぉ!」
俺はお邪魔
「葉隠、動けるか?」
「……うん、だいじょぶそう!」
「じゃあ、そのまま逃げろ」
「善ちゃんは?」
「俺は大丈夫だ」
何せ今の俺は全裸。
全盛期オールマイトでもなければ、俺に傷一つ付けることはできない。
「……分かった、善ちゃんを信じるよ!」
今日会ったばかりにもかかわらず、葉隠は俺の言葉を信じるとそのまま走り去る音が聞こえる。
「善ちゃーん! もうそこから逃げたよぉ!」
そして、遠くから聞こえてくる葉隠の声。
ならば、もう遠慮はいらない。
「さっきから、俺の上で暴れやがって……邪魔なんだよこらぁ!」
俺は、自分の上に乗っているお邪魔
バランスを崩したお邪魔
「ぶっとべぇ! ネイキッドスマッシュ!」
思いっきり力を込め、俺はお邪魔
『終ー了ー‼』
そして、同時にプレゼントマイクのアナウンスが響き渡るのだった。
ちなみに主人公は公衆の面前でなければ謎の光は出しません。