安心してください、履いてませんよ 作:とにかく明るかった安村
空蝉は一瞬で服を脱ぐ脱衣術
その反対に「神衣(かむい)」という一瞬で服を着る着衣術があります。
暗闇が支配する部屋の中、雄英の教師たちが集まりモニターを注視する。
「実技総合、成績出ました」
そこには、先日行われた雄英高校の入試、実技試験の結果が映し出されていた。
様々な受験生の名前が並ぶ中、1位には『祢伊木戸善羅』の名前。
そして、2位には爆豪の名前があった。
「いやー、しかし今年の試験は驚いたねぇ」
「アレに立ち向かったのは過去にも居たけど、まさかぶっ飛ばしちゃうのは久しく見てないね。しかも同じ日に2回も」
「緑谷か。あそこ以外は典型的な不合格者だったから驚いたよ。今年は豊作だな」
「思わずYEAH!って言っちゃったからなー」
教師たちは、大いに盛り上がっていた。
「まぁ、ぶっ飛ばしたのは素直に驚くけど首席合格の彼……なんというかすごい個性だね」
「話には聞いてたけど、まさかためらいもなく脱ぎ出すとは。まぁ、誰かを助けるために自身の身を厭わないって意味ではヒーロー向きではあるね」
「精神性は確かにヒーローではある、公の場でアレはどうなのって気がするけども」
「光ってたからセーフじゃない? 芸人でも似たようないるからいけるいける」
「まぁ、光ってたしね」
「うん、光ってたし」
――という感じで、祢伊木戸の全裸問題に関しては光ってたからセーフということで落ち着いたのだった。
◇
春。それは出会いと別れの季節。
俺は中学を卒業し、晴れて雄英高校に入学することと相成った。
合格を告げたときに「全裸なのに合格できたの⁉」とのたまった元同級生たちは全員どついておいた。
そんな感じでいろいろあったものの、今日から俺は雄英生徒。
ヒーローになるための第一歩を踏み出したのである。
「ドアでっか」
広い校舎を進み、俺は自分のクラスである1-Aへとやってくる。
そして、見上げるほどにデカいドアに軽く圧倒される。
おそらく、大型の生徒のための配慮なのだろうが、ほんとに雄英は何もかもスケールが違い過ぎる。
入試の時からもう何度驚かされたか分からない。
「あ、善ちゃーん!」
中に入ろうとしたとき、聞き覚えのある声が聞こえてくる。
そちらを向けば、葉隠が(おそらく)手を振りながらこちらへとテテテと近づいてきた。
「善ちゃんも受かったんだね! あんなでっかいのをバーンとやっつけたんだから当然か!」
「いや、あの時は葉隠を助けなきゃって思って。それよりも葉隠も受かってたんだな。お前も1-A?」
「そだよ! ってことは善ちゃんも? へへ、やったね」
俺の言葉に葉隠は嬉しそうにはにかむ。
うーん天使か?
葉隠の性格からして誰にでもこういう態度なのだろうが、俺でなければ勘違いしていたところだぞ。結婚しよ?
「でもさー、助けてもらってあれだけどあの時はびっくりしたよー」
中へと入りながら葉隠がそんなことを言う。
「助けるためだー、とか言っていきなり全裸になるんだもん。もしかして、個性説明するときに困ってたのってあれが理由?」
「んん……まぁ、白状するとそうだな。俺の個性は脱げば脱ぐほど強くなって全裸になると、ほぼ最強状態なんだ」
「凄いけど、脱がなきゃいけないなんて難儀な個性だねぇ」
「そういう葉隠もあの時は……いや、セクハラだなこれ」
「大丈夫大丈夫! へへ、お互い裸になると真価を発揮できるとかお揃いだぁ」
んんんんん、勘違いさせるの得意かぁ!
やばい、葉隠のコミュ強っぷりにドキドキが止まらない。
「あー、あの時の全裸!」
俺が葉隠の小悪魔(天使)っぷりにどぎまぎしていると、そんな声が聞こえる。
近づいてきたのは稲妻模様のメッシュの入った金髪のなんかチャラそうなやつ。
「試験の時見てたぞ俺! あんなでけーのぶっ飛ばすなんてすげーよな! 全裸だったけど!」
大声で全裸なんて言うもんだから、周りの連中もざわざわしながらこちらに注目する。
「いやまぁ、全裸になったのは何というか個性の関係でな」
「なるほど! いやでもすげーのは変わりねぇよ!」
俺の言葉に、チャラ男くんは良い笑顔でうなずく。
「おっと、自己紹介がまだだったな。俺は上鳴電気! 個性は帯電。体に電気を纏わせて放出する事ができるんだ。……まぁ、ちょっと欠点もあるけどな」
「私は葉隠透! 個性は見ての通りの透明化! 常時発動型だからいつもステルス状態だよ」
「祢伊木戸善羅だ。個性は……あー、服を脱げば脱ぐほど強くなる。全裸状態でほぼ最強になる」
葉隠に続いて俺がそう自己紹介すると上鳴は納得したようにうなずく。
「なるほど、だからあん時全裸だったんだな」
「あと、善ちゃん光るよね。もうピッカピカ」
「光るのかよウケる」
ウケられた。
「お友達ごっこしたいなら他所へ行け」
俺が葉隠たちと話していると、いつからそこに居たのか寝袋に入って廊下で寝転がるむさい男の姿がそこにあった。
おいおい、天下の雄英に不審者が紛れてるぞ。警備はどうなってんだ警備は。
「ここは……ヒーロー科だぞ」
突然の登場に俺たちが固まっていると、そんな事おかまいなしにと男は数秒でチャージできるアレを一瞬で飲み干しながら寝袋から這いずり出てくる。
その姿は異様の一言に尽き、先ほどまでざわついていた教室も一瞬で静かになった。
「ハイ、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限。君達は合理性に欠くね……担任の相澤消太だ。よろしくね」
担任かよ!
まさかの不審者が担任ということに驚きを隠せない。
他のクラスメイトも同様で驚きの表情を浮かべている者は少なくなかった。
「早速だが、コレ着てグラウンドに出ろ」
そう言って相澤先生が寝袋から取り出したのは、体操服だった。
……どういうこと?
◇
「個性把握……テストォ⁉」
何の説明もないまま体操服に着替えさせられ、グラウンドで告げられた言葉にクラスメイト達がざわつく。
相澤先生曰く、中学まで禁止されていた個性を使用した体力テストで現在、どこまでできるかを把握したいとの事だった。
いくら、自由が売りの校風とはいえ、入学式やガイダンスを無視してまで体力テストを行うとか自由にもほどがある。
「爆豪、中学の時ソフトボール投げ何mだった?」
相澤先生は俺の方に一瞬目線を向けるとすぐに逸らし、爆豪と呼ばれた少年に話しかける。
あれはたしかヘドロ事件の被害者だったか……爆発系の個性で将来有望とのことだ。
それにしても、なぜ先生は俺から目を逸らしたのだろうか?
「67m」
「じゃあ個性を使ってやってみろ。円から出なきゃ何してもいい。はよ」
相澤先生の言葉に、爆豪は軽くストレッチするとそのまま手のひらを爆発させボールをぶん投げる。
「死ねえ‼」
死ね?
「まず、自分の最大限を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段だ」
急に出てきた暴言などお構いなしに相澤先生が見せてきたパネルには『705.2m』と表示されていた。
「個性思いっきり使えるとか流石ヒーロー科! すげー面白そう!」
と、皆は個性を使ったスポーツテストが出来ることにテンションが上がっていた。
一方で、そんな皆を相澤先生は冷ややかな目で見てくる。
「面白そう……か。ヒーローになる為の3年間。そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい? ……よし、トータル成績最下位の者は見込み無しと判断し、除籍処分としよう」
は?除籍⁉ おいおい、いくら自由が売りの雄英と言えどそれは自由が過ぎるだろ。
「生徒の如何は先生の自由。ようこそ、これが……雄英高校ヒーロー科だ」
ざわつくクラスメイトをよそに相澤先生はそう言い放つ。
……しかし、シリアスを決めてるところ大変申し訳ないのだが、俺にはどうしても聞きたいことがあった。
除籍が関わっているとなれば、聞かざるを得ない。
「相澤先生、重要な質問が1つだけあります」
「……なんだ、祢伊木戸」
「個性をいかんなく発揮していいということでしたが……それは、俺に全裸になっていいという許可で問題ないでしょうか?」
そう、個性を把握するテストということであれば俺は全裸になる必要がある。
十全に結果を出すというのならそうしなければならない。
故に! 俺は全裸になっていいかを聞かなければいけないのである!
「ぜ、全裸って急に何言い出すんですの⁉」
「ぎゃはははは! おもしーれな善羅! 脱げ脱げぇ!」
前髪の右側だけを下ろし、ストレートの長髪をポニーテールにまとめているツリ目気味の美少女が「まぁ!」と顔を赤くしながら驚いている一方で上鳴が腹を抱えて笑いだす。
まぁ、俺の個性を知らなければただの変態発言だよな。
「最下位は除籍という条件を設けられてしまっては、俺も本気を出さざるを得ません。そして、本気を出すためには全裸にならなければいけません。そこのところどうでしょうか?」
周りの野次をスルーしつつ、俺は再度相澤先生に問いかける。
「…………許可する。これは、個性把握テストであり、万全の状態で確認するのが合理的だからな」
ながーい沈黙の後、ものすごい渋い顔をしながら相澤先生は全裸になる許可を出して来るのだった。
やったぜ
次回、おちんちんランド開園