安心してください、履いてませんよ   作:とにかく明るかった安村

4 / 13
個性把握お〇ん〇んランド

 ――第1種目『50m走』

 

「ぬおりゃああああ!」

「光る変態だぁぁぁぁ!」

「オイラ、後ろ走ってたんだけど、無駄に引き締まったケツをモロに見ちまったぜ……。網膜に焼きついて離れねぇ……っ」

 

 

 俺、全裸で走り抜け1位!

 

 

 ――第2種目『握力』

 

「ふんぬらば!」

「おい、無駄にきれいなポーズ取んな!」

「股間が光で見えないせいで逆に注目しちゃうんだけど!」

「そして、ふざけた格好とポーズからの結果がえぐい!」

 

 俺、全裸のまま握力をいかんなく発揮し1位!

 

 

 ――第3種目『立ち幅跳び』

 

「アイキャンフラーイ!」

「空飛ぶ変態だ!」

「ジャンプ力高すぎんだろ!」

「砂舞わせながらポーズ決めるな!」

 

 

 ――第4種も「相澤先生! アイツのせいで俺たち集中できません!」

 

 俺が個性把握テストで華麗な成績をおさめているとクラスの連中から不満の声が上がる。

 

「全裸になるのは、まぁ個性の関係だから仕方ないと諦めるよ」

「何が嫌って顔がイケメンな上に、体が無駄に鍛えられてていい体してるのが嫌だ」

「何を言う。ヒーローを目指す以上、鍛えるのは当たり前だろ。もしこれがぶよぶよの体で戦っていたら不快だろう? 正義のために戦うヒーローである以上、民衆の不快感を少しでもなくすのがヒーローというものだ」

 

 ムンッと力を入れポージングしながら俺はそう説明する。

 ちなみに、発光の制限の関係で今は服を着ている。

 

「意識高いのがなおさら嫌だなぁ……」

「それにな、俺にばっか注目しているが、葉隠だってすぐ脱ぐぞ」

「ちょっと人を露出狂みたいに言わないでよ! 私はステルス性を高めるときだけだよ脱ぐのは!」

 

 俺の言葉に、葉隠が着ているジャージをパタパタ動かしながら葉隠が抗議してくる。

 

「でも、個性の都合で全裸にはなるだろ?」

「いやまぁ……それはそうだけど……」

「俺の個性と葉隠の個性。到達点が同じならそこに何の違いもありゃしねぇんだ!」

「そうかな……そうかも……?」

「落ち着け葉隠。こいつの言ってることはめちゃくちゃだぞ」

 

 あとちょっとで葉隠を洗のもとい説得できそうだったところで朱色に近い赤色の瞳と逆立った真っ赤な髪が特徴的な男が話しかけてくる。

 その言葉に葉隠もハッと我に返っているようだった。

 

 ちぃ、余計なことを!

 

「ありがとう、あやうく善ちゃんに騙されるところだったよ……っ。えっと」

「俺は切島鋭児郎だ。よろしくな」

「うん、よろしく!」

 

 切島鋭児郎か、その名前と面ぁ覚えたぜ。

 ……というか、よく考えたら俺たちは自己紹介もなしにいきなりテストやってんだよな。すげぇや雄英。

 

「はい、無駄話はそこまで。これ以上続けるなら終了待たずに除籍してやってもいいんだぞ」

 

 俺たちが話していると、蚊帳の外だった相澤先生が割って入ってくる。

 

「お前たちが言いたいことも分からんでもない。こいつは、あまりにもふざけすぎている」

 

 ひどない?

 

「だが、これからヒーローを目指すなら覚えておけ。常識の枠におさまらない(ヴィラン)っていうのはこれからいくらでも出てくる。なんなら、個性とか関係なしに見られることで興奮する奴なんてのも居たくらいだ」

「そいつはとんでもない変態ですね」

 

 相澤先生の言葉に同意するようにうなずくと、なぜかクラスの皆から白い目で見られた。解せぬ。

 

「本番でそういう奴と出くわして、いちいち集中できないとか文句を言うか? もしそんな奴がいたらそいつはヒーロー失格だ。どんな状況、どんな相手であっても全力を尽くせるのがヒーローだ。祢伊木戸に関しては予行演習とでも思っておけ」

 

 おかしい、俺は除籍されないように本気を出しているだけなのになぜか変態のそしりを受けている。

 

「まぁ、色々言いはしたが祢伊木戸。お前も少々悪ふざけが過ぎるから真面目にやれ」

「うす」

 

 とまぁ、そんな感じで紆余曲折あったものの個性把握テストは再開される。

 

 

 ――改めて第4種目『反復横跳び』

 

「見よ、これが光速反復横跳びだ!」

「ぐわああああああ、股間の光が揺れてるのが嫌すぎる!」

「祢伊木戸」

「うっす」

 

 いやでもこれは仕方なくない?

 今のは流石に不可抗力だと思うのだが、相澤先生の目がガチだったので大人しく頷いておくことにした。

 これが教育現場の闇か……。

 

 

 ちなみに、もちろんこれも1位突破である。

 

 そして第5種目であるボール投げがやってきた。

 

「それにしても謎だな」

「何がだ?」

 

 順番待ちをしていると、隣に並んでいた眼鏡をかけたいかにも委員長と言った男――確か、教室では飯田と名乗っていたな――がポツリと呟いていた内容が気になっていたので聞いてみる。

 

「いや、今からボール投げを行う彼……緑谷くんというのだが、彼は試験であの0Pのお邪魔(ヴィラン)を個性で破壊していたんだ。それだけ強力な個性があるにもかかわらず、ずいぶんと成績が振るわないなと思ってな」

 

 ほーん、あのお邪魔(ヴィラン)をぶっ飛ばした奴が俺以外にも居たんだな。

 そんな感じで視線を動かせば、もはもはな緑髪の少年がガチガチに緊張していた。

 

 そしてボールを投げようとするも、相澤先生の個性によって使おうとしていた個性を消され凡庸な成績となる。

 はー、名前だけは聞いたことあったがアングラ系のヒーローまで教師をやってるのか。

 

「つくづくあの入試は合理性に欠くよ。お前のような奴も入学できてしまう。見たとこ……個性を制御できないんだろ? また行動不能になって誰かに救けてもらうつもりだったか?」

 

 個性が制御できない?

 そんな、まるで発現したての幼児でもあるまいし……。

 かくいう俺も幼少期のころは大変だった。なにせ、子供の事は善悪の区別もついておらず、力の制御もできない。

 何度、うっかり風呂を壊したことか。

 あの時は、個性を特別なものと考えて爆弾にでも触るかのように慎重に接してきたものだ。

 ひたすら自分の個性に向き合い、今ではこうして立派に使いこなしているのだから感慨深い。

 

 俺が感慨にふけっている間も、緑谷はこの世の終わりのような顔をしながらブツブツとひたすらに何かを呟いている。いやこえーわ。

 

 ……ふむ。

 

「先生、ちょっとタイム」

「なんだ、今は緑谷の番だぞ」

 

 俺が手を挙げてアピールすると、相澤先生はこちらをジロリと睨んでくる。

 

「すみません、ちょっと緑谷に話がありまして」

「え、ぼ、僕⁉」

 

 自分に話を振られると思っていなかったのか、緑谷はブツブツモードを解除すると驚いたようにこちらを振り向く。

 

「ちょっとだけアドバイスをね」

「祢伊木戸、テストでそれは「特に禁止してなかったですよね?」む」

「先生としても見込みがあるかどうかを見たいんですよね? もし、仮に俺が助言をしてもどうにもならなかったらそれこそ見込みなしってことになりません?」

「随分とお節介なんだな。お前と緑谷は初対面だろう?」

 

 確かに、俺と緑谷は初対面だ。

 だが、同じ日にお邪魔(ヴィラン)をぶっ飛ばした。

 しかも、飯田の話ではあそこのほわほわ少女を助けるためらしい。

 

 奇しくも俺と同じ状況。しかも、俺と同じ増強型の個性でかつての俺のように困っているとなれば、少しばかり情が湧くもの仕方ないといえよう。

 

「お節介はヒーローの本質ですよ。困っている人が居れば助けたくなるのがヒーローなんです」

「……ふん、まるでどこかの誰かさんを思い出すセリフだな。まぁいい、少しだけだぞ」

 

 相澤先生のその言葉に礼を言うと、俺は緑谷を手招きで呼び出し隅の方へ行く。

 

「え、ええっと祢伊木戸くん……だっけ? 僕に何の話が……」

「善羅でいいよ。それよりも緑谷、下の名前は?」

「い、出久だけど」

 

 おーけー、出久ね。

 

「出久くんよ。もし違ったら申し訳ないんだけど、もしかして個性って発現したばっか?」

「うえっ⁉ あ、あの、その……」

 

 俺の問いに対し、出久は露骨に狼狽える。

 嘘とか付けないタイプなんだろうなぁ。

 そういう奴嫌いじゃないよ?

 

「うん、その反応で分かったわ。まぁ、この年齢で発現ってかなり珍しいけども、何事も例外ってあるからね。君にも事情があるだろうから深く突っ込まないでおくよ」

「あ、ありがとう。詳しいことは言えないけど、君の言う通り発現して間もなくて上手く調整できないんだ」

 

 やっぱな、幼少期の俺とダブったのは勘違いじゃなかったってわけだ。

 

「入試の時にくそでかいお邪魔(ヴィラン)をぶっ飛ばしたって聞いた。話を聞く限りじゃあ、お前も俺と同じだ」

「え、いや僕は全裸になる趣味は……」

 

 そっちじゃねーわ。意外といい根性してるな出久くんよぉ!

 

「個性のタイプだよ個性の。増強型」

「ああそっちね」

 

 むしろそっちしかねーよ。

 

「お前は昔の俺だ。個性を特別に考えすぎてる。だから意識して調整しようとし過ぎてうまくいかないんだ。俺も昔はうまく調整できなくてな、風呂入るのが怖かったんだ」

 

 本来落ち着けるはずの風呂でまったく落ち着けないってのはすげぇストレスだった。

 着替えとかもめちゃくちゃ神経使ったし。

 

 だが、ある日今は名も思い出せないけどあるヒーローに教わった。

 

「いいか、個性は特別なものでも道具でもない。自分の一部なんだ。全身で感じろ。自分の体を動かすのにいちいち考えないだろ?」

「特別じゃない……一部……全身……」

 

 俺の言葉を聞いて、出久はしばらく考えた後、何かに気づいたように顔を上げる。

 

「そうか……個性を必殺技や奥の手のように考えてだけど、体の一部なんだ……! もっとフラットに考えていいんだ! 『使う』ってことに固執して、必要な時に必要な箇所のスイッチをって思ってたけどそうじゃない。初めから全身に……!」

「答えは見つかったか?」

「うん、ありがとう!」

 

 俺の助言から何かを見つけたのか、さっきと打って変わって明るい表情を浮かべていた。

 

「とはいえ、いきなりぶっつけ本番でできるかどうかだけどね」

 

 が、すぐにまたズーンと暗くなる。

 おいおい、ここでお前が何とか出来なきゃ俺は赤っ恥かくとこになるんだからしっかりしてくれよ。

 

「そろそろいいか? 次の予定も詰まってるんで早くしてくれ」

 

 相澤先生の言葉に振り向けば、もう他のみんなはボール投げを済ませていたらしい。

 少しの時間だけ、と言っていたがどうやら結構時間が経っていたようである。

 厳しそうに見えたけれど、なんだかんだ相澤先生も甘いところがあるのかもしれない。

 

「お待たせしてすみません。大丈夫です!」

 

 相澤先生にそう答えると、出久は一度俺の方を振り向いてサムズアップする。

 そして、円の中に入ると深呼吸をする。

 

「一部じゃなくて全身に、満遍なく伝わるイメージ……! 今、出力を上げると体が壊れる……だから、全身に伝えて、体の動きでカバー……い……けぇ!」

 

 

 そして勢いよく投げ出されるボール。

 常人ではまず出すことが不可能な速度で飛んでいき……出た結果は500m。

 充分、個性を使えてると言える結果ではなかろうか。

 

「……ブハッ。はぁ……はぁ……どうですか……、まだ……動けます……!」

 

 と、強がってはいるものの全身汗だくで、体中が震えている。

 だが特に怪我をしたようにも見えない。

 

 そのおかげか、出久のテストの継続は無事に認められたのだった。

 

 ちなみに、ボール投げの1位はほわほわ女子……麗日お茶子だった。

 なんだよ∞って。チートだチート。

 さすがの俺でもあんなん出せねーわ。

 

 

 と、文句を言いつつも総合1位は俺だった。

 やったぜ。

 

 一方、出久はボール投げの件で精魂尽き果てたのか芳しい結果を出すことはできなかった。

 

「ボール投げの時は一瞬コツがつかめた気がしたんだけど、まだまだ難しいや」

 

 と結局最下位になってしまった出久は悲しそうに笑っていた。

 

「ちなみに除籍はウソな」

「⁉」

 

 成績を表示しながら、相澤先生はとんでもない事を言いだす。

 

「君らの最大限を引き出す合理的虚偽」

「はーーーー!!?」

 

 良い笑顔でそう言い放つ相澤先生だったが、とうていすぐには受け入れられるものではない。

 俺、本当に除籍されると思ったから珍しくシリアスしたのに……!

 馬鹿! アホ! 相澤先生!

 

 あぁ、穴があったら入りたい……。




多分これが一番早いと思います(フルカウル)

入学初日で使えるのかよと思われそうですが、緑谷との関係を作りたかったのと主人公のバックボーンを語りたかったので書きたい方を優先させていただきました。
ご了承ください。

ちなみに、話の中でも語ってましたがたまたま上手くいっただけのため、まだまだ要鍛錬です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。