安心してください、履いてませんよ   作:とにかく明るかった安村

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見える全裸と見えない全裸コンビ結成

「わーたーしーがー‼ 普通にドアから来た!」

 

 柄にもないシリアスが空振りしたことに恥ずかしさで悶絶した個性把握テストの翌日、いよいよヒーロー基礎学が始まるということで待機していると、オールマイトが教室に入ってくる。

 

「オールマイトだ! すげえや、本当に先生やってるんだな……‼」

銀時代(シルバーエイジ)のコスチュームだ! 画風違いすぎて鳥肌が……っ」

 

 と、クラスメイト達もテンションが上がっている。

 かくいう俺もオールマイトのファンなので、表に出さないが内心ソワソワしている。

 なんというかオーラというか、トップヒーローは伊達じゃないと思わせてくれる。

 

「ヒーロー基礎学! ヒーローの素地をつくる為、様々な訓練を行う課目だ! 早速だが、今日はこれ‼ 戦闘訓練!」

 

 オールマイトはそう叫びながら『BATTLE』と書かれたカードを前に突き出す。

 

「そして、そいつに伴って……こちら‼ 入学前に送ってもらった個性届けと要望によってあつらえた戦闘服だ‼」

「おおお!」

 

 教室の壁から、戦闘服の入った棚がせり出してきたことで皆のテンションも最高潮になる。

 

「コスチューム……‼」

「恰好から入るってのも大切な事だぜ少年少女! 自覚するのだ! 今日から自分はヒーローだと‼」

 

 ――と、いうわけで俺たちは注文したヒーロースーツを持って更衣室へとやってくる。

 各々、色んなスーツを着ており一種のコスプレ会場のような様相になっている。

 

「おい祢伊木戸。お前のスーツ、えらくシンプルだな」

 

 みんなより先に着替え終わると、近くにいた上鳴が上から下へとじろじろ見ながら話しかけてくる。

 

「いやんエッチ」

「気色悪いことすんなよ! そんな目で見てねぇ!」

 

 俺が自分の体を抱きしめしな(・・)を作ると、上鳴はクワッと目を見開いてツッコんでくる。

 うーん、ボケがいのある奴だ。

 

「俺の個性は知ってるだろ。ガチャガチャしてると、脱ぐのに手間取るからシンプルな方がいいんだよ」

「シレっと本筋戻すなよ。温度差で風邪ひくわ。……でも、ぱっと見脱ぎやすそうには見えないけど、どう脱ぐんだそれ?」

 

 俺のヒーロースーツは上はノースリーブ、下はピチッとした黒のハーフパンツだ。

 全体的に黒でまとめており、夜などに闇に紛れて隠密行動ができるように設計されている。

 見た目こそシンプルだが、一応は防弾、防刃仕様になっている。

 そして、背中には災害時の救急用具が詰まっている。

 シンプルイズベスト。俺の場合、どうせ脱ぐことになるのだから凝りすぎても仕方ないのである。

 

「あぁ、脱ぐのは簡単で腕のスイッチを押すと……」

 

 俺は自身の腕につけている腕輪のスイッチを押す。

 すると、パシュッと軽い音がして上着部分がバックパックに収納される。

 

「おぉ、すげぇなそれ」

 

 そう、見た目こそシンプルだが中身は割と高性能なのだ。

 ボタン一つで服の脱着が可能なのである。

 

「操作によって、上だけ脱いだり、逆に着たり……あとは隠密用に長袖長ズボンにもできるんだ」

 

 上鳴の反応を聞いて、周りの連中が集まってきてる中で俺はスーツの説明をするために上を着たり脱いだり、はたまた長袖長ズボン状態にしたりと実演して見せる。

 

「そして、相手が明らかな強敵だと感じたときは……即全裸モード!」

 

 と、皆がこちらに集中しているタイミングで一気に全裸になる。

 もちろん、股間の光も忘れない。

 

「ぐわああああ、目が目がぁ⁉」

「おめぇはオイラ達に何の恨みがあるんだよぉ! 野郎の裸にはこれっぽっちも興味ないわぁ!」

 

 ふはははは、阿鼻叫喚である。

 

「祢伊木戸くん! 君はそうやってすぐに全裸になりたがるが、もしや相澤先生の言っていた脱ぐことに興奮を覚えるタイプなのかい⁉」

 

 と、見た目委員長の飯田が眼鏡をクイクイしながら話しかけてくる。

 

「いや、そういうわけじゃないんだけど……みんなの反応が面白くてつい。悪い悪い」

 

 なお、自重するとは言ってない。

 ちなみに、別に俺は裸になることに快感を覚えているわけじゃない。

 こうやって普段から気軽に全裸になることで、いざという時のハードルを低くしているのだ。

 俺の個性は一歩間違えればただの変態。

 重要な場面で裸になることを躊躇したくないのだ。

 

 ……というようなことを説明すると、皆は渋い顔をしながらも納得してくれたようだった。

 

 

 

 そして、そんなこんなでグラウンドβ。

 

「ちょ、葉隠……おま、お前……それは流石にえっちすぎるだろ……!」

 

 女子と合流したことで皆のヒーロースーツを見ることになったのだが、葉隠はまさかのグローブと靴のみ。

 いや、ステルス性を活かすなら確かに合理的ではあるが……まさか、この俺でさえ「いや、さすがにこれは……」と躊躇したデザインを実際にやる奴がいようとは……。しかも女子。

 

「葉隠……恐ろしい子……」

「やめてよ善ちゃん! なんか恥ずかしくなってくるでしょ!」

 

 俺の言葉に、体は透明で見えないがグローブの動きから察するに自分の体を抱きしめて身もだえしているようだ。

 ていうか、何も言わなきゃ恥ずかしくないという葉隠のメンタルオリハルコンかよ。

 

「祢伊木戸さん、あまり女子に対してセクハラ発言をなさるものではありませんわ。雄英の生徒そして恥じない言動をなさいませ」

 

 と、俺と葉隠が話していると、仁王立ちポーズでつり目の美人……八百万百が注意をしてくる。

 っていうか、こいつもこいつでまた露出たけーな。

 

「……もしかして、ヤオモモも俺の同類か?」

「どういう意味ですの⁉ 私は全裸になる趣味などありませんわ! 個性把握テストで見てましたわよね⁉ ていうか、なんですのヤオモモって!」

「いや、個性の方だわ。露出が高くなると個性が使いやすいんだろ」

 

 彼女の個性は確か創造。

 体から直接作り出すから露出高い方が便利なはず。

 

「え、あ、そ、そうでしたの……。ごめんなさい、早とちりしてしまいましたわ」

 

 自分の早合点に気づいたのか、ヤオモモは恥ずかしそうに顔を赤くしながらぺこりと頭を下げる。

 かわいい。

 っていうか、そんなに俺=全裸のイメージある?

 まだ2日目でそんなに脱い……脱いでたわてへぺろ。

 

「いいよいいよ、俺の言い方が紛らわしかった。こっちこそ悪いな。葉隠も」

「大丈夫、ちょっとびっくりしたけど気にしてないよ!」

「私の方も大丈夫ですわ」

 

 うーん、天使しかいないのかな?

 雄英高校最高だな。

 

「良いじゃないか皆。カッコイイぜ!」

 

 俺たちが他愛のない雑談をしていると、オールマイトがやってくる。

 

「先生! ここは入試の演習場ですが、また市街地演習を行うのでしょうか!」

 

 オールマイトがやってくると飯田が質問をする。

 

「いいや! もう二歩先に踏み込む! 屋内での対人戦闘訓練さ!」

 

 オールマイト曰く、統計で言えば屋内の方が凶悪(ヴィラン)出現率が高いからとの事。

 

「監禁、軟禁、裏商売。このヒーロー飽和社会。真に賢しい(ヴィラン)は屋内に潜む! 君らにはこれから、(ヴィラン)組とヒーロー組みに分かれて2対2の屋内戦を行ってもらう!」

「基礎訓練もなしに?」

「その基礎を知る為の実践さ! ただし、今度はぶっ壊せばオッケーなロボじゃないのがミソだ」

 

 オールマイトの言葉に、なるほどと頷く。

 入試の時は相手がロボットだったので遠慮なく個性を使えたけれど、基本的には人を相手にすることが多いはずだ。

 対人戦は実は俺も経験がないので良い訓練になるだろう。

 

 今回の屋内戦闘の設定はヒーローは制限時間内に(ヴィラン)役を捕まえるか核兵器を回収すれば勝ち。

 (ヴィラン)は逆に核兵器を守り切るかヒーローを捕まえれば勝ちという何ともアメリカンだ。

 

「コンビ及び対戦相手は……くじだ!」

「適当なのですか⁉」

「プロは他事務所のヒーローと急造チームアップすることも多いし、そういうことじゃないかな?」

「そうか……! 先を見据えた計らい……失礼いたしました!」

 

 驚く飯田に対して出久がそう答えると彼はあっさり納得する。

 出久はどうやらヒーローオタクのようで、そういったことに造詣が深いようだ。

 

 そんなこんなでくじ引きをすると、俺の相方は葉隠だった。

 入試の日から何かと縁があるな。

 

「何かと縁があるね善ちゃん!」

「ああ、お互い全裸同士頑張ろうぜ。見えない全裸と見える全裸……ネイキッズの結成だ」

「勝手に変なコンビ名つけないで⁉」

 

 残念ながら、却下されてしまった。

 即席にしては良い名前だと思ったんだけどなネイキッズ(全裸組)

 

 そんなこんなで試合のペアも決まる。

 1回戦目は出久、麗日ペアと爆豪、飯田ペア

 2回戦目は俺と葉隠、そして相手は轟、障子となった。

 

 

 1回戦目は、なんというかすごかった。

 爆豪と飯田が(ヴィラン)側だったのだが、もう爆豪がこれでもかというくらいにナチュラルに(ヴィラン)を演じ、出久に突っ込んでいったのだ。

 音声は聞こえないので聞き取れないが、出久の何かが気に入らなくて一方的に憤怒しているらしい。

 爆豪の個性による爆発の攻撃が続くが、出久はそれを紙一重で避けつつも善戦する。

 

「緑谷少年……動きが良くなった……? 個性の調整が上手くいっているのか?」

 

 出久と爆豪の戦いを眺めていると、オールマイトがぽつりと呟く。

 

「あ、昨日俺がアドバイスしました。まだ使いこなせてはないみたいですけど、コツを掴んだみたいです」

「祢伊木戸少年……! ありがとう、恩に着るよ」

「? なんでオールマイトがお礼を言うんですか?」

 

 さっきのセリフもそうだが、オールマイトはなんかやたらと出久を気にかけて要るっぽいな。

 

「あぁいや何でもない! 緑谷少年から、個性の使い方について相談されててね! それが解決したようなのでお礼をね!」

 

 俺の言葉に対し、オールマイトはそうまくしたてる。

 出久と似たような反応だが、まぁあまり突っ込むのも野暮だし、そういうことにしておこう。

 

 ――その後、紆余曲折あったものの出久と麗日の連携プレーによりヒーローチームの勝利となった。

 ていうか、爆豪は戦闘センスがずば抜けているんだろうが、おおよそヒーローの戦い方ではない。

 試合中の形相なども見るに、何やら厄介そうなのを抱えているようだった。

 

 その後、全員集合し先ほどの試合の講評が行われた。

 といっても、ヤオモモが全部言ってしまったが。

 さすがは推薦入学者と言ったところだろう。

 

 ――そして2回戦。

 俺と葉隠は(ヴィラン)側となったので、室内で作戦会議を行う。

 

「で、葉隠って透明化以外でできることってあるか?」

「うーんとね、太陽光を自分の体を通して集光して、こうバーンと光らせることができるよ!」

 

 ただの透明化ではなくレンズみたいなことができるってわけか。

 屋外であれば目くらましに使えそうだな。

 

「あ、でも屋内だと使えないかも。一応、部屋の電気とかでもできると思うけど、そんなに光は強くないかな」

 

 と、俺が思っていた欠点を話す葉隠。

 それ以外では身体能力に関しては、一応ヒーローを目指すだけあり高めではあるが、一般人の領域からは出ないということだった。

 

「戦闘面で役立てない分、索敵で頑張るよ私!全部脱げば完全透明で無敵だし!」

 

 と、何の躊躇いもなくグローブと靴を脱ぐ葉隠。

 おいおい、俺の目の前に全裸の女子高生とか興奮してきたな。

 ……などと、ふざけている場合ではない。

 

 確かに索敵という点では、葉隠はトップクラスの性能だろう。

 だが、

 

「確かに見た目で言えば完全に見えないけれど、相手がもし索敵能力に優れていたら安心はできない。葉隠は音は消せるか?」

「うーん、それはできないかなぁ」

 

 となると、相手の個性が未知数である以上迂闊に一人で動き回らせるわけにもいかない。

 どっちか1人はここに残らないといけないしな。

 

「今後、スーツの改良ができるなら消音シューズとか作ってもらってもいいかもな。スーツの透明化に関しては光学迷彩とか、もしかしたら個性に対応できる方法があるかもしれないし」

「おお、いいねそれ! 後で相談してみるよ! ……でも、それじゃあどうしようか?」

 

 明るい声から一転、不安そうな声になる葉隠。

 今回、索敵に関しては見送らせてもらうけど葉隠の完全透明な姿は絶対アドバンテージになると思うんだよな。

 

「うーん……」

「そういえば、善ちゃんも光ることできるんだよね。あれって一部だけなの?」

「いや、光らせようと思えば全身を光らせたり、光量も調整できる。ただ、時間制限があって、光らせる範囲が広がったり発光が強くなるほど短くなって、インターバルは必ず1分必要だ」

 

 俺の説明に対し、葉隠はふむふむと(多分)頷いている。

 

「ふっふっふ、私、いいこと思いついちゃった」

 

 と、不敵に笑いながら葉隠は俺に作戦を伝えてくるのだった。

 

 

 

 

『準備はいいかい? それじゃあ、START!』

 

 作戦タイムが終了し、開始の合図が聞こえてくる。

 俺と葉隠は基本、核のある部屋から動かず完全な防衛線。

 轟と障子がどう攻めてくる……か⁉

 

「まずい、葉隠!」

「寒いよ善ちゃん!」

 

 スタートしてから数秒、急激に周りの温度が下がっていき、建物がパキパキと凍っていく。

 おいおい、一瞬で建物凍らせるとかどんな出力だよ。

 俺はすぐさまスーツを作動させパンイチになると葉隠を抱き上げる。

 多少の誤差はあったが、修正は可能だ 

 そしてこれ以上凍らないのを確認すると、葉隠を下してスタンバイさせる。

 靴を履かせておいて正解だったな。裸足だったらアウトだった。

 

「おいおい、この状況でパンイチかよ」

 

 建物が完全に凍り付くと、部屋の入り口から轟がやってくる。

 あたりの気配を探ってみるが、どうやら障子は近くにいないようだ。

 

「この氷はお前が?」

「あぁ。おっと、動かない方がいいぞ。下手に動いたら足の皮が剥がれかねない」

「ご忠告どーも。だが、それに関しては問題ない……ぞ!」

 

 そして、俺は全身から最大光量の光を放つ。

 これだけの出力となれば発光できるのは一瞬。

 だが、それでいい。

 

「ぐあ⁉」

 

 強烈な光を至近距離で見てしまった轟は、視界を奪われる。

 そう、これをやるために俺はわざわざパンツを履いていたのだ。

 目くらましに使ってしまえば、俺の股間に使えないからな。

 皆に見られてるってわかってるのに御開帳するわけにはいかない。

 さすがにそれくらいの分別はある。

 

「よっしゃぁ、捕縛ぅ!」

 

 そして、目が回復する前に透明化を利用して隠れていた葉隠が轟に近づきテープで捕獲する。

 何も、索敵だけが透明化の利点ではない。

 こうした不意打ちにも使えるのだ。

 

 俺が光って目くらまし、葉隠が透明化を利用してその間に近づいて捕縛。

 彼女の作戦が見事にハマった形である。

 

「くそ……股間が光るだけじゃなかったのか……」

「ま、そういうことだ。いきなり建物を凍らせたのにはビビったけど、俺たちネイキッズの敵じゃなかったってわけだ」

「いやそれ却下したよね⁉」

 

 とまぁ、そんなやりとりの後、発光のインターバルを置いた後は葉隠を待機させ、俺は全力モードで障子を捕縛し、勝利を収めたのだった。




主人公の衣装のイメージはDBのリクームのアーマー部分無し版です。
グローブとブーツもあります。
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