安心してください、履いてませんよ 作:とにかく明るかった安村
おかげさまでUAも1万超えました。ありがとうございます。
「うわぁ、なんだあれ……」
戦闘訓練の翌日、登校してくると校門前には人だかりが出来ていた。
「よぉ、善羅! すげー人だなこれ」
俺が人だかりに圧倒されていると、ギザギザ赤髪が特徴的な切島が話しかけてくる。
「すーん!」
「何いきなり拗ねてんだよ……」
べっつにぃ? 昨日、葉隠への洗脳……じゃなかった説得を邪魔されたことを根に持ってるとかそんなことありませんしぃ?
「とまぁ、とりあえず形式上拗ねたところでおはよう切島」
「お前の行動、マジで突飛すぎるな」
「そう褒めるな。ところで、これって何の人だかりだ? マスコミめっちゃ居るけど」
「あー、ほら、オールマイトが雄英の教師になるってニュースになってたから、教師としてのオールマイトについてインタビューしたいんだってよ」
なるほど。
確かに平和の象徴であり№1ヒーローであるオールマイトが、同じくトップクラスのヒーロー養成校の教師になるってなったら、とびきりの特ダネだ。
だけど、それを抜きにしてもちょっと無遠慮に押しかけすぎなんじゃないかなって思う。
実際、登校しようとしている生徒の進行を妨げているし……だからマスゴミって言われるんだよ。
最悪、力づくでもいいから無理矢理にでも通ってしまおうかと思案していると、1人のマイクを持った女性レポーターがこちらに近づいてくる。
「すみません、オールマイトについてインタビューさせてください!」
「いやどす」
「どす⁉」
予想外の答えだったのかレポーターはカメラの前にもかかわらず、素で驚いている。
ふ、まだまだだな。
「お前は一体何を勝ち誇ってるんだよ」
俺の言動に対し、切島が冷静にツッコミを入れてくる。
ふむ、君は中々にツッコミどころがあるな。
「とまぁ、場も暖まるジョークを飛ばしたところで普通に答えますと、彼もやはり教師としては新人のためか、すこしぎこちないところもありました。しかし、トップヒーローの肩書は伊達ではなく、すでに生徒個人個人の個性に向き合い、生徒からの相談に対しても真摯に対応しているようでした」
「え、お、は……あ、ありがとうございます。参考になりました」
と、レポーターはしどろもどろになりながら礼を言って首をひねりながら立ち去っていく。
「ふ、これくらいで取り乱すとはまだまだよのぉ」
「だからお前は何と戦ってるんだよ。ふざけてる時と真面目な時の温度差で風邪ひくっつうの」
と、そんな感じで切島と他愛ない話をしながら教室へと向かうのだった。
◇
「昨日の戦闘訓練お疲れ。Vと成績見させてもらった」
LHRの時間、相澤先生がそう切り出す。
「爆豪、おまえもうガキみてぇなマネするな。能力あるんだから」
「……分かってる」
相澤先生の言葉に、爆豪は伏し目がちになりながらぼそりと答える。
「で、緑谷。お前は怪我こそしなかったもののまだ個性を使いこなせてないのか、動きがぎこちないところが多々あった。個性の制御……いつまでも出来ないから仕方ないじゃ通さねえぞ」
「はい……」
と、厳しいながらも的確なお小言を言う相澤先生。
この流れで、葉隠との華麗な連携で勝利をおさめた俺にも何かあるかと期待した目で見つめていると、目が合った瞬間に目を逸らされた。
教師のパワハラがひどい件。
「さて、HRの本題だ。急で悪いが今日は君らに……」
相澤先生のただならぬ雰囲気に、クラスメイトたちは息を呑む。
なんだろう……また個性把握テストみたいなことをやらされるのだろうか?
「学級委員長を決めてもらう」
「「「学校っぽいの来たー‼」」」
その言葉に、クラス全員がテンションMAXで俺も私もと立候補する。
普通科なら雑務って感じでこんなことにならないと思うが、ここヒーロー科では集団を導くっていう……トップヒーローの素地を鍛えられる役だ。
かくいう俺も、当然ながら学級委員長になりたいので手を挙げる。
「静粛にしたまえ!」
教室内が混沌と化し始めていた時、飯田が声をあげる。
「多をけん引する重大な仕事だぞ! やりたい者がやれるモノではないだろう‼ 周囲から信頼あってこそ務まる聖務……! 民主主義に則り真のリーダーを皆で決めるというのなら……これは投票で決めるべき議案!」
うーん、真面目だねぇ。
だが、飯田の言うことも一理ある。
人望がない人が多を率いる役についても誰もついてこない。
もっとも……飯田自身が腕をそびえ立たせていなければ説得力があったんだけれども。
「日も浅いのに信頼もクソもないわ飯田ちゃん」
「だからこそここで複数票を獲った者こそが真にふさわしい人物と言う事にならないか⁉ どうでしょうか先生‼」
「時間内に決めりゃ何でもいいよ」
という相澤先生の何とも適当な言葉により、学級委員長は投票で決まることとなった。
そして結果だが……なんと俺に5票集まっていた。
俺が自分に入れているので1票として、誰が4票も入れてくれたんだか。
ちなみに、ヤオモモと出久が2票ずつであった。
全員、自分に入れて結局勝負がつかないオチだと思っていたのだが、意外な結果だったな。
「得票数トップは祢伊木戸か……お前ら正気か?」
「相澤先生! なんか俺にばっか辛辣じゃないですか⁉」
「逆に辛辣にならない理由があると思うか?」
「ないですね!」
納得しかねぇ!
「いや、そこ認めんのかよ」
「だってよ上鳴。すぐ全裸になるんだぜ?」
「それ聞いたら納得するしかねーけど、それを自分で言うんだな。まぁ、そこらへんがお前の面白いところだけども。ちなみに、俺はお前に入れたぜ」
なんと、俺に入れたうちの1票は上鳴だったか。
「常時ふざけてるけど、緑谷の件とか見ると結構面倒見もいいっぽいしな。お前が引っ張ってくれたら面白いクラスになりそうだし!」
と、いい笑顔でサムズアップする上鳴。
やだイケメン……。
俺が女だったら掘れ……じゃなかった惚れていたところだ。
「……まぁ、得票数がトップになったもんは仕方ない。真面目にやれよ」
「善処します」
「そりゃやらない奴の言葉だ。まぁいい。んで、次点は八百万と緑谷か……祢伊木戸、委員長の初仕事として自分の補佐、副委員長を決めろ」
と、いきなり相澤先生にぶん投げられたけどもどうすっべか。
まだ知り合ってから日も浅く、どっちがより良いかなんてのは決められない。
親近感が湧くという意味では出久だが、推薦入学者であり昨日の講評でもテキパキ答えられていたヤオモモも捨てがたい。
「うーん……どっちも捨てがたいから、じゃんけんかな。運も実力の内ってわけで」
さんざん悩んだが結局決められなかったため、天運に任せることにした。
結果、副委員長はヤオモモになるのだった。
◇
そして昼。
「お」
「あ」
「ん」
「やぁ」
食堂にて、食事のトレイを持って席を探していると出久、麗日、飯田の3人が食事しているところに出くわす。
「ここ良いかな?」
ちょうど出久の隣が空いていたので、許可を得てから座る。
「出久、悪かったな。副委員長に指名しなくて」
「ううん、気にしなくていいよ。君が八百万さんと同列で悩んでくれたってだけでもうれしいし。じゃんけんで勝てなかったのは僕の責任だしさ」
と、俺の言葉に対して軽く笑いながら答える出久。
「そう言ってもらえると助かる。……しかし、まさか4票も入るとはさすがに予想外だった」
「あ、それは僕が入れたんだ。ほら、個性把握テストの時にアドバイスしてくれたでしょ?」
「いやでも、それは下心があったわけじゃ……」
単純に出久には親近感が湧き、放っておけなかったからであって何か見返りを期待してたわけじゃない。
「それでもだよ。僕は本当に個性の扱い方に悩んでたんだ。それが善羅くんのアドバイスのおかげで光明が見えた。まだまだ完璧に扱えるには程遠いけど、すごく感謝してる。君みたいな人が委員長だったらいいなって思ってね」
「出久……!」
くそ、1-A最高かよ!
いい奴らが多すぎる。仮にもヒーローを目指して入学したんだし、やはり光の者が多いのだろうか。
一部、例外はいるけども。
「ちなみに俺は緑谷くんに投票したぞ。緑谷くんの、ここぞという時の胆力や判断力は多をけん引するに値する。まぁ、緑谷くんが委員長になれなかったのは残念だが、彼が選んだ君なら信じるよ」
「でも飯田くんも委員長やりたかったんじゃないの? メガネだし!」
「何気にざっくりいくよね麗日さん」
せっかく飯田が良いこと言っていたのにざっくり切り込む麗日。
なんというかマイペースな子だ。
「“やりたい”と相応しいか否かは別の話……。僕は僕の正しいと思う判断をしたまでだ」
「『僕』……‼」
「ちょっと思ってたけど飯田くんて、坊ちゃん⁉」
「坊っ‼ ……そう言われるのが嫌で一人称を変えていたんだが……」
一人称をツッコまれげんなりしながら語りだす飯田。
なんでも、飯田家は代々ヒーロー一家のエリートらしい。
そういえば、飯田自身もエリート中学出身だったな。
んで、なんとあのターボヒーローインゲニウムを兄に持つのだという。
出久がヒーローオタク全開で早口で説明している。
「規律を重んじ人を導く愛すべきヒーロー! 俺はそんな兄に憧れ、ヒーローを志したんだ」
「うっ⁉」
「どうした祢伊木戸くん! 持病の
飯田の話を聞いて胸を押さえる俺に対し、独特なツッコミをする飯田。
「いや、規律を重んじってところで俺とは無縁の話だなって……」
アイアムフリーダムをうたう自分としてはつらい言葉だ。
「自覚があるなら少しは自重したまえよ! 心配して損した!」
とプンスカと怒る飯田。
そんな感じで高校生っぽいアオハルな雑談をしていると、突如けたたましい警報が鳴り響く。
「警報⁉」
『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外へ避難してください』
「セキュリティ3ってなんですか!」
「校舎内に誰か侵入してきたってことだよ! 3年間でこんなの初めてだ! 君らも早く避難しろ!」
放送を聞いた後、飯田が近くにいた先輩に問いかけると、そんな答えが返ってくる。
まさか
よりにもよってヒーローのたまごやプロヒーローが集まるこの場所に侵入なんて、無謀にも程がある。
「うおぉ⁉」
「ひゃああ⁉」
俺がそんな事を考えていると、出久達が人の波に流されそうになっていた。
俺はなんとか人の間をすりぬけながら、出久達に追いつく。
「3人とも大丈夫か⁉」
「急に何!」
「流石最高峰! 危機への対応が迅速だ!」
「迅速過ぎてパニックに……」
うん、3人とも慌てているようだが怪我はなさそうである。
しかし、マジで一体何が侵入してきたんだ。
「っ! 祢伊木戸くん! あれを見たまえ!」
飯田が示す方向では、今朝のマスコミたちが校舎内で騒いでいた。
どうやら侵入者の正体はマスコミだったらしい。先生たちはその対処に追われているようだった。
「って事は、慌てる必要もないよね?」
「そうだな、何とか皆を落ち着かせなければ」
「皆をこっちに注目させて伝えないと」
出久や麗日も状況を把握したのかそんな風なことを飯田と話している。
「そういう事なら俺に任せろ! 麗日、俺を浮かせろ!」
「へ⁉ あ、うん!」
俺の言葉に戸惑いながらも腕を伸ばしてタッチを交わす。
すると、俺の体は途端に軽くなる。
すぐさま俺は群衆からふわりと抜け出すと、服を脱いでパンイチになり身体能力を上げ、食堂の入り口にはりついた。
そして……。
「必殺、目がつぶれない程度に強力なフラッシュ!」
「うぉまぶしっ⁉」
「おい、あんなところにパンイチの変態がいるぞ!」
俺がそこそこ強烈な光を全体から放つと、ざわざわしながらも生徒たちの動きが止まり、こちらに注目する。
「お前ら、大丈夫だ! 侵入者はただのマスコミだ!」
俺は思いっきり息を吸い込むと、自身の肺活量をフル活用し皆に聞こえるように叫ぶ。
「そうです、何も慌てることはありません! ここは雄英! 最高峰の人間に相応しい行動を取りましょう!」
と、俺に続いて飯田も叫ぶ。
正体がマスコミと聞いた生徒らはようやく落ち着きを取り戻し、何とか一難は去ったのだった。
ちなみに、危うく俺が不審者として突き出されそうになったが、出久、麗日、飯田の証言により事なきを得た。
お前ら……最高だよ、これからもズッ友だ……!
投票者は
葉隠、上鳴、緑谷、轟になります。
轟は、前日の試合の結果から只者じゃないと判断して投票しました。
感想お待ちしております。