安心してください、履いてませんよ 作:とにかく明るかった安村
「よぉパンイチマン」
マスコミ侵入事件の翌日、教室にやってくるやいなや上鳴が半笑いでそう呼んできたのアイアンクローで締め上げておいた。
「あだだだだ! ギブギブ!」
割と本気目にタップしてきたので、仕方ないから離してやる。
昨日の食堂の件は、結構な人数が目撃していたせいか今や俺は学校中で『パンイチの人』と注目されている。
全裸マンじゃないだけマシとは言えあんまりうれしくない状況だ。
「いつつ……まったく本気でやりやがって」
「馬鹿者。俺が本気だったら全裸でやってるわ」
服を着た一般人モードでやっただけありがたいと思え。
「それだよそれ。あれだけすぐ全裸になるくせに何でパンイチマンって呼ばれるのは嫌なんだよ」
「いや、それは普通に嫌だよ。俺だってヒーロー名はちゃんとしたの付けたいし。なんというか、笑わせるのは良いけど笑われるのは嫌みたいな芸人的な?」
ヒーロー名はまだ考えていないが、さすがにパンイチマンは嫌だ。
「めんどくせぇ奴だ。まぁでも、皆表向きはからかってくるだろうが、内心は感心してると思うぜ? 騒ぎを収めるために公衆の面前でパンイチになるって普通は出来ねーよ」
上鳴がそんなことを話していると葉隠がぴょこっと間に入ってくる。
「うんうん! 私は話を聞いただけだけど、善ちゃんらしくて良いと思ったよ。パンイチマンもなんだか可愛い響きだし」
「どーもパンイチマンです」
「前言撤回がはえーよ!」
俺の鮮やかな手のひら返しに上鳴が目を見開きながらズビシッとツッコミを入れてくる。
「……なんとも既視感のある光景だな」
「はははは」
俺と上鳴、葉隠で話していると少し離れた場所で飯田と出久がそんなことを話しているのだった。
そんなこんなで時間が来たので会話もそこそこに授業が始まった。
――そして午後。
みんな大好きヒーロー基礎学の時間がやってきた。
「今日のヒーロー基礎学だが……俺とオールマイト、そしてもう1人の3人体制で見ることになった」
「ハーイ! なにするんですか⁉」
「災害水難何でもござれ──
瀬呂の質問に対し、相澤先生が今日の授業内容を説明する。
人命救助か……戦闘とはまた違ったスキルが求められるだろうし大変そうだ。
コスチュームの着用は自由らしいが、俺のコスチュームは救命道具などもセットなので着ない理由はない。
まぁ、コスチュームを着てない場合の対処法とかも学ぶ必要はあるだろうが、最初は手堅く行こう。
そして、着替え終わった俺たちは対面式のバスへと乗り込む。
なんでも専用の施設で訓練を行うらしい。
バスで敷地内を移動して専用施設に、とかほんと腐るほど金あるな。
「私、思った事を何でも言っちゃうの緑谷ちゃん」
「あ⁉ ハイ⁉ 蛙吹さん!」
「梅雨ちゃんと呼んで」
なんてどうでもいいこと考えていると蛙吹が出久に話しかけている。
「あなたの個性、オールマイトに似てる」
「そそそそうかな⁉ いや、でも僕はそのえー……」
蛙吹の言葉に取り繕うとする出久だったが、反応がもろに何かあると言っているようなものだった。
だが、その事実はきっと俺だけが気付いているだろう。
オールマイトと似たような個性。
そして入学から間もないにもかかわらず、出久を気に掛けるオールマイト。
あの態度は、一介の生徒以上の何かを感じさせる。
だが、出久もオールマイトもあからさまに第三者には秘密にしたいような様子だった。
そこから導き出される答えは一つ……そう、出久はオールマイトの隠し子である!
そう考えれば、秘密にしたがるのも納得できる。
しかし、俺はそれを誰かに言う気はない。
バレそうになったら彼をかばうつもりだ。
「出久……俺は、お前の味方だぞ」
「え、あ、うん……ありがとう?」
隣の出久の肩に手を置いて微笑むと、彼はぎこちなく笑いながら礼を言う。
「確かに似てっけどよ梅雨ちゃん。オールマイトは怪我しねぇぞ。出久も、個性把握テストから怪我はしなくなったけど、それでもなんかぎこちねーし」
と、意図はしてないだろうが切島からナイスパスが飛んでくる。
いいぞ切島ナイスだ切島。
これで、葉隠の件はチャラにしてやろう。
「しかし増強型のシンプルな個性はいいな! 派手で出来ることが多い! 俺の『硬化』は対人じゃ強えけどいかんせん地味なんだよなー」
と、自分の体を硬く(意味深)させながらぼやく。
「じゃあ、強さも派手さもピカイチな俺は最強だな」
「僕のネビルレーザーもプロ並みさ」
俺の言葉につられるように青山が話す。
「でも全裸になったりお腹壊しちゃうのはヨクナイね!」
と笑顔で無粋なツッコミを入れてくる芦戸。
「ふっ、強い個性にはそれなりの制約があるものさ」
「全裸をそうやって軽く流せるお前のメンタルは間違いなくヒーローだよ」
ふははは、もっと褒めたまへ。
移動中、俺達はそんな感じでヒーローとして通用する個性についてなどで大いに盛り上がる。
そして、ついに目的の場所へと到着する。
「すっげー! USJかよ!」
目の前の光景にクラスメイト達がはしゃぐ。
かくいう俺も、予想以上の規模にちょっとだけワクワクしている。
「水難事故、土砂災害、火事……etc.あらゆる事故や災害を想定し僕がつくった演習場です」
クラスメイト達が盛り上がっていると宇宙服を模した戦闘服に身を包んだ先生……スペースヒーローの13号が現れる。
「その名もウソの災害や事故ルーム!」
USJだった!
大丈夫? 怒られない?
そんな俺の心配をよそに、13号は話を続ける。
「えー始める前にお小言を1つ2つ……3つ……4つ……」
増える……。
「皆さんご存知だとは思いますが、僕の個性は『ブラックホール』。どんなものでも吸い込んでチリにしてしまいます」
「その個性でどんな災害からも人を救いあげるんですよね?」
出久の言葉に13号は頷く。
「しかし、簡単に人を殺せる力です。皆の中にもそういう個性が居るでしょう。超人社会は個性を資格制にし厳しく規制することで一見成り立っているように見えます。しかし、一歩間違えれば容易に人を殺せるいきすぎた個性を個々が持っている事を忘れないでください」
13号の言う通りだ。
俺の個性は強力ではあるが、一歩間違えれば簡単に殺せてしまう。
そして……一歩間違えれば自分も(社会的に)殺してしまう恐ろしい個性だ……っ。
「この授業では……心機一転! 人命の為に個性をどう活用するかを学んでいきましょう。君達の力は人を傷つけるためではなく、助けるためにあるのだと心得てかえってください!」
13号のかっこいい演説に俺は自然と拍手をしていた。
そして、いざ授業が始まろうとした時……異変は起こった。
「一かたまりになって動くな! 13号‼ 生徒を守れ」
尋常じゃない表情で叫ぶ相澤先生に対して状況が呑み込めない俺達であったが、すぐにその行動を理解する。
黒い靄のようなものが広がると、あきらかにカタギの雰囲気ではない集団が現れる。
おいおい、こいつらまさか……。
「何だアリャ⁉ また入試ん時みたいなもう始まってんぞパターン?」
切島がそんな呑気な事を言っているがそうじゃない。
あれは……。
「「あれは
俺と相澤先生の声がハモる。
「13号に……イレイザーヘッドですか……先日頂いた教師側のカリキュラムではオールマイトがここにいるはずなのですが……」
「どこだよ……せっかくこんなに大衆引き連れて来たのにさ……オールマイト……平和の象徴がいないなんて…………子供を殺せば来るのかな?」
その途方もない悪意に俺はブルリと震える。
体のあちこちにたくさん手を付けた異様な雰囲気の
他は俺の個性でどうにかなりそうだが、あいつだけはやばいと俺の直感が告げていた。
「先生、侵入者用センサーは!」
「もちろんありますが……」
反応していないって事は、たぶんそういうことが出来る個性が居るという事になる。
「校舎と離れた隔離空間、そこにクラスが入る時間割……バカだがアホじゃねぇ。これは、何らかの目的があって用意周到に画策された奇襲だ」
そんなことを説明しながら戦闘準備に入る相澤先生。
「先生は⁉ 1人で戦うんですか⁉」
その様子を見て焦った声で叫ぶ出久。
相澤先生の個性は対
だが、あの数じゃいくら個性を消すといっても多勢に無勢だ。
「一芸だけじゃヒーローは務まらん」
そう言うと、相澤先生は
そこで披露されたのは洗練された体術だった。
先生の身体能力は個性ではないため、どれだけ鍛えても人間の範疇は越えないだろう。
だが、個性を消せない異形型相手にも引けを取らず圧倒していた。
強さの上限が決まっている俺は、もしかしたらああいうのを参考にするべきなのかもしれないな。
「って、感心してる場合じゃねぇ! お前ら、相澤先生が引き付けているうちに避難するぞ!」
俺は我に返ると、すぐさま全員を逃がすべく行動に移す。
だが、俺らの道をふさぐように先ほど黒いモヤが広がったかと思うと人型へと変形する。
「初めまして。我々は
その言葉は、クラスの連中を動揺させるには十分だった。
「本来ならば、ここにオールマイトがいらっしゃるハズ……ですが、何か変更あったのでしょうか? まぁ……それとは関係なく……」
黒モヤ野郎はそんなことをしゃべりながらゆらりと揺らめきだす。
また何かをする気か⁉
奴が何かする前に委員長として俺が何とかせねばと服を脱ごう――とした瞬間、2人の人影が飛び出し黒モヤに攻撃をする。
爆豪と切島だ。
「その前に、俺たちにやられることは考えてなかったか⁉」
そう啖呵を切るが黒モヤには効いていないようだった。
見た目からして物理無効系の個性だろうか?
「危ない危ない。規格外の存在に呆気を取られていましたが、そうですね……生徒と言えど優秀な金の卵。油断はできませんね」
なら、見た目闇っぽいし俺の発光で……。
と、考えるも空しく黒モヤはブワッと俺達を囲むように広がっていく。
「くそ、皆無事か⁉」
黒モヤに包まれながらも周りにそう叫ぶが誰の返事も返ってこない。
そして、視界が開けると、俺は瓦礫の山のあるゾーンへとやってきていた。
もしかしてあいつはワープ系の個性だったのか?
「へっへっへ、来た来た」
そして、周りには大量の
どうやら、俺1人だけ敵のど真ん中へと送られたらしい。
もし、全員がそれぞれ孤立していたらちょっとまずいな。
「お前さんには恨みはないが……まぁ、ヒーローを目指したのが悪かったと思ってあきらめるんだな」
そう言いながら舌なめずりをする三下
さっきの手マン野郎に比べれば、どいつもこいつも脅威を感じない。
ならば、ここは落ち着いていつも通りに行こう。
「……ここに居る
俺の突然の質問に、疑問符を浮かべる
「なんだ? ヒーローだから女を殴れませーん! って負けた言い訳を用意したいのか?」
「だったら残念だったな! ここに居るのは全員男だよ!」
女はいないのか……ならば好都合。
文字通り
「生憎だな。逆に女がいない方が俺はまさに無敵だ」
何せ、普段なら光の時間制限を気にする必要があるからだ。
しかし、今はその必要がない……。
俺は迷いなく全裸になると、戦闘態勢へと入る。
もちろん、発光もなしだ。
「さぁ、ちんこのでけぇ奴からかかってきな!」
おちんちんランド開園だこらぁ!
一般人や公衆の面前では光を気にしているため、ある意味動きが制限されてますが、それを気にする必要がない場合は「究極完全変態グレート・全裸」になります。