閃乱カグラ 〜 少女達の戦と少年達の侵攻 〜   作:ツヨインジャー

1 / 5
一匹の蛾が蝋燭の火に引き寄せられ、やがてその蛾は蝋燭の中で燃え尽きた。そんなわずかな光しか届かないこの場所で黒装束を見にまとった人物が祭壇のようなところに登る。その祭壇の下では数十人、いや数百人の男達が跪いていた。

「諸君。この国は腐敗している。不条理な力を持つ者達の争いが絶えず、その争いによって生まれた妖魔が蔓延る始末…。この国を破壊しているのは、他ならぬ『忍』だ。皆の者。真の平和を取り戻すには『忍』を滅ぼすのみ。」

ははあっ!とたくさんの男達が頭を垂れる。この光景はまるで数百年前に失われた戦国の世を彷彿とさせる。

「忍は今、懺悔の時を迎えた。そして、すぐに忍は終末を迎える。諸君は忍達の終末に協力してくれるか。」

やがて、跪く集団の中から氷のような冷たい目をした青年が一歩前に出る。

「御方様のために我が命、お使いください。」

「ふっ。頼んだぞ。では、君たちに早速、忍務を言い渡す。『冴刃』、『写楽』、『無明』。」

この団体のリーダー格の人物が3人の青年を指名する。青年達は皆、紺色のブレザーを着用している。

「君たちに妖魔及び、忍の討伐を行ってもらう。あくまで忍の討伐が中心だ。いいな。」

3人は無言で頭を下げる。そして、3人はこの空間から素早く消えた。



第1話 始動

ここは『国立半蔵学院』。東京に建つ、学生数1000人を抱える名門マンモス進学校である。しかし、表の顔はごく普通の進学校であるのだが、裏の顔は国家に所属し国益のため働く忍の集団・善忍を養成するための秘密機関がある。その一部が『忍学科』、通称『忍クラス』というものである。そんな忍クラスに一通の手紙が届いた。

 

「斑鳩さーん。どこですか?」

 

その手紙を最初に受け取ったのは赤いスカーフを首に巻いた少女であった。彼女は忍クラス 2年生『飛鳥』。かの有名な忍、『半蔵』の孫娘である。

 

「飛鳥さん?私に何かご用でしょうか?」

 

飛鳥に呼ばれて現れたのは黒いロングヘアの少女。彼女は忍クラス 3年生『斑鳩』。彼女は忍クラスの委員長を務める優等生だ。

 

「斑鳩さん宛にお手紙が届いてました。どうぞ。」

 

「ありがとうございます、飛鳥さん。でも、どちら様からでしょうか?」

 

斑鳩は封筒の裏を見る。差出人を調べてみると『村雨』と書かれていた。

 

「お兄様から?一体、どのような用件で…?」

 

斑鳩は飛鳥と一旦、別れて自室で封筒を開ける。そこには手紙が入っており、そこにはこう綴られていた。

 

『斑鳩へ お前は忍の修行は捗っているか?飛燕を大切にしているか?俺は忍になれなかったのが心残りだが、財閥の経営に忙しい日々を送っている。

俺が手紙を寄越したのは他でもない、お前に警告をするためだ。かつて、半蔵学院にはお前達とは別にもう一つ、男子生徒だけの忍クラスがあり、俺も一時期、入っていた。その忍クラスはある日を境に消滅した。それは『八咫宮 学園』が攻めてきたからだ。八咫宮学園の忍クラスは圧倒的な力で半蔵学院男子忍クラスを制圧した。俺はそのころ、忍クラスを中退してたから、難を逃れたが、その後、敗北した半蔵側は命を落とした者から、一命は取り留めたが、寝たきりや五体不満足になった者まで。無傷で帰れた者は1人もいなかった。

その八咫宮学園がまた動き出したとの情報が入った。しかも、噂ではまた、各地の忍の養成学校を潰して回っているらしい。斑鳩、お前は絶対に八咫宮学園と関わるな。この話はあくまで噂であるから、とりあえず八咫宮を刺激しなければいい。これも噂だが、八咫宮は半蔵を軽視しているため、すでに忍クラスはないものだと思っているらしく、すぐに攻めてくることはないだろう。だが、絶対に関わってはいけない。お前にもしものことがあれば、親父もお袋も悲しむぞ。 』

 

斑鳩は村雨からの手紙を握りしめる。冒頭こそ穏やかであったが、後半はかなり恐ろしい内容であった。『八咫宮学園』とは果たして、どのような学園であるのだろうか。斑鳩は恐怖からか、少し身震いした。

 

 

 

 

 

やがて、斑鳩は皆が集まる教室に入る。その直後だった。

 

「おーす、斑鳩!どうした?今日は元気ないぞ。おりゃおりゃ。」

 

「ひゃあっ!?葛城さん!やめてください!」

 

後ろからいきなり斑鳩の胸を揉む金髪の少女。彼女の名は『葛城』。セクハラ大好きな忍クラス3年生だ。

 

「まったく。相変わらず騒がしい。」

 

眼帯をつけた少女がつぶやく。彼女は『柳生』。1年生にして、上級忍者の位を持つ実力者である。

 

「みんなー!遅れてごめんー!」

 

はたはたと騒がしく入って来たピンクの髪の少女。彼女の名は『雲雀』。彼女も柳生と同じく1年生である。

 

「大丈夫だよ、雲雀ちゃん。まだ授業は始まってないから。」

 

飛鳥が笑顔で雲雀を迎える。皆が席に着くと教室に白髪の男性が入る。

 

「ひいふうみい…よし。皆揃っているな。」

 

彼はこの半蔵学院忍クラスの担任、『霧夜』。飛鳥達を時に厳しく、時に優しく導く教師である。

 

「霧夜先生。今日の任務は何ですか?」

 

「今日はいつも通り、商店街近辺の見回りだ。では、さっそく…」

 

「待ってください。あの、先生。私、先生に大事なお知らせがあります。いいでしょうか?」

 

霧夜は挙手した斑鳩の目を見る。そして、頷いた。

 

「どうやらお前の目を見る限り、とても火急な知らせのようだな。わかった。斑鳩は後で向かわせよう。他の皆は先に行ってくれ。」

 

「斑鳩さん?一体、何の話なんですか…」

 

しかし、飛鳥は突然、葛城に抱き寄せられる。

 

「まあまあ、飛鳥。斑鳩は忙しそうだから、アタイらで先に行こうぜ。もちろん、斑鳩が戻ってくるまでアタイが班長だからな〜」

 

またもや飛鳥の胸を揉みながら話す葛城。

 

「ひゃあん!?かつ姉、班長ってのは何をしてもいいってわけじゃないからっ!」

 

「斑鳩さんには悪いけど、先に行こうか柳生ちゃん。」

 

「そうだな。」

 

結局、今日の見回りの任務は4人で行くことになった。

 

 

 

 

 

 

ここは半蔵学院近くの商店街の路地裏。そこに、紺色のブレザーを着た青年が1人、焼き鳥を食べながら歩いていた。そのとき、その青年を何かの集団が囲む。

 

「おい、あんた。遊ぶ場所間違えてないか?」

 

「ここに入ったからにゃ、通行料をいただくよ。優男君。」

 

柄の悪い太った女がリーダー格の不良の集団が青年を囲む。しかし、青年は焼き鳥を頬張りながら言う。

 

「お前ら。今、俺は腹減ってるんだ。少々足りないが、喰わせろ。」

 

「かっこつけてるんじゃないよ。やっちまいな!」

 

太った女の指示で青年に不良達が飛びかかる。

 

「焼き鳥食い終わるまでに片付けてやる。」

 

青年はブレザーの内に隠してある刀の柄に手を掛けた。

 

 

 

 

 

 

「はーあ、しかし何もないなー。アタイ、暇で暇で仕方ないよ。あー、どっかに巨乳でもないかな。」

 

「かつ姉、そんな恥ずかしいこと大声で言わないでよ…。」

 

「あ、柳生ちゃん。見て、可愛いワンちゃんがいる!」

 

「お、なかなか可愛い犬だな。」

 

4人が思い思いに会話しながら商店街を歩く。今日も平穏に見回りが終了するはずだった。

 

「た、助けて…くれ!化け物だ!あいつは化け物だぁー!」

 

突然、路地裏から奇声をあげながら1人の男が現れる。飛鳥達はその男の声に思わず振り返る。

 

「あの人って確か…」

 

「ああ、数日前にオレ達が懲らしめた不良だな。しかし、何かから逃げるように路地裏から出てきたぞ?」

 

「もしかして、悪忍とか妖魔に襲われたとかな?」

 

「だとしたら、ほっとけないな。みんな、行くぞ!」

 

葛城の指示に従って、飛鳥達も路地裏に急ぐ。その路地裏では信じられないくらい悲惨な光景が広がっていた。何と、不良達が血まみれで横たわっていたのである。

 

「うそ…何これ…?」

 

驚く飛鳥の横で柳生が1人の倒れている不良の腕を触る。

 

「呼吸も脈もない…死んでいるな。」

 

「不良さん達は悪いかもしれないけど、殺すなんてやり過ぎだよ…。」

 

そのとき、飛鳥は路地裏の奥に人の気配を感じた。そして、そこからぬっと紺色のブレザーに胸に赤いバッジをつけた青年が現れた。口には焼き鳥を食べた後の串をくわえている。

 

「口ほどにもないな。つまらん。」

 

青年はくわえていた串を地面に吐き捨てる。

 

「ねぇ、これをやったのは…君?」

 

飛鳥が震え声で青年に問いかける。

 

「ああ。そうだが。それがどうした?」

 

青年は他人事のようにつぶやく。飛鳥が構える前に柳生が一歩前に出る。

 

「オレはお前に聞きたいことがたくさんある。お前は忍か?どこの学校だ?何が目的で不良達を殺した?」

 

「うるさい女だな。」

 

青年は気だるそうに刀を触る。そのときだった。

 

「おーい、冴刃。もったいぶるのはもういいだろ?そろそろ自己紹介してやろうよ。」

 

突然、上からストンと何者かが現れる。どうやら、その青年の仲間のようである。

 

「写楽…。」

 

「ごめんね、君たち。じゃあ、僕達が自己紹介するよ。僕は『写楽』。君達もお察しの通り忍さ。」

 

ヘラヘラとした態度の紺色のブレザーに赤いバッジをつけ、さらには顔に道化師の仮面をかぶっている青年の名は『写楽』というらしい。

 

「俺は『冴刃』。『八咫宮学園』の者だ。とすると…お前らも忍か?」

 

目つきの悪い焼き鳥を食べていた青年の名は『冴刃』。2人とも忍であった。彼も紺色のブレザーと赤いバッジを身につけている。

 

「八咫宮学園?聞いたことないね。」

 

「うん。貴方達のことはわかったけど…」

 

「最後の質問が残っているぞ。さあ、なぜ殺したか答えろ。」

 

柳生は冴刃と写楽に番傘を向ける。しかし、ここで写楽が口を開く。

 

「待ってよ。どうせ君達も忍なら、欲しい情報は戦って手に入れるものじゃない?」

 

「何だよ。アタイとやろうってのか?いい度胸だな。」

 

さっきまで暇だとぼやいていた葛城が拳を手のひらに当てて笑う。

 

「決まりだね。さあ、忍結界展開!」

 

写楽が前置きなくそう言うと冴刃と写楽が同時に忍結界を展開する。『忍結界』とは忍同士の決闘に用いられる一般人に被害が及ばないようにする役割を持つ結界のことである。また、これで周りからは見えなくなるため、姿を隠すためにも利用できる。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。