閃乱カグラ 〜 少女達の戦と少年達の侵攻 〜 作:ツヨインジャー
ここはある山の奥地。普通は滅多に人の寄り付かない場所であるが、そんな場所へうきうきとした足取りで踏み入る少女が1人。
「ただいま戻りました。」
「おかえり、詠お姉ちゃん。」
緑のジャージに金髪ロングの少女。彼女の名は『詠』。元蛇女の生徒であったが、今は焔達と共に『焔紅蓮隊』として過ごしている。そして、詠を出迎えたのは未来であった。
「あら、未来さん1人なのですか?」
「焔も日影も春花様もまだ帰ってきてないのよ。春花様は多分バイトだと思うけど…あとの2人は何してるのかな?」
「では、皆さんが帰ってくるまでに夕食の準備を済ませましょう。」
だが、そのとき詠は何かハッとしたような表情で後ろを振り返る。
「今、何か視線を感じたような…?」
「どうしたの詠お姉ちゃん?」
「いえ、何でもありませんわ。それより、お夕飯の準備をしましょう!」
しかし、詠の感じた気配は決して間違いではない。実はこの隠れ家の外では…
「ここが無明の言ってた抜忍達の隠れ家か。さて、早く無明に教えてあげないと。あの抜忍達は僕の計画の第1段階の『鍵』だからね。」
隠れ家のすぐ近くに身を潜めていたのは写楽であった。写楽はコインの形をした盗聴器を握りつぶして捨てる。そして、そのまま山の木々の中へ消えていった。
(500円玉落ちてたから拾っちゃった。誰のか知らないけど、もらっちゃってもいいわよね…?)
未来は500円玉をポケットに入れる。しかし、それは写楽が500円玉に偽装した小型盗聴器であった。未来はまんまとペテンにかけられていたようだ。
一方、ここは蛇女近くの荒野。ここでは焔と冴刃が火花を散らしていた。
「お前、なかなか強いなっ!」
焔が勢いよく刀をぶつける。
「俺はぜんぜんだ。もっと楽しませられないのか?」
冴刃は回転を掛けて焔に斬りかかる。焔もさすがにこの攻撃には堪えたのか怯む。
「私を嘗めるな!」
焔は今度は下から冴刃の身体を斬り裂く。冴刃の顔に少し斬り傷が入る。だが、冴刃も反撃に焔の脇腹に蹴りを入れる。
「これならどうだ?」
「くっ、かなりやるな…」
焔の忍装束の脇腹の辺りが大きく裂ける。ちょうど胸に巻いたサラシが見えるくらいである。
「しかし、女のくせに体力だけは見上げたもんだな。てめぇはメスのゴリラかよ?」
その言葉にカチンときたのか焔は冴刃に秘伝忍法を発動する。
「私を馬鹿にできるのもここまでだ!秘伝忍法『紅』!」
真っ赤な炎の衝撃波が冴刃を襲う。しかし、冴刃は反射的に自分の秘伝忍法を繰り出す。
「秘伝忍法『タイラント・デストロイ』!」
冴刃の刀の刃先が闇の波動を纏いながら衝撃波を相殺しようとかかる。やがて、大爆発が起きた。
「うわっ!?」
「ぐっ!」
さすがの焔と冴刃も爆風に吹き飛ばされた。
「な、何が起こったの!?」
遠目から焔と冴刃の戦いを見ていた両備は傷ついた身体ながらも爆風を何とか堪える。しかし、両備はその直後、背後に気配を感じる。
「まだ両備と戦うつもり?しつこいわね。」
「私は忍を滅ぼすのが目的だ。さあ、お前も私の目標の礎となれ!」
その気配の正体は無明だった。無明はモーニングスターを両備に叩きつけようと振り上げる。しかし、両備はモーニングスターが自分に当たる前にかわし、物陰に隠れた。
(まずいわね…。このままじゃジリ貧だわ。しかも、あいつが疲弊している様子もない…。)
そんな感情が渦巻く両備に何かが忍び寄る。そして、両備を押さえつけた。
「きゃっ!?誰よ?」
両備を押さえつけたのは、冷たい目をした緑の髪の少女、そう彼女は『焔紅蓮隊』の1人『日影』である。
「静かにしいや、両備さん。奴らはまだ気づいてへん。今のうちに逃げよや。」
「何でよ!まだ決着はついてないわ。」
しかし、すでに満身創痍に近い状態の両備を日影は肩に担ぐ。
「あんたのその傷で八咫宮学園の連中に勝つのは無理や。今から蛇女の近くまで送ったるさかい、おとなしくしいや。」
確かに日影の言う通り、両備の身体はボロボロだった。日影は両備を抱えてしばらく走る。
「あ、ありがとう。もうここから先は1人で行けるわ。」
両備は日影の肩から降りる。
「八咫宮学園はホンマに強いな。両備さん、気ぃつけやなあかんで。」
「そんなことわかってるわよ。」
やがて、両備は日影とは反対側に歩き出す。
「さて、わしも早よ焔さんのところへ戻らな。」
「おい、冴刃。」
一方、両備を取り逃がした無明は同じく焔を取り逃がした冴刃にぶっきらぼうに話しかける。
「んだよ、無明。俺はあの女を見失って機嫌が悪いんだ。」
「呆れたな。お前、まだ気づかないのか?私達はまんまとあの忍達に担がれていたということを。」
「は?どういう意味だ?」
無明は突然走り出す。
「おい、待てよ!」
冴刃も後を追う。すると、冴刃の周りの景色がガラリと変わる。さっきまで目の前にあった蛇女の校舎も消えた。
「これは…どういうことだ…?」
「私もついさっき気づいたのだかな、どうやら私はいつの間にかあの両備という忍とはまた別の忍の張った忍結界に踏み込んでいたようだ。あたかも、目の前に蛇女の校舎があると見せかけた結界をな。おかげで私達は蛇女とは正反対の方角へ進んでいる。」
「騙しやがったな。だけどよ、あの焔とか言う奴、あまり頭が良いように見えなかったぞ。この作戦は奴が考えたのか?」
自分の馬鹿さを棚に上げて焔の陰口を言う冴刃にため息をつきながら無明は説明する。
「いや、これは裏で糸を引いている奴がいるな。写楽から聞いたんだが、焔という忍は『焔紅蓮隊』という抜忍組織のリーダーらしい。しかもそこには…私の因縁の相手である『春花』がいるそうだ。恐らくはこの一連の流れは春花の入れ知恵に違いない。」
無明は蛇女を背に別の道を歩き始める。
「どこへ行くんだ?」
「焔紅蓮隊を倒す。このまま蛇女を攻めても奴らの妨害に遭うだけだ。ならば、先に潰しておいても問題はないだろう。」
無明はそれだけ言うとまた歩みを進めるのであった。
「春花さんに教えてもろた二重に結界を張る作戦。うまくいったみたいやな。」
「日影!」
独り言をつぶやく日影の前に焔が現る。
「焔さん。わしらも撤退するで。八咫宮学園の連中を蛇女から遠ざけることはできたし。」
「見失ってしまったのが少し悔しいが、無駄な戦いをして消耗するわけにもいかないか。よし、日影。退却だ!」
焔と日影は自分達の隠れ家に帰る。そこで、また新たな戦いに巻き込まれるとも知らずに…。
「待ちなよ。無明。」
焔紅蓮隊の隠れ家を探して歩く無明の背後に写楽が現れた。
「何の用だ?」
「ふっふっふ、何を隠そう僕は君の探し物に関する重要な情報を握っている。それを教えてあげようと思ってね。」
「何だ?言ってみろ。」
すると、写楽はおもむろに一枚の紙を取り出す。それは地図だった。
「僕がいつか八咫宮学園の脅威になると睨んでいた抜忍集団の隠れ家へのルートさ。君が探しているのはおそらくこのこの忍達のことじゃないの?」
無明は写楽から地図をひったくるように受け取るとこう言う。
「お前は胡散臭い奴だと思っていたが、意外と有能だったんだな。まあ、感謝はしている。楽しみにしていろ、私はお前への謝礼として、その抜忍共を血祭りにあげることを約束しよう。」
「期待してるよ。」
写楽はにっこり笑うとその場から消える。無明は写楽がくれた地図を頼りに焔紅蓮隊の隠れ家を目指すのであった。
「ふふ、これで無明があの忍達と戦って負傷でもすれば、僕の計画通りに事が進む。正直、僕の計画に無明は邪魔なんだよね。」
無明をどこか高いところから眺める写楽。果たして、彼の真意は一体…。
【(※キャラ崩壊注意)おまけトークpart1 無明&写楽】
写楽「そういえば、君と春花って娘は幼馴染なの?」
無明「というか、古い知り合いだな。しかし、あいつも成長したな。一瞬誰だかわからなかった。」
写楽「成長した…胸とかが?」
無明「ぶっ!?ち、違う!成長したというのはな…」
写楽「やっぱり、健全な男子たるものそこを見ちゃうよね〜」(ニヤニヤ)
無明「貴様…あとで覚えておけよ…」